第3話「新たな友達」
ラウとクアンが友達になり、喋りながら急いでミリアの元へ向かっている頃。
正直、ミリアはとてもとても暇だった……。
待ち合わせ場所に着いたはいいものの、何時もだったら早くに来るラウが来ず、更にはお昼ご飯を食べてないからお腹が空く始末。
「ラウ遅いなぁ……。まだ家で寝てるのかなぁ?」
ラウと待ち合わせするときは、いつもこの噴水のある広場で待ち合わせている。
ミリアは自覚は無いが、ラウに言わせると方向音痴な為、人の後ろにくっついていけば大体着く噴水広場が待ち合わせ場所としては良かったのである。
噴水広場の真ん中にある噴水が勢いよく水を空中へ噴き出させる。空中に舞った水は陽光で反射し、キラキラと宝石の様な輝きを見せた。
言うなれば日常の宝石と言ったところか。
日常の何気ない風景でしか見れない光景である。そんな事を噴水を眺める様に配置されたベンチに腰を掛け、小さな足をプラプラとさせながら何気なく考える。
それから、かれこれ三十分ぐらい経った頃。
ラウと赤髪の見知らぬ少女がミリアを見つけて走ってきた。
額には汗が滲み、荒い息をしている事から相当急いで来たのだろう。
それでも、文句は言う。
待たされた者の特権であるならば使わなくちゃ損というやつなのだ。
「ラウ、遅いよ〜」
「ごめんね、ミリアちゃん! ちょっと色々あって……」
「またなの? この前だって――――」
「ああぁぁぁ~~~!! そ、そうだミリアちゃん、この子を紹介するよ!」
両手を左右にワタワタと動かし、クアンの片手を掴み横に並ぶ。
「この赤髪の少女はクアン。私が助けました!」
「助けたというより馬が暴走して偶然、あの男達に突っ込んだだけじゃ無い……」
「い、いいの! これは最初に言ったもん勝ちなんだよ!?」
「貴女は一体、何と競い合っているのかしら……」
ラウがミリアとクアンの前に踊り出、笑顔を見せた。
長く煌めく銀髪がふわりと舞い、果実の爽やかな香りが鼻孔を
「さぁ? でも、私はクアンを助けた事に一片の悔いも無いよ?」
「ラウはそう言うけど助けられる側はヒヤヒヤなんだよ?」
「あら、貴女もラウに助けられたの?」
「え……う、うん。ラウとはなんだかんだで付き合いが長いから」
「そう。貴女も大変ね」
同情するわとでも言いたげに額に片手を置き、「はぁ~」と零す。
「なんか、私の評価が凄く気になるけど……この子、クアンが冒険者達に絡まれてるとこを私が助けたんだよ!」
なんだか一瞬、遠い目をしたラウが気を取り戻し、堂々と言う。
「ええ、本当よ。ごめんなさい、私の事に構ったせいで結構待たせちゃったでしょ?」
「いえいえ、ラウが人助けしてたなら全然良いですよ。……でも、そうなんだ。てっきりまたラウが何かやらかしたのかなって……」
「(この子、勘鋭いわね。ラウやらかしたわよ?)」
ミリアが言った言葉に内心そんな事を思っていたクアンは早速ミリアと挨拶を交わす。
「初めまして、私はクアン。事情があって今は1人で冒険者をやっている……まぁ、単なる暇人よ」
クアンはそう言って、にこやかに話しだす。
それに対し、冒険者のクアンは兎も角、人見知りのラウよりも更に対人スキルが乏しいミリア。
端から見ても、その緊張度合いは相当のものである。
「ミ、ミリアです。ラウとは幼馴染でいつも遊んでる仲です。よろしくお願いします!」
「ええ、よろしくね。ラウに聞いたけど同い年なんだし敬語じゃなくていいのよ? それと、私の事はクアンでいいから貴女の事もミリアって呼ばせて貰っていい?」
「あ……うん! よろしく、クアン!」
緊張がだんだん無くなってきたのか、自然に喋り出すミリアが満面の笑みを浮かべる。
ここに来るまでに、ラウにミリアの事を聞いてはいたけれど、あまりの不意打ちにクアンの動きが止まる。
「か、可愛い……。ヤバイわね、これは……」
ちなみに、ラウに聞いていた話というのは、ミリアは普段あまり笑顔を親しい人にしか見せないので不意打ちにくると惚れそうなくらい可愛いって事である。
その笑みはミリアのすらっと伸びた綺麗な金髪に、菊の様な薄い金色の目で笑みを向けられると異性でも抱き締めたくなるほど可愛いのだ。
しかも、それを本人は分かってないのだからタチが悪い……。
ともかく、こうしてラウは誕生日までに友達を1人作るという目標を意外とあっさり達成し、ミリアは新しい友達が増え、クアンは初めての土地で親しい友達が出来たのだった。
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