29話 期待感。

最近、有名店のラーメンが

カップ麺になることがよくある。




正直気になるが

結局店で食べた方がいい、と思ってしまう。





しかし。

私が好きなラーメン屋がカップ麺を出すとなれば

それは食べてみたくなるもんだ。




結局店で食べたほうがいい。

その考えは曲げないが、気になってしまう。








その情報を同僚から入手したその日。

その日の私の夕食はそのカップ麺に決定した。







仕事中からそのカップ麺が気になって仕方がない。


どこまで再現されているんだろう。

スープは。麺は。具材は。

コンビニらしいアレンジが加わっているのだろうか


しかし

今日からコンビニ限定で発売されるその商品。

私が行く前に売り切れていないだろうか。

いつも行くコンビニに入荷しているだろうか。



様々な期待と不安が頭をめぐっている。

もちろん仕事中。






定時になると

私はすぐさま荷物をまとめ帰り支度をする。


後輩から

用事でもあるんですか。

と、聞かれたが。












カップ麺が待ってるんだ。






そう答えて会社を後にした。






自宅近くのコンビニに到着。


喜ばしいことに私の不安は一瞬消え去った。








『本日新発売!あの有名店とコラボ!』









ポップにそう書かれたコーナーがレジ横にあった。

ピラミッド型に積まれていたであろう

カップ麺の山はあと数個になっていた。


ギリギリセーフ。





私は高ぶる期待を抑えながら

一つ手に取りレジへ。


値段設定は他のカップ麺よりやや高め。

といっても

店で食べる半額の値段で食べられるなら十分だ。




手早く会計を済ませ、家へまっすぐ帰宅。








家に帰った私は

流れるようにケトルに水を入れお湯を沸かす。




お湯が沸くまでの間。

私はパッケージを注視。


熱湯五分。

かやくは

先入れのものと後入れのものがある。

スープも後入れ。

お好みで七味。


よし。覚えた。

完璧だ。



先入れかやくをカップに入れ

準備は万端。


あとはお湯を待つのみ。





胸を躍らせながらお湯を待っている間。


私はこの情報をくれた同僚に

感謝のラインを送ることにした。

まだ味わっていないが、

この情報をくれた彼には感謝を伝えねばと

高ぶるテンションのまま同僚にラインを送った。






そんなこんなでお湯が沸く。


内側の線を見ながら慎重にお湯を注ぐ。


そして

キッチンタイマーを五分にセット。




あとは待つだけ。






この五分は今日の中で一番長く感じる五分だろう。


待ちきれない。

ただただ待ちきれない。









ラインの通知が鳴る。





さっき感謝のラインを送った同僚だ。

キッチンタイマーをチラチラ見ながら

ラインをチェックする。











「カップ麺買えてよかったな。お前早く帰ったからびっくりしたよ。」











すまない。

今度一杯奢るからな。

そう心の中で約束する。














「今日せっかくそのラーメン屋行こうと思ったのに。

あ、ちなみに今日行ったらオープン記念日で半額だったぞ。」















半額。









私の胸の高鳴りがゆるやかに収まっていく。


目の前のカップ麺と同じ値段で

店のラーメンが食べれたのか。


冷静になる私がいる。





五分経って食べたカップ麺の味は

ちゃんと旨かった。




しかし。



やはり

結局店で食べる方がいい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る