──第80話──
俺は猫耳お姉さんに依頼のある薬草を渡す。
「はい、確かに受け取りました。……いつも思うのですが、相変わらず凄い量ですね……。」
薬草を受け取った猫耳お姉さんは、薬草を検品・測量しながら俺に言葉を投げ掛けた。
「そうか?探せば見付かるぞ。」
「そんな簡単に見付からないので、依頼が出ているはずなんですが……。」
「今回はいつもより少ないぞ?」
俺は不思議に思い聞いてみるが、猫耳お姉さんに首を横に振られた。
「それでも多いですよっ!?」
驚いた表情を見せた後、猫耳お姉さんは薬草の測量を済ませ、依頼達成を記入する水晶に書き込むと声を上げた。
「あっ!今回でFランク依頼を百五十回達成しましたので、ランクが上がりますね!Eランクになりますが、一つ上のランクのDランクまでは依頼を受けられますので、また依頼書を確認してみて下さいっ!」
お、ランクが上がるのか。
Fランクは駆け出しだからか、Fランクの依頼しか受けられなかったんだよな。
主な討伐依頼はDランクからしか無かったから、これでもう少し稼げそうだな。
まあ、無意味な討伐はしたく無いから厳選はするけど。
「ありがとう、エレナ。」
猫耳お姉さんは耳と尻尾をピンと伸ばし、顔を真っ赤にして わたわた し始める。
「い、いえ!わ、私はただ、仕事をしているだけですのでっ!!え、えと……ギ、ギルドカードをお借りしても宜しいで
おしい!
最後の最後で噛んじゃったな。
俺は苦笑しながら、猫耳お姉さんにカードを渡した。
猫耳お姉さんはカードを受け取ると、カードを作った時の水晶を取り出し、そこにカードを入れる。
透けている水晶に入ったカードは緑色から青色に変化し、カードがゆっくりと出てきた。
猫耳お姉さんは水晶からカードを取り出し、笑顔と共に俺に差し出す。
「Eランクおめでとうございます!」
「……ありがとう。」
「さすが、ルディ様はランクを上げるのも早いのですね!!」
「い、いや、普通だって。」
そんな凄い人を見る目はやめてくれないかな。
俺が苦笑していると、猫耳お姉さんは忘れてたとばかりに手をポンと鳴らし硬貨の入った袋を机に置いた。
「こちらが今回の報酬になります!忘れる所でしたっ!すいません……」
うん、忘れちゃ駄目だよね。
お金の事は忘れちゃだめだよ。
俺は猫耳お姉さんから受け取った報酬を確認し、その内数枚の銅貨をショーンに渡すと、ショーンは驚いた顔で俺を見てきた。
「……え?」
「ん?ショーンも薬草を取ってくれてたからな。これはショーンの分だぞ。」
「で、でも僕……もう もらってる、よ?」
ショーンはそう言うと、自分で取った少量の薬草を見せてきた。
俺は出来るだけ柔らかい笑みを浮かべ、ショーンの頭に手をポンと置く。
「他にも沢山取ってくれただろ?それに、美味しい実も貰ったしな。そのお礼だ。」
美味しい実……は毒だったけどな。
あの時のショーンの気持ちが嬉しかったからな。
「で、でも……」
「な?」
俺はショーンの頭から手を退け、再び銅貨をショーンに差し出す。
ショーンは何度も俺と銅貨に視線を移すが、ゆっくりと銅貨を受け取ってくれた。
受け取ったショーンは、柔らかく はにかんだ笑顔を俺に向ける。
「……ありがとう。」
「こちらこそ。」
ショーンの笑顔につられ、俺も自然と笑顔になり、穏やかな空気が流れていた。
ゲラゲラゲラ
ヒヒヒ
下品な笑い声と大きな足音がギルドの入り口から響く。
そちらを見ると三人のガタイの良い男の冒険者がギルドに足を踏み入れていた。
他の冒険者は嫌そうな顔、真っ青になる顔、視線を反らす等、それぞれの反応を見せ、入ってきた冒険者から距離を取っていた。
「はっ。やっぱ ココのギルドは獣臭ぇなぁ!」
「ちげぇーねぇや。ヒヒヒ。」
「オルァっ!何ガンつけてんだよっ!狩られてぇのかっ!!」
……獣臭いと思うのなら帰れば良いのに。
「何あれ。態度悪すぎ……」
俺はボソッと口から出てしまった言葉を猫耳お姉さんが拾い、チョイチョイと手招きされたので、俺は耳を近付けた。
「あの方々は、その……隣国出身の冒険者なんです。」
「……隣国?」
「はい……その国は人間族至上主義でして……この国では、人間も獣人も関係なく受け入れてくれるのですが……その国では私達、獣人をあまり良く思っていない様なんです……」
「だったら、わざわざ来る必要無いと思うんだけど?」
「恐らく、なのですが……Aランクの冒険者なので、力を誇示したいのかと……」
「何で誇示したいんだ?」
力が強いと周りにわざわざ知らせる様な事って必要なのか?
能ある鷹は爪を隠すもんだと思うんだけど。
つまり、
俺が人知れずため息をつくと、猫耳お姉さんは話を続けた。
「Aランク以上の冒険者の名は……広まると指名依頼が来やすいのです……。」
「なるほどな。」
金か。
指名依頼は高いもんな。
俺と猫耳お姉さんが会話をしている間に、その冒険者はズカズカと入り、受け付けの前まで来ていた。
冒険者は、先程まで俺の相手をしてくれていた猫耳お姉さんの前で下品な笑いを出す。
「よぉ、ねぇちゃん。Aランク以上の依頼はあるか?」
「は、はい。少々お待ち下さい……」
猫耳お姉さんは慌てた様子で書類を探すが、冒険者の方はお構い無しに話しかけていた。
「ねぇ、早くしなよ。」
「これだから獣は。」
「獣は獣らしくオスの下でよがってれば良いんだよ。」
ゲラゲラと笑い出す三人の冒険者。
猫耳お姉さんは目に涙を浮かべながらも、自分の仕事をしようと頑張っていた。
手の震える猫耳お姉さんを見た俺はため息を溢し、冒険者の方へと声を掛ける。
「ねえ、今は俺が対応して貰ってたんだけど?」
俺の声に冒険者達は反応し、この中でも一番体格の良い男性が俺を睨み付けながら声を放つ。
「あぁ?誰だ、てめぇ。」
俺と三人の冒険者は猫耳お姉さんに見つめられながら、睨み合った。
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