──第41話──
王女様
森から外に向かう道の先には馬車や騎士らしき人達がいたので、見付からない様に
目の前に広がる草原。
少しデコボコしている地面から木や岩、草花が咲き誇る。
そして、何にも
『うわぁ……すげぇな……。』
俺は口から思わず声を漏らしてしまった。
前世に比べると、森で見る空も広く感じていたが、それよりもさらに広かった。
右手に見える道。
その付近にいる馬車と人。
さて、どうするか……。
『なぁ、どこから行く?』
俺がネロとラルフに声を掛けると、ラルフは真っ直ぐに
『ここを、まーっすぐ行くよ!』
『え……?道……無いけど??』
指し示す方向には道は無い。
道があるのは右。
目の前には無い。
『道は集落とか経由してるからな。直線距離で行った方が早い。』
俺が困惑していると、ネロが説明をしてくれた。
確かに、迂回するより早いかもな。
整えられていない地面を馬車で走るのはキツいだろうし……。
あぁ、だから、七日もかからないのか?
『ついてこい。』
ネロに先導されついていくと、大きな岩の前で止まる。
『これが、リシュベル国に行く目印。行く先々にあって、迷わない様になってる。』
ネロの説明を受け、岩をよく見ると何かで傷つけられた様なモノがあった。
目印って知らなければ、ただの傷だと思う様なマークがそこにある。
横一直線と三本の斜めの傷。
『ここら
『そ、そっか……。じゃ、リシュベル国に近付くと印が古くなるって事か?』
『そうだな。』
ネロが言った『さら地になった』って言うのは多分……犯人はライアなんだろうな……。
心当たりがあったから、ついどもってしまった。
そこからは、ネロやラルフに色々聞きながら草原を走る。
たまに魔物を見掛けるが、全然寄ってこない。
むしろ、避けられてる。
『魔物って寄ってこないもんなんだな。』
ゲームとかだと、こっちが魔物を見付ける前に襲われたり、見付けても敵対するイメージがある。
だけど、ここの魔物は
『あはははは!当たり前だよー!』
『自分が負けるって分かってる相手に喧嘩を売る馬鹿がどこにいるんだよ。』
『そんなもんなのか?』
うーん……。
今まで〈闇落〉とかしか相手にしてないからな。
後は食料用に不意討ちとか。
『魔物は強い相手って言うのは本能で分かるんだよ。ルディも大体分かるだろ?』
『んー、どうなんだろうな?』
『ルディは、まだそう言うの経験してないのー?』
『そう、だな……』
『ルディは甘やかされてたもんな。分かるわけ無いか。』
『ネロ……その言い方は無いだろ。』
『あはははは!三人一緒だと楽しいね!』
俺がネロとにらみ合い、ラルフの陽気な声が響く。
のどかな空気のまま、俺達は大きな川を飛び越え、
『今日はこれくらいにしとくか。』
ネロは適当な場所で足を止めた。
休憩を挟みながら走っていても、一日中走る事は今までに無かったので俺の身体は悲鳴を上げかけていた。
『あはははは!ルディ、疲れちゃったー?』
『何で、二人は、平気、なんだよっ!』
『慣れてるからな。』
『慣れてるもん!』
何でだろう。
何か腹が立つ。
俺に持久力が無いんじゃなくて、二人がありすぎるんじゃないか!?
呼吸を整え、俺は【収納】からカインが持たせてくれた料理を取り出した。
スープ……それも鍋ごと。
ラルフが焚き火をつけ、ネロが道中捕まえた魔物の肉を焼く。
ついでにスープを暖め、雑談しながら食事をする。
少し前まで、ネロとラルフを遠ざけようとしてたのが嘘みたいだ。
穏やかな時間が過ぎる。
念のため、周りに結界を張ってから三人並んで横になる。
空には見たことも無い数の星が輝いている。
草原は星と月の明かりで照らされていた。
俺は星を眺めながら隣で横になっているネロに声を掛けた。
『なぁ、ネロ。』
『んだよ?』
『ネロは……人間が嫌いなのか?』
『は?急にどうした。』
『いや、森で会った人間の対応的にさ……。』
『あぁ。……そうだな。あんまり興味無いしなぁ……。言うとしたら嫌い、と言うより、理解出来ない……の方が正しいかもな。』
『何で?そんなに分からないもんなのか?』
『里で色々と話を聞いたりしてたんだけどな。そうだな……』
俺は里の人達から人間に関しての話は聞いた事が無かった。
俺が人間だから、気を使ってたんだと思うんだけど……。
なので、人間の国に行く前に少し話を聞いて見たかっただけなのだが、ネロは本当に興味が無い様子で答えに困っていた。
困らせるつもりは無かったんだけどな。
だけど、根が真面目なネロは『理解出来ない』理由をポツポツと話はじめた。
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