──第16話──

いきなり【闇の精霊の加護】を貰ったんだけど…………。


一体何があった。

俺、何もしてないよね?

サンルークに魔法について教えて貰ってただけだよね?


困惑していると、サンルークの隣に立っている人がいた。


ちなみにライアは木陰でそよ風に当たりながら寝ている。

気持ち良さそうに。


ライアをちらりと見てから、サンルークの隣に目をやる。


『……ノアは、ノア。……ノア=ヴィヴィアン。……闇の、大精霊。……よろ、しく?』


静かな口調で話しかけてくる、無表情な黒髪ロングの少女。


てか、何で疑問系。

俺の方が頭の上に疑問符がいっぱい出てるんだけど。


『なんかねぇ、ノアも君とぉ話したいんだってぇ。』


『……ん。……魔力、心地良い。』


『それでぇ、ノアが君にぃ魔法を教えたいって言ってたんだぁ。』


『……サンルークの、説明…………長い……から。』


俺と会話する為に加護をくれたのか。

……加護を安売りしてないか、それ。

それで良いのか、大精霊。


『あ、ありがとう……ノア、さま?』


とりあえず、お礼を言うとノアが少し機嫌が悪くなった。


だから、どうしてだ。

お礼したらいけなかったのか!?


『……『ノア姉さん』。』


『…………?』


なぜに?


『……『ノ、ア、姉、さ、ん』。』


力強い声で主張してきた。


『え……ぁ……うん、わかった、ノアねえさん。』


困惑しながらも『ノア姉さん』と呼ぶと満足そうに頷いた。

無表情だけど。


すると、今度はサンルークを指差した。


……人に指差したら駄目なんだよー。

人じゃなくて精霊だけど。


『…………『サンルーク兄さん』。』


……なんで?

おままごとでも始めるの?

魔法を教わりた……

そんな期待に満ちた目で見ないでっ!


『さ、サンルークにいさん……。』


『…………ん。』


ずっとこの子のペースなんだけど!?

俺は一体どうしたらいいのかな!?


『…………魔法、教える。』


『おねがいします。』


ようやく本題に戻ってきた。


『…………魔力を、感じる……事。』


『…………。』


『…………。』


『…………。』


え、以上!?

説明終わりですか!?

早くない!?

サンルークの説明が長いんなら、ノアの説明は短すぎるよ!?


『ノアがぁ言いたいのはぁ、まずはぁ自分の魔力を感じとるってぇ事だと思うよぉ?』


『…………ん。』


そんなん、分かるかーいっ!!

俺は魔法を知らないんだぞっ!


『どうやって?』


『…………手、出して。』


ノアが俺に向かって両手を差し伸べて来たので、俺もその手の上に重ねる様にして両手を置く。


俺よりも少し大きいが、華奢な指で柔らかい感触がする。


少し照れていたら、ノアが目を閉じたので真似る様にして目を閉じる。


しばらくすると、手の平から身体中を駆け回る暖かな『何か』があった。

血液が流れている事を認識したかの様な不思議な感覚。


『…………これが、魔力。……わかる?』


『うん、ぜんしんに、あたたかいのがある。』


すると次第に魔力が熱を持ち始め、駆け巡る速さがどんどんと速くなっていく。


『──────っ!』


身体中がこむら返りを起こした様な感じで、全身に痛みを感じた。


『…………これが、魔力の、暴走。…………こう、なると…………危険。』


危険なの!?

止めて!

止めて!!

危険なのを初日にやるってどういう事!?


『……これ、以上に……なると、身体が…………爆発、する。』


怖い!

怖い!!

体内から爆発する感じ!?

絶対モザイクかかるやつだよね!それ!!


次第に痛みが無くなり、ノアと繋いでた手を離す。


『…………魔力、わかった…………?』


『う、うん。』


言葉より、実践で教えるタイプの人なんだな。


体力を消耗し、汗をかいた俺はその場に座り込む。

ノアも俺の視線に合わせて座り、楽しそうに紫の瞳を細めながらこちらを見ていた。


『…………最初は、魔力の……操作。こう、する。』


俺の目の前に、指を開いた手を出した。

その人差し指には紫の丸い光があり、次に中指、薬指と光が移動した。


『おお。ノアねえさん、すごいね。』


手の中に豆電球が入っている感じに光っていて、マジックを見ている気分になっていた俺はノアを誉めると、ノアは無表情ながらも頬を赤く染めていた。


『……次、ルディが、する。』


少し口の尖ったノアに促されてやってみるが……

まず、人差し指が光らない。


うーん?

なぜだ。


『……ちゃんと、イメージ、する。…………ルディは、出来る……ルディは、出来る。』


応援してくれるのは嬉しいけど、何か違うくないか?


イメージねぇ……。


指先が光る……魔法使いが杖で魔法を使うエフェクトのイメージかな。


じっと自分の人差し指を見てイメージをしていると、淡く光だした。


『できたっ!』


『…………むぅ。……ノアの、色じゃ……ない。サンルークの…………色。…………ノアの、色じゃ……ない。』


あの~、二回言わなくても大丈夫ですよ?

しょうがないじゃん!!

杖が光るイメージって白っぽいじゃん!

なんか、ごめんって!

あー!どんどん落ち込んで行かないでっ!!


『ノアぁ、人間はぁ、光って言われたら大体ぃ、白やオレンジを思い浮かべるみたいだよぉ?紫の光はぁあまりイメージし難いのかもしれないねぇ?ルディ=ギルバートならぁ出来る様になると思うよぉ?』


『…………ん。……出来る、様に…………して。』


ナイスフォロー、サンルーク!!

そして、ノアさんや。

それはお願いじゃなくて命令ですよね!?

そんなに重要な事なの!?


『が、ガンバリマス。』


項垂れた俺の返事にノアは満足そうに頬を緩めた、様に見える。


無表情だから分かりにくい。


『…………魔力の…………操作は、慣れる……様に、毎日、する。』


『わかった。』


毎日練習して魔力操作を覚えないといけないんだな。


また暴走しても困るし……。

あんな痛みは二度とごめんだ。


気が付いたら良い時間になっていたみたいで、ライアに声を掛けられ、二人に『近い内にまた来る』と約束をし、家へと帰る。


その日から、俺の日課に魔力操作をする練習メニューが加わった。


次、来る時までに紫の光を出せる様にしよう…………。












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