若者が今日も行く

老犬

第1 部屋にて

薄暗い部屋はひどくがらんとしている。先日まで人間が生活していたところとは誰が見ても到底思うまい、ほこり一つない畳の上には天井からぶら下がった包丁が月の光を受けキラキラと壁に光を振りまいている。ここまで鋭い光は満員電車でよろけた先にいた齢五十は下らない瓢箪を模したようなレディの眼孔も及ばないと思われた。

この世に生を受けて二十と一年、いよいよ現実を前に膝を突いた私はわずかに残った知力と体力をかなぐり捨て某天才発明家にも引けを取らない完璧な装置を作り上げたのだ。

 

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