第469話16-23狂気の巨人
16-23狂気の巨人
「大丈夫!? エルハイミ、ティアナ!?」
イパネマを倒したあたしたちのもとにシェルが駆けつける。
「どうにか倒せましたわ。でも魔力が‥‥‥」
流石に四連型をフルドライブでここまでの広範囲を動かすのに魔力を使い過ぎた。
あたしは軽い貧血の様にふらっとしてしまった。
「エルハイミ!」
ティアナがすぐにあたしを抱きかかえる。
「相当魔力使っちまったなエルハイミ? 俺たちがお前さんを運ぶからすぐ寝ろ。少しでも魔力回復しなきゃならん。ここから急いでも『狂気の巨人』の近くまで半日はかかるからな」
ご先祖様もあたしの近くまで来てそう言う。
「そうですね、エルハイミ魔法王の言う通り少しでも魔力回復に努めなさい。今はあなたが頼みなのですからね」
師匠もそう言ってパチンと音を鳴らせ刀をしまう。
「そうですわね、まだ戦いは終わっていませんものね‥‥‥」
シェルの差し出す魔力回復のポーションを飲みながらあたしは休む事とした。
「エルハイミ、大丈夫です。だから今は休んで」
ティアナはそう言ってあたしに口づけする。
あたしは思わずにっこりとほほ笑んでティアナに抱かれながら意識を手放した。
相当疲れていたようだ。
目をつぶるとあたしはすぐに眠りに落ちたのだった。
◇ ◇ ◇
「エルハイミ? どうです? 大丈夫ですか??」
あたしはティアナの声に気が付いた。
それと同時に自分の状態にも気付いた。
どうやら馬車に寝かされてそのまま移動している様だ。
決して寝心地の良いものでは無いがティアナの膝枕に頭を載せているので思わずにっこりとしてしまう。
うーん、これが自室だったらそのままティアナと♡
「エルハイミ、こんな時だってのになんて顔しているのよ? このエロハイミ!!」
見ればシェルが怒っている。
何よ、いいじゃない?
珍しくティアナが膝枕してくれているんだから。
「お楽しみの所すまないが主よ、起きれるか?」
馬車を操っているのはショーゴさん?
そちらを見れば馭者の席にショーゴさんとご先祖様が座っていた。
「ショーゴさん? ええ、もう大丈夫ですわ」
「エルハイミ、無理はしないでください」
ティアナに助けられ体を引き起こす。
そしてあたしはショーゴさんたちのずっと向こうに見える「狂気の巨人」に気付いた。
「なんて大きさですの!?」
それはゆうに三百メートルは越えていた。
東京タワーよりでかいんじゃない?
もしかしてスカイツリー並!?
「ああ、あれでもだいぶ小さくなった方なんだがな。俺が戦った時はあの倍以上はあった」
ご先祖様は面白くなさそうに「狂気の巨人」を見ながらそう言う。
「お母様、大丈夫ですか? あ奴は確かに以前より小さくなっています」
「そうなの? それでもあたしが見た時よりずっと大きいわよ?」
コクが心配そうにあたしの側に来て「狂気の巨人」を見上げる。
その横にセキがつられて「狂気の巨人」を見上げる。
その二人の様子は正しく姉妹のようでほほえましいのだけどね。
「魔法王ガーベル殿、あれは今だ動いていませんが何故です?」
「ああ、奴は俺たちに水も空気も無い虚無の空間で長い間封印されていた。最後の時点でかなり消耗していたからとりあえず怒りと憎しみの負の感情を吸って回復をしているのだろうよ。ただ、今の世の中は安定しているのでそこまで負の感情は存在しないようだがな。」
ご先祖様は師匠に向かってそう言う。
そしてまた「狂気の巨人」を見ながら言う。
「『彼女』の話では『狂気の巨人』は女神ジュリを失った後暴走をして女神戦争での人々の負の感情を食らいまくり、それでも足らずに永遠の飢餓で北の大地から怒りと憎しみの根源、人間たちを食らいあさって来た。おかげでガタイだけは女神を超え山々でさえ凌駕する大きさにまでなったがな」
ご先祖様は当時を思い出しているのか悪態をついている。
「姉さんが、ライムが命を使って半分にまでしてくれたがそれでもあの大きさか‥‥‥ 当時は良くも封印できたもんだ」
そして最後に自嘲気味に笑った。
「ご先祖様、シコちゃんが‥‥‥」
「聞いたよエルハイミ。お前を守る為に犠牲になったんだってな。だが大丈夫だ、セミリアの所に俺も長くいた。シコのサポートが無くても再封印の魔術は使える。あとは賢者の石、ケンの代わりに膨大な魔力源が必要だ。エルハイミ、お前の魔力回復状況はどうだ?」
「‥‥‥半分と言った所ですわ。流石に四連型のフルバーストをあの広範囲に使ったおかげでほとんど魔力を使い切ってしまいましたわ」
「半分か‥‥‥」
「ご先祖様、私も魔力提供いたします! エルハイミには及ばねど私にも魔力はたくさんあります!」
ティアナがあたしとご先祖様の会話に入ってくる。
ご先祖様はティアナをちらっと見て他の者も見る。
「最後だ、出し惜しみなく魔力提供できる奴は全員俺の大魔法に協力してもらうぞ! そうすれば『狂気の巨人』の再封印はまだ間に合う!」
ご先祖様のその言葉にここにいる全員は頷く。
あたしたちは今だ封印の鎖に繋がれ動かない狂気の巨人を見上げるのだった。
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