第409話14-34救助

 14-34救助



 クシュトリア司祭が魔法陣から何かを呼び出した!?





 うねうね



 『くはぁっ、お呼びで主様ぁ? ひひひっ、こいつらですかぁ?』


 『あらぁ、美味しそうな男じゃない?』

 

 『くひひひひっ、主様、こいつら全部頂いていいんですね?』



 魔法陣から呼び出されたのは数匹のスキュラたち。

 上半身は美しい女性なのに下半身はタコの様な足が沢山ついている。


 スキュラたちは嬉しそうにショーゴさんを見る。



 「お前たち! 男どもを始末なさい!! 他の女たちは私たちのです。捕らえなさい!!」


 『ふはぁっ、全部はもらえませんか? まあいいですよ、男はあたしがしゃぶりつくしてやる!!』



 そう言ってスキュラたちはいっせいにショーゴさんに襲いかかる。



 でもなぜかベルトバッツさんにはいかない‥‥‥

 むう、禿げでガタイのでかい髭オヤジはモンスターでも駄目なのかな?



 スキュラたちは下半身のたこ足を伸ばしショーゴさんを襲う。

 しかしショーゴさんは慌てずなぎなたソードでそれらを切り刻む。


 『このっ! 女にやさしくない男は嫌われるわよ! 素直にあたしたちに絡め捕られ骨までしゃぶられなさいなっ!!』


 『こいつ、なかなかやる!』


 そう言ってスキュラたちは魔法を使い始めた!?



 何こいつら!?

 魔法使えるの!



 あたしは【絶対防壁】を展開して襲い来る水の槍を防ぐ。


 

 『ちぃっ! 魔法使いがいるの? ならっ!』



 一匹のサキュラはあたしたちの足元に何かを大量に投げつけてきた。

 それはナマコ!?



 「な、何よあれ!? エルハイミ! なんかごつごつ太くて硬そうな変なものがいっぱい!?」



 ナマコ供はうねうねとこちらに向ってくる。

 そのビジュアルはあたしに過去のトラウマを呼び起こさせる。

 

 だめだ! 

 下手な刺激をしたらあの白い内臓をぶっかけられる!!

 あのねばねば生臭いモノは危険だ!


 「気持ち悪い! こっち来ないでぇ!!」


 シェルは思わず弓でそれを払い除けようとする。



 あっ!

 だから下手に刺激しちゃダメだってばっ!!



 「シェルだめですわっ!」

 


 ぐいっ!



 シェルは手前にもぞもぞ動くナマコを弓の端で押しのけた。

 とたんにナマコはシェルに向かって内臓を吐き出す!



 びゅるるるるっ!



 「きゃぁぁああああっ! 何この白いの!? な、生臭ぁいっ!」


 しまった遅かったか!?

 シェルはナマコの洗礼を受け体中に白い内臓をぶっかけられる。


 「うわーん、気持ちわるぅぃっ!!」


 こうなってしまってはシェルはもう動けない。

 しかし最近のあたしはそのシェルの様子に感じるものがあり思わずにやけてしまう。



 「この程度の精神攻撃、今の私には通用しませんわ!」



 ばっと手を振りスキュラたちに言い切る。


 決まった!

 きっとさっきのセリフと手をばっとする辺りは数方向からカメラングルでとらえられただろう。


 そう、あたしはもう昔の初心な少女とは訳が違う!

 人妻なめんなぁっ!



 『あら? 意外と打たれ強いじゃない? じゃあ直接体に教えてあげなきゃね!』


 「あまぁぃぃいいっ! 【束縛魔法】! 【冷却魔法】!!」



 あたしの魔法で次々とスキュラたちは上半身を絡め捕られる。



 『なにこれ!? でも残念ね、私たちは脚が自由に使えるなら上半身を絡め捕ったって‥‥‥ あれ?』


 スキュラたちは高笑いしたが下半身の足はあたしの冷却魔法で動きが悪くなっている。



 「ベルトバッツさん! やっちゃって下さいですわ!!」


 「了解でござる、姉御!!」



 ベルトバッツさんはシュルっと自分を液化してスキュラたちの間をすり抜けダークエルフに肉薄する。



 「なっ! この化け物っ!」



 慌てて短剣をベルトバッツさんに突き刺すが全くと言っていいほど効かない。


 「この体であれば紐の様にも鞭の様にも簡単に成れるでござる! 受けよ『至高の拷問』!!」


 「あ”あ”あああああぁぁぁぁぁっ!」


 残念ながらスキュラの陰でどんな「至高の拷問」が行われているのは見えないがこれであとはクシュトリア司祭だけ!



 「ひいいぃぃぃっ! お、男ぉっ! 汚らわしいぃっ!」

 


 向こうでクシュトリア司祭が悲鳴を上げる。



 「ショーゴさん一気にやりますわよ! 【雷撃】!!」


 「むんっ!」



 あたしの【雷撃魔法】に手前のスキュラは感電して倒れその後ろにいたのはショーゴさんが容赦なく切り伏せる。


 これでもう向こうの守り手は無くなった!


 さあ、後はクシュトリア司祭だ。



 「くうううぅぅっ、お、おのれぇっ! アラス! 引きます!!」


 「くひぃぃんっ! ああ、クシュトリア様ぁ、これもう少しだけぇ!!」


 ベルトバッツさんがモザイクかかっている拷問している向こうでダークエルフのアラスとやらは変な回答している。



 「もうあきらめなさいですわ! 大人しく投降する事ですわ!」



 びしっ!



 あたしが指さすとクシュトリア司祭は笑い出した。


 「くふふふふふっ! 流石はエルハイミさん。素晴らしいですね? しかし私もそう易々と捕まる訳にはいきません。いけっ! お前たちっ!!」



 ばっ!!



 ベッドの向こうに追いやられていた交易官の女の子たちがいきなりベルトバッツさんに襲いかかったりあたしたちの前に立ちふさがる。



 「うおっ!? なにをするでござるか!?」



 ベルトバッツさんは交易官の女の子に突き飛ばされモザイクの外に出る。

 するとモザイクの中にクシュトリア司祭は飛び込む。


 「あっ! 待ちなさいですわ!! 【雷撃】!!」


 あたしはクシュトリア司祭に【雷撃魔法】を放つもその間に残りの交易官の女の子が立ちふさがる!?



 ばちっ!



 「あっ!!」



 雷撃は交易官の女の子に直撃してその隙にクシュトリア司祭は【帰還魔法】を発動させる。


 しまった、指輪の中に帰還魔法もあったのか!?

 しかし今は【雷撃魔法】を受けた交易官の女の子が心配だ。

 

 あたしが交易官の女の子に駆け寄る前にクシュトリア司祭の【帰還魔法】が完成してモザイクごと消えてしまった。


 取り逃がしてしまったがあたしは交易官の女の子に【治癒魔法】をかける。



 「主よ下がれっ!!」


 

 そう聞こえた瞬間にあたしの体はショーゴさんに引っ張られる。

 そして目の前を通り過ぎる鍵爪。



 えっ?



 引っ張られたあたしと入れ替わるようにショーゴさんが前に出て交易官の女の子を切り伏せる。



 「なっ!?」



 しかし見れば彼女は既に人ではなかった。

 


 ずばっ!


 ざんっ!!



 何かを切る音がした。

 見ればショーゴさんが立ちふさがっていた娘、ベルトバッツさんは襲いかかてきた娘を共に切り伏せていた。


 そして切り伏せられた娘たちもやはり既に人ではなかった。



 種の魔怪人。



 ボーンズ神父のあの魔怪人たちと同じだった。


 いつの間にか種を彼女たちに植え付けあたしたちから逃げる為に使い捨てにした。

 一度発芽して融合されてしまえば人に戻る術は無い。

 しかもその人の魔力を吸いつくすから命も持って一日で死んでしまう。


 「くっ!」


 あたしは唇をかじる。

 やはりジュメルはいつも後味の悪い事をしてくる。


 助けられなかった。



 「エルハイミ‥‥‥」


 やっとナマコの内臓を取り払ったシェルがやって来る。


 「戻りますわ。みんなこちらへ」




 あたしはそう言って魔法陣を発生させ異空間渡りでティアナたちの元へ戻るのだった。 

 

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