第354話13-11花嫁
13-11花嫁
「コクちゃんは大きく成ったら何に成りたいのかなぁ~?」
「お婆様、コクはお母様のお嫁さんに成りたいです」
「あらあらあら~コクちゃん可愛らしいわねぇ~ でもコクちゃんのお母様とは結婚は出来ないのよ~ 将来コクちゃんが大きくなって素敵な人を見つけたらその人のお嫁さんに成ってあげてね~」
「ではコクが大きく成ったらお母様のお嫁さんに成ります!」
「あらあらあら~、もう、可愛いわねぇ~」
いや、ママンってば可愛いですまないのでやめて!
あたしはコクを見るとギラギラした目であたしを見ている。
それはもう期待しまくりの目で!
「お母様、コクにあまりそう言う話は‥‥‥」
あたしが予防線を張ろうとした時だった。
「あらあらあら~、そう言えばすっかり忘れていたわぁ~。あなた、ティアナちゃんとの約束が本当に守ってもらえたのだから私たちも認めないといけないわよぉ~」
はぁ?
何の約束よ?
あたしはママンを見る。
しかしママンはニコニコとしているだけパパンを見ている。
「ユリシア、約束と言うとエルハイミに子供が出来たら二人の事を認めると言うあの話かい?」
「あらあらあら~、あなたちゃんと覚えていたのねぇ~。そうよ、私たちもちゃんと二人を認めなきゃですよ~」
ああ、そう言えばなんかそんな話してたっけ?
でもそれは良い事ね。
なんだかんだ言ってあまり乗り気でなかったパパンもこれで認めなければならないのだもの。
これで実家でもティアナがあたしの旦那様って事になるもんね。
あたしは思わず腕を組んでうんうんと頷いているとママンがもっととんでもない事を言い出した!
「あらあらあら~、そうすると私たちもちゃんと祝ってあげなきゃよぉ~。ねえエルハイミ、まだ式は挙げてないのよねぇ?」
「はいっ?」
あたしは理解が追い付かず瞳をぱちくりとしている。
そんなあたしに気付いていないのかマイペースなママンは話を進める。
「あらあらあら~、そうしたら急いで式を挙げなきゃよねぇ~。順序は逆になっちゃったけど、エルハイミとティアナちゃんの花嫁姿は見たいものねぇ~。ねえあなた、ささやかだけど私たちだけでもエルハイミたちの為に式を挙げてあげましょうよ~、いいですわよね~?」
「ユリシア?」
ママンのその言葉に流石に驚くパパン。
が、そのママンの言葉に追い打ちをかける人が現れる。
「それは是非ともお願い致します、お義父様、お義母様!」
ティアナが将軍モードのまま興奮気味に賛同する。
途端に周りからいろいろな声が上がる。
「そんな! お、お姉さま!?」
「ま、まあ仕方ないわね、私はもうあれだったから‥‥‥ い、良いんじゃない、エルハイミ」
「ティアナ様! そんなぁ」
「ティ、ティアナ様が本当に正妻に取られてしまう‥‥‥ うう、こうなったら側室でもいいからティアナ様のご寵愛を!」
「えーと、お母様と赤お母様の式を挙げると言う事ですね、お婆様?」
『あら、良いんんじゃない? あんたら二人ともちゃんとした式は挙げてなかったものね』
あー。
あたしは急なその話に追い付けづ呆然と聞いているだけだった。
* * * * *
急な話しだったがあたしとティアナは挙式をあげる事となった。
そしてその話は本来ならば大々的に式を挙げなければならなかったのだけど時間が無いのとティアナの猛烈な賛同で小さいながらも身内だけでもすぐにでも式を挙げようと言う事となった。
「あらあらあら~、エルハイミは私の花嫁衣装がぴったり合うわね~。良かったわぁ~このドレスは私があなたのお婆様に仕立ててもらった物なのよぉ~。あらあらあら~、ティアナちゃんも急な仕立てだけどよく似合っているわねねぇ~。うん、身長が高いからそのドレスもよく似合っているわぁ~」
あたしとティアナはハミルトン家の総力を挙げて準備している挙式の花嫁衣装合わせをしている所だった。
「本当によくお似合いですよ、エルハイミ様。イーガル様が生きておられればさぞお喜びだったでしょう」
メイド長のエルザさんが他のメイドたちに指示しながら花嫁衣裳の最終調整をしている。
「ぅえぇエルハイミぃ様ぁ! なんと神々しいい! 素敵です! これはもうご飯五杯は行けますぅ!!」
ササミーはウェディングケーキを腕を振るって作ってくれるとか言っていたがあたしのウェディングドレスの衣装合わせを是非とも一目見たいと言ってユミナちゃんと一緒に見に来ている。
「エルハイミ様、お奇麗です! ああ、本当に女神様です!」
なんかユミナちゃんってササミーに似てきたわね。
「エルハイミ‥‥‥ 奇麗よ‥‥‥」
ティアナがあたしを見て興奮し始めている。
「ティ、ティアナも奇麗ですわよ、でも落ち着いてですわ。今はだめですわよ」
ティアナはあの呪いのせいでたまに精神不安定になる。
それを鋼の意思で抑え込むためにもあの将軍モードでいる。
それは冷静に、そして他の人からは冷たい感じに受け取られてしまうが、あたしと二人きりでいる時はその本性をあたしに思いきりぶつけてきてすっきりしないといけない。
まあ、あたしはそれでもいいのだけどティアナはそれまで我慢しなければならない。
「はぁ、いいなぁお姉さま。確かに奇麗ですけど、私の事ももらって欲しいのに」
「悔しいけど、二人とも奇麗ね。ま、あたしは気長にエルハイミを待つけどね」
「ティアナ様、お美しい。しかし、エルハイミさんに取られてしまった。悔しいです」
「セレ、仕方ないわ。だからあたしたちはティアナ様の側室に成ってご寵愛をいただけるようにしなきゃ。ティアナ様が正妻よりこちらに来られるように今まで以上にご奉仕しなきゃよ!」
『馬子にも衣裳か、二人とも奇麗だわよ』
外野がなんか言っている。
しかしそんな中にコクはあたしたちの所までやって来る。
「お母様、赤お母様。コクも大きく成ったら一緒に花嫁に成りたいです」
「あらあらあら~! もう、コクちゃん可愛いわぁ~!! もうついでにコクちゃんの花嫁衣装も仕立てちゃおうかしら~」
いやいやいや、ママン何言ってんのよ!
あたしたちの婚姻に娘のコクまで一緒に花嫁にしてどうする!?
可愛さ余って正常な判断が出来なくなっているわよ!!
「コク、今回は私たちを祝福してくださいですわ。コクは大きくなってからですわよ」
あたしはこれ以上ややこしくならないようにコクにそう言うとコクは大きく頷いてにっこりと笑う。
「わかりました、お母様が私が大きく成ったら私をもらってくれるのですね! うれしいです!」
ありゃ?
なんか今とんでもない事をやっちまったような気がするけど‥‥‥
「ちっ! とうとう黒龍様にまで手を出しやがりましたでいやがりますね、主様!」
「あー、結局最後の相手はコクかぁ。全くエルハイミってば!」
「ずるいですよ! お姉さま!! 私ももらってくださいよ!!」
え、ええとぉ~
「エルハイミ、今晩は許しませんよ‥‥‥」
なんかティアナも静かな物言いだけどすごい迫力がある。
あたしは頬に一筋の汗を流すのだった。
◇ ◇ ◇
二日後あたしたちは実家のそばにある教会にいた。
「それでは誓いの口づけを」
ここは豊作と愛をつかさどるファーナ様のを祭る教会。
元々ママンはファーナ教を信仰する。
なのであたしたちの婚姻を祝福する為にこの教会で式を挙げてもらう事となった。
参席者は本当に身内だけ。
ガレント側は流石に間に合わないので誰もいないけどハミルトン家は総出であたしたちの式に参席している。
新郎新婦ではなく新婦が二人並んでいると言う不思議な光景だけどあたしたちは幸せだった。
ティアナはあたしに振り向きブーケを一旦付き添いのセレに渡しあたしの肩を引き寄せる。
「エルハイミ、もう離れない。あたしの命ある限りあなたを愛し続けます」
ティアナは真剣な顔であたしを更に引き寄せる。
あたしはティアナにされるがままにその身をゆだねる。
「ティアナ、やっと。私うれしい、幸せですわ」
そう言ってあたしは目をつぶり唇を突き出す。
そしてあたしの唇にティアナのやわらかく温かい唇が重なる。
わぁぁああああぁぁぁっ!
「「「おめでとうっ!」」」
とたんにみんなから祝福を受ける。
いろいろとあった。
ティナから離れ長々と苦労もしたけどあたしたちはとうとう正式に一緒に成れた。
昔のあたしならまさか本当にティアナと一緒に成れるとは思いもしなかったけどあたしは自分に問う。
―― エルハミ、あなたは幸せですか? ――
答えは勿論。
「ティアナ、私今最高に幸せですわ!!」
あたしとティアナはブーケを投げ飛ばしながらその場でもう一度口づけをかわすのだった。
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