第248話9-20黒龍の魂
9-20黒龍の魂
魔法陣が起動してあたしとシェルは一瞬浮遊感を味わった後自分の魂が肉体から離れるのを感じて精神世界に飛ばされていく。
* * *
黒龍とクロさん、クロエさんの魂の連結の道筋に乗ってあたしたちは精神世界に着いた。
そこであたしたちは前回同様に全裸でシェルの首が鎖でつながった状態で気が付いた。
「あー、またこの格好かぁ~、まあこの鎖は邪魔にはならないからいいけどなんか腑に落ちないわね」
「仕方ありませんわ。魂の隷属が続いている証拠ですものですわ」
あたしは手首から生えている鎖を見る。
くいっと引っ張って見るとそれはじゃらじゃら音を立てて手首から延びる。
前と同じだ。
さて。
「まずはクロさんとクロエさんの魂から出ているこの連結の道をたどりましょうですわ。きっとその先に黒龍様の魂があるはずですわ」
そう言ってこの何もない真っ白な世界に唯一存在する連結の道をたどりあたしたちは歩き出す。
* * *
「むう、流石に揺れるか。エルハイミも成長したって事ね‥‥‥」
いきなりシェルがそんな事を言ってくる。
何が揺れる?
シェルの視線を見るとあたしの胸に行きつく。
「こんな時に何を見ているのですの? さあ、とっとと歩くのですわ!」
「いや、裸だと戦闘時それって揺れて邪魔になるんじゃないかなと‥‥‥」
そう言いながらシェルは自分の胸に手を当てる。
そして寄せてあげてみる。
しかしその努力はむなしく谷間すらできない。
そしてむぅ~と唸りながらつぶやく。
「大きすぎるのは嫌だけど流石にこれじゃなぁ。マーヤまでとは言わないけどもう少し欲しい。エルハイミこれがうまく行ったらあたしにもマッサージして!」
こいつ何をいきなり言い出すのやら。
「戦闘の時揺れて邪魔になるとか言ってませんでしたかしら? そんな事より急ぎますわよ」
「あたしの胸はそんな事かよ‥‥‥」
なんかぶつぶつ言っているけど無視する。
* * *
しばらく連結の道に沿って歩いていると向こうに大きな黒いモヤがかかったものが見えてきた。
間違いなくあれが黒龍様の魂だろう。
それは大きな球体で色を黒く染めていた。
そして球体の周りにはあのモヤがかかっている。
「とうとう見つけましたわ、あれが黒龍様の魂ですわ!」
それは球体の形でスライムのように半透明だった。
精神世界にいるのだから本来は現実世界と同じような姿格好なはずなのに?
しかしよくよく見ると球体の中心部、核となるところに人と同じくらいの大きさの竜が横たわっていた。
「黒龍様! 聞こえますか黒龍様!?」
あたしは声を張りあがて黒龍様に話しかける。
すると球体の中心部にいたあの竜が首だけを持ち上げてこちらを見ている。
「良かった、意識はまだはっきりとしておりますわね? 私はエルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン、クロ様とクロエ様に代わりこの呪いを解くためにやってまいりましたわ!」
あたしがそう言うと弱々しい声が聞こえてきた。
『エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンとやら、来てくれてありがとう。しかしこの呪いは既に私の魂をほとんど浸食しています。かろうじて、こうして最後の意識を竜の姿にまとめましたがこの周りに作り上げた魂の防壁が完全に浸食されれば私の魂と肉体は完全に途切れてしまいます。そうすればいくら私でも力を失って二度とよみがえることは出来ないでしょう』
奇麗な女性の声だった。
しかしその内容だと一刻を争う。
「黒龍様、呪いの解除呪文を行います。よろしいですわね?」
『この呪いは私の魂の力そのものを使って増殖しています。人間の力でどこまで解除ができるか‥‥‥』
「それでも試させていただきますわ! 【解除魔法】!!」
あたしはそう言いながらありったけの魔力をつぎ込んで【解除魔法】を発動させる!
あたしのその魔法に黒いモヤが反応して消えていくが、大きなスライムの様な外壁はそのままだった。
『やはり人間の力では難しかったですか‥‥‥ ありがとう、ここまで来てくれて』
その声にはあきらめの色が含まれていたがそんな事くらいで諦めるあたしじゃない!
「まだまだですわ! 【解除魔法】!!」
もう一度あたしは魔法を発動させる。
すると今度はスライムの表面がふるえて動き出す?
『いけない! 呪いが防衛の為動き出した! 逃げなさいエルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン!!」
黒龍様の警告が発せられると同時にスライムの表面から触手のようなものが伸び出てあたしたちを襲う!?
キリのように鋭くなった先端があたしたちを襲うが既にあたしたちはその場を飛び退きその触手たちに攻撃魔法を発している。
「【炎の矢】よ!!」
「炎の精霊よ手伝って!」
あたしの百以上の【炎の矢】とシェルによって召喚されたサラマンダーがその触手を攻撃する。
触手は【炎の矢】とサラマンダーの体当たりで焼かれて炭と化して消えるが後続がいっぱい伸びだしあたしたちを襲い来る!
「うわっ! なんかいやらしい動き!! あんなのにつかまったら何される事やら!?」
「シェル、無駄口叩かないですわ! 魔力を送ります、精霊の大軍をですわ!!」
シェルは分かったと言いながら意識を集中して精霊の大軍を召喚する。
「みんな来て! そしてあたしに力を貸して!!」
そのシェルの召喚に千を超えるサラマンダーやシルフ、そしてウンディーネの精霊たちが集まる。
「行け精霊たちよ! あの気持ち悪い触手をやっつけて!!」
シェルの召喚した精霊の軍団は一斉に触手に群がっていく。
あたしはスライム本体めがけて【解除魔法】を何度も撃ち込む。
そして【解除魔法】が当たった場所に変化が表れ始めた。
【解除魔法】が当たった黒い半透明なそれは水のように溶けて流れ出す。
「よし、効いているようですわ! シェルそのまま触手を押さえてくださいですわ!!」
シェルはさらに精霊たちを召喚して襲い来る触手たちを攻撃する。
『ぐっ』
しかし黒龍様が苦しみ始めた!?
スライムの中心にいる黒龍様は苦しそうにしている。
「黒龍様、どうしたのですのですわ!?」
『エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン、どうやら呪いが私の魂自体を使いあなたたちを攻撃しているようですが、あなたたちの攻撃で呪いが消されると同時に私の魂も同時に消されています。しかしこうなっては仕方ない。私の魂が尽きるのが早いかあなたたちの攻撃で呪いに汚染された部分が駆除されるのかが早いかの勝負です。かまいません呪いたちをどんどん攻撃なさい!』
なんと、あたしたちの攻撃は黒龍様の魂自体を削っていく羽目になっていたとは!?
しかし黒龍様の言う通り、悪い腫瘍を取り除くのと同じ、一刻も早く呪いの汚染された魂の駆除をしなくては!
あたしとシェルは襲い来る触手と黒く変色したスライムボディーに攻撃を重ねるのであった。
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