第178話7-16奇襲
7-16奇襲
流石と言うかなんというか、ユエナの街の工芸品は素晴らしかった。
「な、なんなら欲しいの全部買ってあげるわよ!!」
太っ腹なティアナであるがそんなに沢山は必要ないって!
既に試しにつけてみた髪飾りは二十を超える。
ティアナはそれ全部買うつもりでいる。
あたしは迷いながらティアナに聞く。
「目移りしてしまいますわ、ティアナこれなんかどうでしょうかしら?」
頭にそのかんざしを刺してティアナに振り返る。
「うん、それも可愛い!全部買ってあげるわよエルハイミ!」
「ティアナ、全部なんて必要ないですわ。ティアナが選んでくださいな、ティアナとここへ来た思い出の品にしたいのですわ。」
あたしがそう言うと二十一個の中から選んでもらおうとしてそれらを並べる。
う~んと難しい顔をしてティアナは悩んでいる。
「あたしこれ欲しい!ティアナついでに買って!!」
「シェルは自分で買いなさいよ!!」
「けちぃ~!!あ、エルハイミこれなんかどう?」
シャルがひょっと取り上げたそれはあたしも気になっていたやつだ。
そのままシェルはあたしの頭にそのかんざしをつける。
「ほら、どうよ?ティアナも見てみなさい。金髪にはこういうのが似合うのよ!」
「ぐっ、確かに似合うけど、シェルが選んだら意味無いじゃない!」
髪の色に合うかぁ。
シェルにしては珍しくまっとうなこと言ってるな。
あたしはもう一度髪飾りを見る。
そしてその中から一つを取り上げシェルとじゃれているティアナの頭にそっと挿してみる。
「え?エルハイミ??」
「へぇー、似合うじゃん!」
あたしが挿した髪飾りはティアナの真っ赤な髪の毛によく合う。
「ティアナにもよく似合いますわ、きれいですわよ。」
「えっ?そ、そうかな??」
少し顔を赤らめさせはにかむティアナ。
うあー、かわいいっ!
そのままお持ち帰りしたいわ!!
「ねね、じゃああたしは?」
シェルが割って入ってくる。
実はあたしは既にシェルに似合いそうなのを見つけていた。
それを取りシェルの頭に挿す。
「あら?シェルのくせに似合うじゃない?」
「どういう意味よ!?ティアナ!!」
じゃれているがみんなそれぞれに合う髪飾りが見つかり内心嬉しかったりする。
太っ腹なティアナは面倒だからと言ってこの三つをお買い上げ。
あたしたちは髪飾りをつけたまままた街を散策し始めた。
* * * * *
「ふう、大体の所は見て周ったわね?」
『シェルのはそのまま観光だわね?地図のおすすめスポット全部回るのだもの。』
なんだかんだ言って観光マップのおすすめの場所は全部回ってしまった。
もしこれがバカンスかなにかだったらそれもいいのだがこの後強襲をかけなければならない。
あたしもティアナも大体の地理は頭に入れた。
「それじゃぁ、待ち合わせの酒場に戻りましょうか?そろそろお父様たちも戻っている頃よ。」
ティアナはそう言いながら酒場に向かう。
あたしたちもそれについて歩き出したが、シェルが小声で呼んでくる。
「エルハイミ、ティアナあそこ!」
見ると建物の壁にどうやら地下に続く入り口のようなものが有る。
地下神殿がどのくらいの大きさかはヨハンさんたちがこれから教えてくれるだろうけどきっとこう言う所から出入りしてるのだろう。
「シェル、今は酒場に戻りましょうですわ、あたしたちが出入り口の一つ二つ見つけても仕方ありませんわ。」
「そうだけど、ほらあの女ってもしかして例の幹部?」
言われてあたしはもう一度出入り口にいた女性を見る。
げっ!
ジェリーン!!!
あいつこんなん所で!?
「エルハイミ、あの女は確かジェリーン!!」
「ええ、間違いないですわ、今はまっとうな町娘の格好してますがあの顔とでかい胸は忘れませんわ!!」
アンナさんに匹敵するそれはアテンザ様にも負けないかもしれない。
他に見た女幹部もスタイル良くて美人で胸のでかいのが多かったけどもしかしてジュメルの幹部になる条件なの?
「どうする?」
シェルは目を細めて弓に手をかける。
あたしはそれを制して物陰に隠れる。
「今ここで私たちの存在が知れると事ですわ。奇襲が失敗してしまいますわ。私やティアナは顔が知れています、残念ですが今はアコード様たちに合流するのが先ですわ。」
あたしがそう言うとシェルは弓から手を放し「わかった」とだけ短く言った。
ノルウェンやユグリアの奇襲時に指示をしていたジュメルの女幹部。
まったくこいつとは変な縁が有るな。
しかしこれではっきりと分かった。
間違いなくここがあいつらのアジトだ。
あたしたちは見つからない様に裏通りを迂回して待ち合わせの酒場に急いだ。
* * * * *
「全く厄介だな、まさか地下神殿がこうもでかいとは!」
酒場に着いたあたしたちは二階の個室の部屋で作戦会議を開いていた。
流石に全員は入れないので部隊の小隊長とヨハンさん、あたしたちだけでここにいる。
「どうやら近々編隊を組んでどこかに遠征にでも行くようなそぶりをしていました。女幹部の一人を中心に黒ずくめが五十、怪人が七が偽装の準備をして馬車に乗り込むようです。残りはそのまま神殿にいるようですが、神殿にいる者は全て黒ずくめです。一般信者は見当たりません。」
ヨハンさんの報告で襲撃の段取りを更に進める。
アコード様は既にアマデウス伯爵の所に行って出兵の要請を済ませてある。
あたしたちが奇襲をかけ、万が一逃げ出した連中が街の中で騒動を起こさない様にするためだ。
「奇襲は我が第一軍特殊部隊が中心にこことここ、そして一番大きな入り口から攻め入る。ティアナたちは後方から魔法援護とマシンドール部隊の突入をしてもらう。オリジナルのマシンドールだ期待しているぞ。そしてヨハン達は海への抜け道から奇襲を頼む。逃げ道を遮断するんだ。」
こちらの戦力はアコード様率いる特殊部隊の魔法騎士が五十人、剣聖のロクドナルさんも加わるのでこれだけの人数がいれば黒ずくめは問題無いだろう。
問題は怪人と向こうにいるマシンドールだ。
アイミたちマシンドール部隊がいるのでティアナが同調すれば他の四体も同時に扱える。
後はあたしとシェルの魔法と弓矢で遠方からの攻撃、接近戦時にはショーゴさんにカバーしてもらえば大丈夫だろう。
「決行は深夜零時に行う。それまで各人良く休んでくれ。時間になったらそれぞれ配置についてくれ。」
アコード様はそう言って立ち上がる。
おおよその段取りが終わりあたしたちは軽い食事をとりに下の階に行く。
* * *
「ねえエルハイミ、ジュメルの奴等って人間なのかしら?」
準備が終えあたしたちは今奇襲の為指定された場所で待機している。
もう少しすると時間になる。
そんな緊張の中、ティアナがこんなことを聞いてくる。
「元人間だ。俺のようにな。」
ショーゴさんが短く言う。
と言う事は既に洗脳済みの操り人形と言う事になる。
「奴らに情けは無用だ。隙を見せれば抱き着いてきて自爆すら平気でしてくるぞ。人と思わない方が良い。」
「うん。」
ティアナはこくりとつばを飲む。
もうじきヨハンさんたちの隠密が見張りを始末する頃だ。
と、地下への入り口からランタンの光が回される。
合図だ!
あたしたちは足音を忍ばせ地下へと続く階段を降りるのだった。
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