第142話6-14再挑戦開発

6-14再挑戦開発


 いろいろと危なかった・・・



 精霊都市ユグリアから帰ってきたあたしたちはイチロウ・ホンダさんの和食御前のお重に舌鼓しながら楽しいひと時を過ごすはずだったのに途中からあたしの操がものすごく危険な状態にまで発展してしまった。


 あたしはティアナや師匠に、そして今回はなんとアンナさんにまで服を引っぺがされ、ロクドナルさんやショーゴさんがいるというのに下着姿にされ、更にそれにも魔の手が迫っていた。

 でも間一髪のところでアイミの手刀が炸裂して、みんなに布団かけてあたしは早々に宿舎に逃げ帰った。



 あー、危なかった。

 大体にして初めてのあれが来ていてこっちは大変だっていうのにみんな見境ないんだから。


 しかし、女の子の体って大変だなぁ。

 実はちょっと痛みが有るので今はまだベットの中で大人しくしている。



 もしかしてこれって毎月こうなるの??


 

 う~、憂鬱ってのがよくわかるわ・・・・



 とりあえず今日はみんなしばらくは大人しくしているだろうからあたしもじっと大人しくしていよう。


 朝の雀ちゅんちゅんを無視してもう一度無理やり枕に顔を埋めるのだった。




 * * * * * *



 『ひどいよ、エルハイミ!あたしこっちは初めてでよくわからないっていうのに!!』


 お昼ごろになってシェルから念話が入った。

 やっぱりこのくらいまでみんな死んでいたようだ。


 『それに何これ?頭ガガンガンするし、ものすごく喉は乾くし、だるいわよ・・・ はっ!?まさか呪いが残っている!!?』


 『そんな事はありませんわ、それは二日酔いと言うものですわ。昨日いつの間にか師匠のどぶろくをかぱかぱ飲んでいたでしょう?あれはお酒ですわ。自業自得ですわ!』


 そう言えば昨日はシェルにも脱がされそうになった。


 エルハイミの胸とあたしの胸どっちが大きいとか訳の分からないこと言いだして!!

 あやうくロクドナルさんたちに見られてしまう所だった!!!



 なので、シェルは自業自得!!!



 あたしは洗面して歯磨きしながらシェルに聞く。


 『それでシェル、あなた今どこにいるのですの?』


 『ティアナについてそっちに向かってる。』


 そうか、じゃあ探しに行く手間省けたな。

 あたしはいそいそと着替えて準備する。

 そしてしばらくするとドアをノックする音がした。



 「エルハイミ、いる?」


 「ティアナ、空いてますわよ、どうぞ。」


 ティアナはあたしの声に扉を開き部屋に入ってくる。


 「エルハイミ、こいつ連れてきたわよ。ところでこいつって今後何処住むの?」


 「え?エルハイミと一緒じゃないの??」


 シェルは当たり前のように言うけど、学生じゃないモノが宿舎に許可なく勝手に住み込むわけにはいかない。


 「駄目に決まってるでしょ!あんたは師匠の所でみっちり仕込まれた方が良いのよ!」


 「えー、やだぁ!あたしエルハイミと一緒がいい!」


 「なっ、こいつ!!」


 「何よ!いいじゃん一緒にいるくらい!あたしまだこっちの世界になれてないんだもん!」


 「だったらソルミナ教授の所に行きなさいよ!きっといろいろ教えてもらえるわよ!!」



 がるるるるるるっ!

 ふしゃー、ふしゃー!



 ティアナとシェルがじゃれている。

 あたしはため息ついてからシェルとティアナに【浄化】魔法と【回復】魔法をかける。


 「二人ともお酒臭いですわよ、それとあまり効きませんが【回復】魔法をかけましたわ。これでシェル、少しは楽になったでしょう?」


 「あ、本当だ。頭ガンガンするのがだいぶ楽になった。」


 「ありがと、エルハイミ。これでお風呂入らなくてすんだわ。」


 眉間にしわを寄せていた二人はだいぶ穏やかな表情になる。

 さて、お腹すいたからこの二人連れて食堂にでも行こうかな?


 「そう言えばアンナさんはどうしましたのですの?」

 

 「ああ、アンナならもう開発棟に行ったわ。早速四連型の作成に取り掛かるんだって。」



 『あんたらはいかないの?』



 シコちゃんが話に割り込んでくる。

 そう言えば最近静かだったなぁ、どうしたんだろ?

 

 「ええ、行きますわよ。でもお腹すいたので食堂に行きません事?そう言えばサージ君は?」


 「ああ、サージならアンナたちに食料を届けに行ってるわ。」


 ふみゅ、じゃあアンナさんの分はいいか。

 あたしたちは遅い朝食と昼食を一緒にとりに行った。



 * * * * * * * * *



 開発棟にはいつものメンバーがいた。

 そしてエルフの村で作ってきた上級精霊を融合した魔結晶石に見入っていた。

 

 「これが上級精霊を封じ込めた魔結晶石ですか。」


 「すばらしい、魔晶石とはやはり比べ物にならない安定度だ。」

 

 「上級精霊一体でもすごいというのに四大精霊すべてがそろうとは、いやはや、流石に君たちだ。」


 ゾックナス教頭やマース教授、ジャストミン教授たちは驚きを隠せずそして魔術師としての当然の興味をその魔結晶石に注ぎ込んでいた。



 「うう、でも融合するときは流石に死ぬかと思いました。学園長まで参戦してそれはそれはすごかったのですから。いくら私でももう二度とああいう経験はしたくないです。」


 ソルミナ教授は自分の両腕を抱えて震えていた。


 「大丈夫ですよ、ソルミナ教授。あんな経験そうそうできるものではありませんよ。」


 アンナさんは笑いながら言うけど、普通の人だったらまずしない経験だよ?


 と、あたしたちが来たことにみんな気付く。


 「エルハイミちゃん、どうですか具合は?」


 「おお、聞いたぞ、大変だったらしいな?」


 アンナさんやマース教授たちが出迎えてくれる。


 あたしも流石に良く休んだので順調に回復している。

 既に歩くのは自分でできるし、髪の毛の色も八割がた戻っている。


 「ええ、おかげさまでだいぶ良くなりましたわ。」

 

 「アンナ、どんな感じ?」


 「へぇえ、ヒュームの建物っていろいろあるのね?」

 

 ワイワイ言いながら現状の確認をする。

 そしてアンナさんのまとめた意見を聞く。


 「現状では魔結晶石は安定しています。しかし融合時の事を考えると一筋縄ではいかない可能性が強いですね。せっかく四連型魔晶石核の起動をしても相互作用が上手く行くかどうか、それと『至高の杖』を使って強制的に動かさないといけないかもしれません。」


 ほえ?

 シコちゃんが必要なの?


 「シコちゃん、上級精霊たちの制御って出来そうなのですの?」


 『うーん、魔力さえ使えば無理やりは出来ると思うわよ。でもそれって強制労働だから反感もらうと十分な効果でない場合もあるわね。それとちょっとやばいかも・・・』


 え?

 何がやばいの?


 「どうしたのですの??」


 『うん、前回の事でだいぶ力使ったじゃない?どうやらあたしも年みたいで不定期だけど眠くなりそうなのよ、実はあなたたちがユグリアからボヘーミャに帰ってくる間、あたし眠ってたのよ。』


 「えっ?シコちゃん寝てたの!!?」


 ティアナが驚く。

 あたしだって驚いている。


 「どうしたのですか、殿下?」


 あたしとティアナはお互いにうなずきあってから言う。


 「実はシコちゃんが不定期ですがに眠りに入る可能性が出てきてしまいましたわ。」


 「不定期的に眠る?」


 そう、大魔法の連発がどうもシコちゃん自体に負荷をかけ眠りに誘う、休眠状態になってしまう可能性が出てきたのだ。


 「そう言えば、シコちゃんって前の長期休眠の時何したのですの?」


 『うーんと、確か狂気の巨人をクリスタルに封じ込めるために超大魔法を発動したような・・・』


 狂気の巨人ってあの伝説の?


 「じゃぁ、シコちゃんに無理させると休眠状態になっちゃうんじゃない!?」


 「殿下?」


 「アンナさん、シコちゃんの話だと以前の休眠原因が超大魔法の使用のようでしたわ。あの『狂気の巨人』を封印したそうですわ。」



 「「「!!!??」」」」


 あたしの話にアンナさん含めこの場にいるシコちゃんの声が聞こえない人たちが驚く。

 そりゃそうだ。

 伝説の話だった「狂気の巨人」なんてのを封印したってんだから。



 「それだけ『至高の杖』が強力と言う事じゃの。流石は三種の神器の一つじゃ・・・」


 ゾックナス教頭のつぶやきはみんなの心情の表れだろう。

 しかし、そうなると狂気の巨人とまではいかなくても上級精霊の制御、果たしてうまくいくだろうか?


 『うん、エルハイミだめね。また眠くなってきた・・・わ・・・』


 「え?シコちゃん?シコちゃん!!?」


 「ちょっと、シコちゃん!!?」


 「どうしたのですか?殿下、エルハイミちゃん!!?」


 何度も呼んでも反応が無い。



 「どうやらシコちゃんが眠ってしまったようですわ・・・」




 あたしのその言葉にみんなは押し黙ってしまったのだった・・・・ 


 

 

 

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