第34話3-9大魔導士杯第一戦目その一

3-9大魔導士杯第一戦目その一



 昨日はその後、ホリゾン帝国の挨拶のおかげでうっ憤を晴らす意味合いで出店の食べ歩きツアーとなった。


 おかげで夕食なんて一口も食べられない。

 誰か胃腸薬をくれという気分だ。



 はっ!?

 これが孔明の罠か!?

 

 な訳無い。


 

 流石に翌朝はまだ胃もたれ気味だったが昼頃には体調も回復して俺たちはいよいよ「大魔導士杯」の会場に足を踏み入れた。


 会場にはエントリーしたチームがずらりと並んでいる。

 出だしで失敗した俺たちは昨日のうちにサージ君経由で他のチームの概要を調査した。

 

 サージ君はフィメールさんが事前に情報収集していたものを取り出し、まずは俺たちの第一回戦対抗馬の東の国、イージムの留学生チームで「イザンカ王国」の者たちについて話す。


 イザンカ王国の出場者は宮廷魔術師見習いではなく、貴族の子息が中心になっているチームだ。


 中核を名家シドニア家嫡男、ジニオ=グレイ・シドニアが担い、同じく貴族のロングネマス=ゴールド・ロックウェル、貴族令嬢フィルモ=アシター、そしてドワーフのオルスターと言う編成となっている。


 実はイザンカは最古の魔術発祥王国でその研究については他国より一歩も二歩も進んでいると言われている。


 このチームは全員が成人以上で構成されているので、第一回戦では知識の面で有利か?


 しかしこちらにはアンナさんがいる。

 

 知識ではアンナさん一人で千の学者を相手に出来るほどだ。

 伊達に宮廷魔術師の孫でティアナの相談役をしていたわけではない。



 会場は観客を含め熱気で包まれている。

 司会兼進行役の生徒会長ロザリナ=アインシュさんがいよいよ「大魔導士杯」の開催を宣言する。

 歓声が沸き上がり、早速第一回戦が始まる。


 巨大な勝ち抜きトーナメント表に対戦相手の割り当てが一斉に表示される。

 魔法の光で照らされ、さながら電光掲示板だ。


 ちなみに対戦相手の割り当ては先日ティアナがくじ引きで行っていた。


 どういう原理かわからないけど、声の拡声を魔術で行っており、各実況中継に使ったり画像を大スクリーンに投影する魔法もあったりする。



 さあ、第一回戦だ。


 俺たちは八つのブースに分かれた会場の一つに入る。

 第一回戦はクイズで、問題は全部で五問。

 問題一つにつき一回ずつ回答できる。

 回答は時間内にボードに書き込み一斉に司会者に向けて提示する。



 「それでは皆様お待たせしました!第一回戦基礎魔術知識勝負始めます!」


 歓声が会場を包む。


 「それでは早速行まいりましょう!第一問、四大元素魔法と呼ばれる地、水、火、風。これらと同様に呼ばれるものは何魔法?」


 一般的に四大元素魔法と言われるがそれ以外にも広く知られているのが光と暗黒魔法である。しかしここはボヘーミャ、しっかりひっかけ問題である。


 「答えは『物理魔法』ですね。」


 流石アンナさん、ひっかけをあっさりと見抜く。


 「あら、光や暗黒魔法じゃないの?」


 「殿下、一般に自然現象を四大元素魔法といたしますが 授業中にあった我が国始祖の魔法王が見出した『すべての物質、元素にはマナが存在し、そのマナを操る事、物の理こそが魔術の究極である』が四大元素を含む物理であり、それら総称を『物理魔法』と言います。」


 そう、四大元素を含む全ての物質、元素は学園内では「物理魔法」とも呼ぶ。


 四大元素以外でも自然現象を使った魔法があるが、基本的にはどこかの女神様とつながっている。

 しかしつながっていないものも有ったりする。


 わかりやすく例えれば「念動魔法」がそれだ。


 誰でも扱えるその魔法はどの女神にも属さない性質である。

 マナに干渉して念動だけで物を動かす。

 つまり元素、物理に直接干渉しているわけだ。


 中には大地の女神フェリスのお力を弱めるとかいう人もいるが、実はどの女神の力が干渉しているかわかっていなかったりする魔法だったりもする。




 俺たちは「物理魔法」とボードに書き込み、司会の一斉に開示してくださいの声でボードを掲げる。


 ほとんどのチームが「物理魔法」と記載している。

 この辺はボーナスゲーム。

 本題はこれからだろう。


 ちなみに対戦相手のイザンカチームは間違っていたりする。


 「暗黒魔法」とか書いているが、君たち、いくら先行者だからって研究結果を無視しちゃだめよ。

 妙に悔しがっているが、まずは俺たちのリードで始まる。


 

 出だしはまずまず、すでに一問分リードした俺たちは有利に問題を進める。




 「それでは引き続き第二問。基礎魔法の水生成魔法、容量を二倍に増やすのに必要な魔力量は約二倍。では光の魔法の光量を二倍、持続時間を約半日にする場合は通常街灯にかける光魔法の約何倍の魔力量が最低必要でしょうか?」


 

 お、またまたひっかけが来たねぇ~。


 まずは光の強さは二倍なのでそのまま。


 しかし持続時間に関しては違う。


 実は光量が倍になると持続時間にも魔力が二倍必要になる。

 つまり街灯にかける魔法が一とすると光量二倍の明りの場合は更に魔力が二倍が必要になる。


 そうすると、街灯に光量二倍で更に持続時間で二倍必要なので合計で四倍となる計算だ。

 計算の弱い使用人なんかはそれに気付かず、単に倍の魔力量を注ぎ込むから途中半ばで明かりが消たりする。


 「えーと、四倍で良いのですかしら?」


 一応アンナさんに聞いてみる。

 するとアンナさんは頭横に振り、解説に入る。


 「通常の明り魔法光量二倍は魔力量を二倍であっています。しかし持続時間は単純に二倍ではないのです。質題の『約半日』の意味は十二時間という意味、通常は街灯では約十時間の持続ですから二割増しの継続時間が必要です。」



 うあー、なんて陰険なひっかけ問題!

 質題の内容をよく聞いていないと間違えるという罠。


 おのれ、生徒会長ロザリナさん!

 何故かニヤニヤして質題していると思ったらこういう事か!



 「そうすると答えは四.八倍で良いのね?」


 ティアナが確認をしながらボードに記載していく。

 ほどなく時間が来て一斉に回答の開示をする。


 アンナさんの見立て通り、四.八倍が正解。

 これには結構引っかかったチームがいて約半数が間違っていたりする。

 ちなみにイザンカチームはまたまた不正解。


 あ、なんかもめ始めてる。

 リーダー格のジニオ=グレイ・シドニアが真っ赤な顔で仲間に文句言ってる。

 


 三問目以降もこう言ったひっかけ問題のオンパレードかな?

 気を引き締めていこう、こっから先間違えると逆転される場合があるもんね! 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る