第8話 悲報の後
車で、約1時間20分程かけ戸中区の今川商店街付近へ着いた。すると、現地は、時間がまだ昼過ぎ13時頃ということもあり、人が一杯だった。まだ、張ってあった立ち入り禁止のロープをくぐって、2人は事件現場へ立ち入ろうとした。
すると、捜査官6人ほどと鑑識班が現場検証をしていた。
しばらく辺りを見渡していた秋山刑事は、江草刑事に
「江草さん、この現場は、おそらく商店街の曲がり角手前で、かなり狭い抜け道でまわりも古いビルに囲まれ死角になりやすいですね。これは、目撃者もどうでしょうね。」と言った。
江草刑事は、
「うーん。そうですね、これは。」と言い、2人ともロープの外へ出た。
すると、同僚の沢見刑事が近づき
「あっ、これはお疲れ様です。どうやら、美味仁刑事は、この現場を歩いて曲がり角手前で、急に前からナイフで5,6回胸を刺された模様です。通報者は、その時にはおそらくだれもいなく丁度そこを通ろうとしていた通行人男性だったらしいです。」
江草刑事は、
「うん。分かった。ありがとう。我々は、さっき搬送先の病院へ行ってきたが、飯島課長が、あとは任せてくれと。でも、残念ながら危篤らしい。」
と言い、3人は、しばらく事件現場近くで沈黙してしまった。
すると、秋山刑事の携帯が鳴り、彼は電話にでて、携帯を切った。
秋山刑事は、
「今、飯島刑事課長から連絡があり、たった今、美味仁刑事が、息を引き取ったらしい。」
と言った。
江草刑事は、余りの突然に
「えー。えー。なぜ。あの彼が。うーん。」
と肩の力を落として、しばらく動けなくなっていた。
特に親しかった沢見刑事は、
「きちしょう。誰なんやー。彼、やっと憧れの本部の捜査一課でこれからなのに。うーん。ひどすぎるー。あまりにー」
とビルの隙間の岩壁を何度か叩いて怒りをぶつけては、両手を壁につけ泣き崩れていた。
余りにも、けたたましく壁を叩くので秋山刑事は、慌てて
「沢見君、もうやめたまえ。もういい。」
それでも、まだ岩壁を叩くので
「もういい。聞こえてんのか。もうあいつは、あいつは。お前まで、んー、こら、聞こえてんのか。もう、やめとけ」
と、大声で両肩を激しくつかんで、やっと沢見刑事は、大泣きのままうずくまっ
た。
余りの落胆ぶりに、秋山刑事も江草刑事も心配になり、沢見刑事に車に乗ってもらい、神奈川県警本部ビルへ戻る前に彼のマンションへ連れ、しばらく今日は休みで、明日からの公務にした。
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