第71話ヒヨク。
もうダメだと思ったが、俺の運はまだついていたようだ。
なぜか菱形水晶が逆再生したかのように戻っていく。
それをボーと目で追ってしまうユウト。
近くの雪にマスケット銃の弾が着弾して現実に急に戻されて近くの木に隠れる。
あんなに追い詰めたのに何故かアレは戻って行った。
俺が考えられる可能性は三つだ。
一つ目は曲がった回数、ある一定の回数を曲がると一度オメガの持っている武器まで戻らないといけない。
つまりリロードだ。
もう一つが視覚的に見えなかったか、いやその線は薄いな、それだと一度戻って進み直しても問題がないと思われる。
最後の一つは距離、でもこれも二つ目と同じ進み直しても問題が無いと思う。
だが今は考えている暇はなさそうだ。
ヒヨクがオメガの腕に戻ってくる。
するとオメガはユウトが隠れている木を目掛けてヒヨクを再発射する。
「だよねぇ!!。」
そう叫びながらユウトはヒヨクが飛んでくる方向と逆方向で走る。
これは賭けだ。
俺が長く走って大体のリロードまでの距離を測るか、曲がった数を数えながら逃げるかの二択。
こういうのは深く考えずに直感の方が当たる気がする。俺の人生経験だけど。
心の中で答えを出すとユウトはソニックインパクトとプリトウェンでヒヨクから全力で逃げる。
時々兵士たちが俺の糸をこっそり潜ろうとするとで糸を振動させて電動鋸みたいな音を発させる。
これでほとんど引っ込む。
ユウトのソニックインパクトとは三回連続はやはり使用できないので三回やると一度止まって何かしらの星の型を使い、逸らしてからまたソニックインパクトとプリトウェンで逃げる。
多分アレを壊す方法は俺の手札の中に確実にない。
試している暇もない。
逃げるが勝ちとはよくいったものである。
これで二回目のヒヨクが襲ってきてから四回目のソニックインパクト、さすがに連続使用してないとはいえ足がパンパンである。
「ガハッ!!。」
雪で少し滑るがギリギリ体勢を保つ。
顔をあげようとすると上がらない。
あれ?。
ヤバイ、これヤバイ。
回数は数えてるがやられてしまえば、その回数は意味がなくなってしまう。
後ろ斜めからユウトの背中から心臓を真っ先に狙うヒヨク。
気合だ、これはもう根性論だ。
頭で理論的に考えるより、本能で動いたほうが今は的確だ。
「うぉぉら!!。」
ギリギリ自分の重心をそらして右にずれる。
だが左脇腹を少しえぐる。
ユウトは膝をついて左脇腹を抱える。
ヒヨクはオメガの元に戻っていく。
「これで最後だぁ!!。」
戻りきるとユウトに照準を向ける。
「奥の手は………最後までとっておくものだからな。」
ユウトはかろうじて左手で義手の肩の中に手を突っ込みレバーを握り、一気に引く。
義手の駆動音が悲鳴のように唸り声を上げる。
それと同時に赤くなっていく。
ユウトの目と髪が赤くなっていく。
義手が熱くなったところで脇腹を焼いて止血をする。
流石に痛い。
「聖獣を捕まえるのはこのボクだぁ!!!。」
オメガはヒヨクを発射する。
でも痛いとか弱音を吐いている場合でもないのだ。
対処方法は見つけた。
あとはヒヨクを戻させるだけ。
ユウトはソニックインパクトとプリトウェンで遠く、素早く逃げる。
ユウトはリミッターを解除したことにより、通常の1.5倍の速さで逃げる。
しかもソニックインパクトの連続使用回数が少し増えて逃げやすくなる。
しかも少し余裕ができるぐらいだ。
「6…………。」
「14…………。」
刀で逸らす、さっきより動体視力があがってヒヨクが遅くなって見える。
「22……………。」
リミッターを解除しても流石に辛いな。
しかもこれが切れてしまった時には俺の身体は脱力しきってしまって完全に格好の的である。
「……………25!!。」
よし、あとはオメガに菱形水晶がリロードされる前にあいつの懐に入り込む!!。
「くそ、なんで当たらないんだよ!!。」
オメガはヒヨクを戻し始める。
よしきた!!。
ユウトはオメガに向かって一直線でソニックインパクトを使ってまっすぐ進む。
ユウトは少し複雑に木々の間を縫ったり、ジグザグに逃げたりしてグルグル回った。
ヒヨクがリロードするためにオメガに戻るまでより、ユウトが一直線ソニックインパクトをして直行した方が圧倒的に早い。
「お前のすばしっこい蠅さんは戻るのに時間がかかるってさ。」
ユウトは高速移動中に腕輪の窪みに刀を差し込んで一気に引き抜く。
深紅の炎に刀が包まれる。
その刀をオメガに向けて立てる。
星の型、二式。
「流星!!。」
ユウトの刀がオメガの腹部を見事に突き刺し、勢いで目の前の木に叩きつける。
「ああああぁ!!、痛いよ痛いよお兄様!!。」
ユウトは刀をグリッとねじり、外側に向かって切り裂く。
「人の庭に入った罪を思い知れ。」
よし……、隊長格を倒せば一気に崩せる。
そう思った途端、腕が右往左往に引っ張られる。
「うお!?、なんだなんだ!?。」
引っ張り直そうとするが、なかなか力が入らない。
あれ…………?。
なんか腕が動かない、てか、だんだん足に力が入らなくなって来た。
ほとんど糸で吊り下がっている状態だ。
「ああ、ヤバイ………これはヤバイ。」
盾を持った兵士たちがタイミングを合わせて糸に向かって思いっきりタックルする。
糸が擦れた音がする。
魔力があまり残っていなくてだんだん糸の、所々が切れてくる。
いくつかのマスケット銃がユウトに銃口を向ける。
「頑張れおれ、ここで死ねないだろ!!。」
銃口から弾が飛んでくる。
リミッターが落ちかけていて、それで走馬灯かもしれないが今見ている景色が超スローモーションになり、今までの出来事がフラッシュバックする。
今度こそ無理だと思った瞬間、ユウトと兵士の間に氷塊の壁が生えた。
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