第64話港町のヴェンブルグ。
あれから夕方。
予定通りの時間で街につくリンと研究者。
「これ全部人?。」
少し引き気味で聞くリン。
多い時には三人ぐらいしか会ったことのないリンからしたらビックリするほどの人混みである。
「とりあえず宿をとってからギルドに行こうか。」
「ギルド?、何よそれ。」
「時間が惜しいから歩きながら話そうか。」
そう言いながら首を傾げるリンの手を取って人混みに入っていく。
少し進むと屋台が並ぶストリートに出て研究者は屋台で串焼きを二本買って宿屋に向かう。
うまっと言いながら串焼きを食べるリンにギルドの説明をし始めた。
「ギルドって言うのは冒険者とって必要な組織なんだ、冒険者にとってはクエスト発注との仲介役の役割を果たしていて、素材を売る時にも基本的にはギルドで売った方がいいね、他のよく分からないところで売ったりすると安く買い取りされることがほとんどだから、後はギルドに冒険者として登録していると身分が証明されるからいろいろと便利なんだよ〜。」
「へぇー、それでこの素材をギルドで売るっていうことね。」
そう言ってリンは背負っているリュックをパンパンと叩く。
「ご明察!、そういうことだから宿に急ごうか。」
宿に着くとリンは先ほど研究者から渡された金貨一枚を出して「一部屋二人で」と言った。
すると受付嬢が「かしこまりました。」と言って案内される。
案内された部屋は質素な造りで良い部屋だった。
リンがリュックを整理してると
「リンさん本当に一部屋でよかったの?、一応女の子なんだし....。」
「7年一緒にいて今更何よ、あんまり変わらないでしょ。」
そう言って整理しなおしたリュックを背負って
「先に出て待ってるわ。」
そう言って部屋を出て行ってしまった。
研究者も急いで支度して宿屋を飛び出すとリンが酒を飲んだと思われるガラの悪い男二人に絡まれていた。
「なぁ〜姉ちゃん、俺たちと今夜どうよ?気持ちよくしてやるぜ?。」
酔っ払っている男がそんなことを言っているが、リンはずっと真顔のままである。
「あーこれどうしよう....そういえば。」
そう思っていると少し前に読んだ本を思い出した。
「おい、なんとか言えよ!。」
壁ドンして迫る男たちの股間に目掛けてリンが思いっきり足蹴りを喰らわせた。
男の一人が白い泡を吹かせて倒れた。
「う、うぁぁぁあ!!。」
もう一人が逃げようとするが、リンは逃さんと言わんばかりに背後から股間蹴りをする。
するともう一人も泡を吹いて倒れた。
それを見たリンがくるんと研究者の方を向いてこう言い放った。
「ねーねー、股間蹴ってi....。」
「嫌だ。」
研究者は被せるように言った。
ギルドに着き扉を開けると酒を飲む冒険者たちで盛り上がっていた。
「うわ、ナニコレ?。」
色々な匂いで蒸せ返るリン。
「もう夜だからね、帰ってきた冒険者たちがお酒を飲んでいるんだ。」
そう言って研究者は動揺せずにそそくさと受付まで行く。
リンもその後についていく。
受付に着くとお姉さんが明るく声をかけてくれた。
「こんにちは!、ここは港町のギルドヴェンブルグです、今回はどのようなご用件ですか?。」
「ほらリンさん。」
そう言ってリンを前に突き出す研究者。
なるべく多くの人と触れ合ってもらいたい、そう言う思いがあったのでリンを突き出した。
リンは口を波打ちながらこちらを見ているが、やがて諦めてお姉さんと話すことにした。
「こ、この素材を売るために、ぼ、冒険者として登録したい、できるか?....(じゃなくて)お願いします。」
宿屋の受付嬢と話した時はほとんど顔を合わせていなかったが今回はそうも行かず、どうしても緊張しながら話してしまった。
「わかりました!!。」
元気な声でお姉さんは返答する。
「よくできました。」
そう言って研究者はあとの説明をお姉さんに話した。
「じゃあ、登録するので少しここで待っててください!。」
そう言ってお姉さんは裏の方へ入ってしまう。
「ふぅ〜、緊張したぁ。」
思わず安堵のため息が漏れるリン。
すると束の間、リンが脇腹のホルダーに装備してあった銃に右手を添える。
明確な敵意がこちらに向けられていた。
「さっきはよくもやってくれたな〜?。」
「こうなったら意地でも犯してやるぅ〜。」
その怒り狂ったかのような顔は見覚えがある。
さっきリンが股間を思いっきり蹴った二人である。
「ふん、まだ蹴られたりなかったのかしら?。」
リンが挑発を掛けた瞬間。
「「このクソガキがぁぁ〜!!。」」
懐からナイフを取り出して襲ってきた。
リンは銃を引き抜き、二人に向ける。
その瞬間、二人が宙に浮く。
いや、後ろから誰かが二人を持ち上げたのだ。
20代後半のムキムキの男は男二人の首根っこを捕まえたままこう言った。
「おいおい、誰の許可を得てこの街で嬢ちゃんを犯そうとしてんだぁ?。」
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