廃城の吸血鬼たち
游=レイトショー
プロローグ 廃城探索者
探索者。依頼を受けながら秘境や廃墟を探索し、成果を持ち帰る者たち。彼らに求められたのは武力だけではない。交渉術、ときには運も求められる。
探索者アトゥとその隣にいる女、ペイル・ムーン。二人の前には石造りの廃城と森がある。廃城は門で閉ざされているが。
これが依頼され、二人が訪れることとなったナプト城である。
――このナプト城。廃城とはいったものの、吸血鬼が住んでいると言われている。そして。このナプト城にあるものこそが――
「炭の首だ」
アトゥは言った。
「ジューンさんが言ってた、盗まれた生首ですよね」
そう言ったのはペイル・ムーンという、ギターケースを背負った細身の女性。
「そうそう。あの曰く付きの『炭の首』だ。吸血鬼だろうが呪われるぞ」
「そうですねえ……」
ペイル・ムーンは小声だったが震えてはいなかった。一見頼りなさげな彼女でも、何人もの吸血鬼を倒してきたという。その経験ゆえか、怖がっている様子はなかった。
彼女は見た目以上に肝が据わっている。
アトゥと彼女は上司であるジューンから任された仕事でこの廃城を訪れている。その仕事とは、手にすれば吸血鬼だろうと呪われるという『炭の首』を取り返すこと。なんでも、『炭の首』を奪った者は廃城――ナプト城に逃げ込んだとのことだ。
「怖くないのかよ」
「えっ、相手は吸血鬼でしょう? 首を落とせばいいじゃないですか」
アトゥが訪ねると、ペイル・ムーンはあっさりと答えた。
行こう、と二人は目の前の廃城の門に近づいた。その時だった、
「ヘイ、お二人! この城に用事あるのだYO!?」
陽気な声が二人の後で響く。
アトゥが振り返ると、そこには陽気そうな黄色のスーツ姿の男がいた。
「じゃなきゃどうしてここにいると思うんだよ……」
呆れたようにアトゥは言う。
「ここがワタシの城だからだYO!」
ラッパーは言う。さらに――
「ワタシはDASSY、この城の住人。客は案内しようじゃないか!」
DASSYはえらく上機嫌な様子で二人の案内役を買って出た。が、その様子を怪しむアトゥ。
アトゥはペイル・ムーンの方を見て。
「どうするか?」
「ついていきましょう。敵だとわかれば首を落とせばいいんですから」
ペイル・ムーンは平然と言った。
やはり、彼女はぶれない。敵の首を落とせば解決する、というある意味単純な考えがあるのだ。
「せっかくだから宜しくたのむ」
アトゥはDASSYの出方を伺いながら言った。いくら好意的であろうとも、味方につくとは限らないからだ。
「はいYO~!」
DASSYは笑顔で扉を開いた。金属と石でできた重そうな扉をいとも簡単に開ける。だが、彼は日もでている時間に活動できる。DASSYは一体、何者か。
DASSYに案内され、アトゥとペイル・ムーンはナプト城に入っていく。その後をつけるのは、一匹の白猫だった。
「にゃぁ~ん」
ナプト城に入っていく3人の後をつけながら、白猫は何かを伝えているような声で鳴いた。
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