大話島
“戦時中 化学兵器が秘密裏に作られていた島 大話島”
夏の昼間
うちわ片手にマウスをカリカリと動かす男はこの大話島のサイトで指を止めた。男が見てるのはとある女性が大話島について書いたブログ。
どうやら、その島には誰もおらず気味の悪い風景があるらしい。気になった男は会社を休み、大話島に向かった。都内の空港から飛行機で3時間、そこから船で1時間で着いた。
船には男が一人
海を眺める男を船長がニヤニヤ笑う。
島に降りた男は入り口から漂う重い空気に少し怖さを感じる。怖いモノは人よりも耐性ある男だったが、その男でも感じた。
「周るなら、そこの自転車使いな。じゃな」そう言うと船は遠くに消えた。
誰もいない不気味な島に取り残された男は自転車に乗り、走り始めた。
化学兵器を製造していた工場跡地やこの島の歴史を残した博物館、まったく意味のない謎の建物など様々なものがあり、進むたびにこの島を体感し男は漕ぐ足を速めた。
カーン カーン カーン
最後のスポットに向かう途中、木の下で自転車を止め、休んでいると近くの立ち入り禁止の看板の立つ洞窟の中から聞こえた。
それが聞こえなくなるとすぐに小さく女の悲鳴が聞こえた。
怖くなった男は背後に何か感じながらも慌てて自転車をこいで深い森を抜けると、この島最後のスポットに到着した。
そこには白い大きな建物とその手前に木のボードがある。自転車から降りそのボードに近づくと何か書いてある。
お疲れ様でした。
自転車での大話島巡り、楽しんでいただけましたでしょうか?
ちなみにこの島は昔、化学兵器の製造などやっておりません。嘘です。
建造物もすべて我々が作りました。
膨らんだ風船がパンッとなるように男の心も破裂し、腰を抜かす男に近くで大量のネコ達に餌をあげている女が近寄ってきた。
「大丈夫ですか? よくいるんですよ」
「この島の話は…嘘…」
「はい」
「なんだぁ。じゃあ、最後の立ち入り禁止の悲鳴も嘘か…」
「えっと…この島で悲鳴など聞こえませんが、それに立ち入り禁止の場所などありませんが」
「え…」
「大変な経験をされましたでしょ。この建物の中でゆっくりしてください」
「この中は…」
「誰でも…ネコにできる施設です」
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