めいどかふぇ その21
まぁそんなこんなで2分程。とりあえず動きの方はマスターしたらしい莉央ちゃんがドッペル君に向き直ります。ドッペル君は外れかけていたネコメイドの仮面を急いでかぶり直しました。
「オッケーですかにゃ?」
「……まぁ、うん」
「それにゃあお嬢様のペルシャオムライスには〝いつき〟が魔法のメッセージをお描きしますにゃ! もしお嬢様が描いて欲しい絵とかがあったら一緒にお描きしますにゃ! 何かリクエストはございますにゃ?」
「ない。とっとと、やって」
(莉央。気持ちは分かるが、明日戦地に赴く兵士みたいなその表情は間違ってるぞ)
確かに莉央ちゃん、そんな感じですね。なんかもう、死を覚悟した感じです。にゃんにゃんのハードルが高いのは分かりますけど……そこまでですかね~?
「それじゃあ〝いつき〟がお絵かきした後、一緒に魔法を掛けてくださいにゃ!」
「……分かった」
大きく深呼吸する莉央ちゃん。ドッペル君はそんな彼女に一つ頷き、おもむろにケチャップを手に取ってオムライスの上にお絵かきを始めました。
(さて、リクエストがないとなると……無難なヤツで埋めるか。正直、お絵かきに正解なんてないし)
リクエストがあればそれに沿うし、なければネコメイドのアドリブ力が試されるだけ。確かに、正解なんてなさそうですね~。
絵が上手ければ良い感じに仕上がるし、下手ならばそれはそれでお客さんとの会話のきっかけになる、と。ま、難しい事は考えずにノリで楽しめ、って事でしょう。
一方、楽しむ余裕なんか欠片も残っていないであろう莉央ちゃんは、神妙な面持ちでお絵かきを凝視してます。終始笑顔で楽しそうな(演技をしてる)ドッペル君と比べて、明らかに異様ですね。
横の毬夢ちゃんは笑いを堪えるので必死みたいですし、隣の団体客さんもまだ息を呑んで見守ってます。何かのイベントだとでも思われてるのでしょうか。
(さぁて、仕上げだ……!)
あら、そろそろ終わりみたいですね。ここからじゃなんて描かれているのか全然見えないのがちょっと残念です。
ドッペル君がケチャップの蓋に手を掛けてゆっくりと閉めていきます。やがて、かちっ、と音がしたケチャップを机の上に置き、ドッペル君は莉央ちゃんに目配せ。そして、
「せーのっ、萌えキュンにゃにゃにゃで美味しくなぁれっ♪」
「……にゃ、にゃん♪ にゃん……っ♪」
静寂を切り裂く、莉央ちゃんの声。ホントに莉央ちゃんが出したのかと疑うレベルで、優しくて可愛いらしい声。
『…………ぅぅぉぉぉぉぉっ!』
ど、ドッペル君? そんな男らしい声で雄叫びを上げちゃったら、さすがにバレちゃいますって!?
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