第51話 街歩き_2

「僕はね、彼女のことが好きなんだよ」

「え、ええっ!?そうなのか!?」

 思わず、驚きの声を上げてしまった。


「う、うん……」

 金石は、顔をリンゴみたいに赤くして、

「そうだよ。僕はその子のことが好きなんだ。いつの間にか好きになっていたんだ。守りたいって。この人のことを知りたいってそう思ったんだよ……」

「なるほど……。で、そのキーっていうのは何でそんなに国家機密みたいな扱いを受けているんだ?」

「みたい……じゃなくて、そうなんだよ。実際に国家機密級の人間なんだ。彼女は……」


 彼は口をつぐんだ。

 言おうか言いまいか迷っている表情だ。

 目を左右に揺らして動揺の仕草を見せる。


 彼は、息を大きく吸って、そして吐く。

 顔つきが一気に変わった。

 どうやら、決心が着いたようだ。


「君、確かネオ・サピエンス第三世代って言ったよね」

「ああ。そうだ。それがどうした?」

「彼女はね、ネオ・サピエンス第一世代。いや、世界で一番最初のネオ・サピエンスなんだ」

「なっ!?」

 彼が放った一言は、俺にとって天地がひっくり返るような衝撃の事実だった。


「おい。それは一体どういうことだ。いや、でも……」

 情報としては頭の中に入っていた。


 ――――ネオ・サピエンス第一世代第一号機、GOS-001。

 世界で一番最初に造られたネオ・サピエンス。


 《箱庭》にいた奴らの話だと、GOS-001は実験の途中で起きた事故に巻き込まれて死んだとか。

「多分、そいつらは嘘を教えられたんだ。きっと、その時科学者たちが予想もしなかった出来事が起こったんだと思う」

「予想もしなかった出来事ってなんだよ」


「それ俺にも良く分からないけれど、推測は出来るよ」

「なんだ……?」

「それは、彼女が世界最古のネオ・サピエンスだからこそ出来ることだ。他の奴らには絶対に真似できない。僕らのような第二世代と君たちのような第三世代には搭載されていないもの」

 ――――搭載?。


 何だ?

 その言い方は。


 その言い方はまるで……。

「そいつが人間では無いみたいな言い方じゃないか」


「そう。彼女は人間じゃないんだよ。人ではない。彼女はね、AIなんだ。人工知能なんだよ。それに、彼女の脳には特殊な科学技術が施されているんだ」

「特殊な科学技術?」


「ああ。そうだ。【解析アナライシス】、【自己防衛型魔術式システムSDMS】、【Pandoraパンドラ】の三つのシステムだ。これらは、今は失われしロストテクノロジーとロストマジックによって構成されている彼女だけの特殊なシステムらしいんだ。彼女は確かに意思を持っている。理性もあるし、三大欲求だってある。普通の女の子なんだ。だけどね、彼女は兵器でもある。世界を滅亡させるほどの。恐らく、科学者は彼女を利用としたんだね。だけど、自己意思がある彼女は、それを拒んで暴走した。それがその事件の真相だと俺は思うんだ」

「お、おおぉぉぉ」


 思わず、彼の推理に感激するあまり、感嘆が口からこぼれてしまった。

「凄いな。金石君は」

「いや、それほどでもないよ」

 恥ずかしそうに頭をポリポリと掻く。

「殆ど彼女から聞いたことだし。そこから考えられる可能性を探ってみただけだよ。それよりも、どうやって探す気なんだい?」


「う~ん。そうだな」

 目を瞑って自分の世界に入る。


 この街中で見つけるのはほぼ不可能だ。

 でも、ある程度場所を絞らないと、幾ら《千里眼》が使えるとしても骨が折れる。


「よし。まずは地図を手に入れて、人に聞いてみよう」

「え? 人? 地図?」

「そうだ。人と地図だ」

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