宇宙の旅路
阿賀沢 隼尾
プロローグ
「『鍵』はどこにいった!? 探せ! 絶対に外へ連れ出すな!」
「はぁ、はぁ」
私は、建物の物陰に身を潜める。
ゲートや発射台には自動人形ドールが待ち構えているはずだし、島の外には機動龍モビルドラゴンが闊歩しているはず。
そうそう簡単にこの「檻」から出ることは出来ないだろう。
それは、覚悟の上だ。
十分に理解している。
でも、ここから出ないと――誰かに助けてもらわないとこの世界が終わってしまう。
止めないと――――。
この世界の破滅を。
終焉を。
周りに人がいないことを確認して、抜け道を通る。
ここはテレポートを使うことが出来ない。
だから、飛行魔術で何とかするしかない。
目を閉じる。
『SDMS』というエレラルドグリーンの表記が現れた。
次に、頭の中で私とは違う人の声が響いた。
『SDMSを目的に合わせて発動します。目的達成が可能な術式を構築します』
私とは異なるものの意識が動く。
『構築完了しました。行動を開始します』
目を開ける。
まだ、視界が半透明のエメラルドグリーンの色に染まっている。
ドっ!!!!
地面を蹴る。
風圧と衝撃波が同心円上に発動する。
「いたぞ! あそこだ!」
武装をした機動隊員達が私に銃口を向ける。
『敵性を確認しました。今から、排除行動に移ります』
『天の声』が言うと、今度は視界が紅くなった。
『NM《ナチュラルモード》からDM《デストロイモード》へと移行。移行完了。排除行動開始』
パンパン!!
銃弾が飛んできた。
が、今の私には効かない。
右手を前に突き出し、魔法陣を描く。
『反射リフレクション』
目の前に魔力で作られた壁が現れた。
銃弾が壁に当たる。
すると、発砲した主の元へ帰って行った。
「ぐわぁ!」
よし。
今のうちに逃げなくては。
背中に翼を生やす。
もちろん、魔力で作られたものだ。
門まで一気に飛び抜ける。
他の場所は結界で出ることは出来ないのだ。
「よし、上手くいけたわ」
「ピピピピ」
機械音が後ろから聞こえた。
「!?」
反射的に右に避ける。
右側に赤い光線が顔を掠めた。
「出たわね。天空城の犬――
高い魔力と機動性を持つ。
さすが、天空の城『ゼウス』の犬である。
魔力感知を使って今の状況を把握する。
前方に一体。
後方に三体。
更に、左右に一体ずつ。
鋼の龍。
――龍の形を模して造られた魔装式機動兵器。
――白銀で隆々とした肉体と鱗にその身を包み込む。
――圧迫感のある銀翼の翼が太陽の光に照らされ、輝く。
――牙と腕と足に生えた爪は、どんな岩をも切り崩しそうな程鋭い。
――天空国家『ゼウス』の象徴とも言える白銀の龍。防衛と戦争の為に造られた魔装式機動兵器。
そんな、『悪魔』とも言える化け物が五体も私を囲んでいるのだ。
「レディを囲んでもて遊ぼうなんて、いけない人達」
人差し指から瑠璃色の光線を放射。
縦に斬る。
前方の
あと、四体。
右方から一体接近して来る。
『光魔法と火魔法を融合します。魔術名――
両手を握り、魔法陣が握った所を中心に動く。
そこに合わせて、光の剣が現れた。
純白の剣。
闇夜の月の光に照らされたその光り輝く剣は、一層輝いて見えた。
『強化魔法 加速ブースト』
足裏に魔術を放出し、左側の
水平に薙ぎ払う。
――一閃。
銀色の軌跡を描く。
火炎は地上へと隕石のように落ちていった。
あと、三匹。
後方を振り返る。
前方にいた鋼の龍を凝視する。
鋼の龍は口を大きく開け、その中には小さな光の粒子が集まっていた。
口内に光の粒子が凝縮する。
光線を放つ気だ。
咄嗟に、防御魔法を構築する。
『強化魔法 鎧アーマー』
全身に防御魔法が掛けられる。
刹那、深紅の光線が一線を描く。
咄嗟に上空へ避ける。
「ぐっ」
左の羽に当たる。
これじゃ、制御が出来ない。
力を失った鳥のように地上へ落下し始める。
そこへ、更に光線が放たれる。
これ以上攻撃を受けたら危険だ。
『
直径500メートルの三重魔法陣。
複雑な魔法式が魔法陣に描かれている。
「発射!!」
神々しい程白い光線が放たれた。
光線は、
無数の細い光線となり、分散された。
運がいいと言ったらいいのか。
三体の
三体の鋼の龍はこれ以上私を追って来なかった。
なんとか逃げ切れることが出来た。
けど、私も無傷では無い。
「
そんな愚痴を零してみる。
あとは、流れ行く夜空を眺めるだけ。
なんとか、この世の平和を守らないと。
その使命が私にはある。
だから、ここで終わる訳にはいかないのに……。
頭がそう思っても、体は言うことを聞いてくれなかった。
目の前が暗く――意識が遠くなっていく。
『敵性の消滅を確認。DM《デストロイモード》からNM《ナチュラルモード》へと移行します』
最後に私の耳に聞こえてきたのは、システムの音声のみだった。
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