第20話
「陛下、よろしいのですか?」
「何がだ?」
「何の引き換えもなしに即位を承認して。」
「戦後だ。戦後に緩衝地帯の設定と軍事法廷での裁判権を要求する。その布石になる。」
「ならば、私は何も申し上げません。」
「カール・フォン・ラウジッツ、お前の騎兵隊を使う。お前の指揮下の第4騎兵軍団で蹂躙しろ。」
「御意。」
「テオドール・ラーウェン、貴様は歩兵軍団を率いて攻略せよ。」
「はっ、必ずや陛下に勝利を!」
頷く。
「全軍に命令、これより敵本土侵攻戦を行う。愚かな無知の盲目者に教育してやれ!我らの強さを、奴らの愚かさを!全軍整列、蹂躙せよ!」
†
始まりは一斉の戦場の神による祝福であった。50mmから75mmクラスの野砲が火を噴き、榴弾やキャニスター弾を放つ。後方からは120~180mmクラスの重砲が大地を耕す。
マスケットと前装式の砲しか持たない彼らには為す術もなく撃たれるしか無かった。
砲撃の隙間を埋めるように重機関銃が、ガトリング砲が火を噴く。
その間に前進した歩兵が、その手に持つ小銃で打ち倒していく。繰り返された演習通りの隙のない動き。既に敵兵の大部分は恐慌をきたして居るが、後方の督戦隊に阻まれ後退が出来ず、数十人、数百人と無惨に斃れる。
「竜騎兵軍団攻撃開始!」
上空より機関銃を携えた竜騎兵が擲弾を投下しつつ執拗に何度も対地掃射を行う。
陸空一体となった攻勢。
「ラウンドアップ作戦の第一フェイズ成功裏に終わったか。」
重油を使用するエンジンに換装した艦艇が洋上に覇を称える。
「第2フェイズだ。」
無線機に言葉が放たれる。それと同時に塹壕を超えて新兵器が現れた。
†
「…敵の新兵器により、37000名の損害が出ました。」
砲と機関銃を備える鉄の怪物は密集陣形を摂る我が軍の兵士を容易く殺した。
撃破には強力な魔術師が必要で、我が軍に従う魔術師の中で撃破しうる魔術師は皆無に等しい。
かつての王国軍にとって、魔術師とはエルフだった。が、エルフ族の惣領にして王国最大の領主であったクロード大公家を捨てた途端数千名数万名単位で全てのエルフ系住民が失踪した。否、クロード大公の元へと向かった。
「…戦列歩兵を下げろ。野砲では撃ち抜けないのか?」
「数門の鹵獲野砲なら可能性はあるかと。」
47mmの砲弾は29発分、撃つだけなら可能だが狙って撃つ様な芸当は到底不可能な兵士。
「試してみるか。」
副官を走らせ準備を始めた頃。夜陰に紛れて敵兵の夜襲があった。魔術師が魔術を行使し
拳銃とライフルで簡単に殺されている部下と兵士達。
「アンデルセン侯爵、テオドール卿とお見受けする。我が主の元へご同行願う。」
手早く護衛と従兵が殺され、副官は拘束される。
「……、貴様らの主の元へ向かおう。我が軍は投降する。丁重に扱われることを願う。」
「我が主君はそれを望んでいる。勿論だ。」
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