第23話 AI(愛)の卒業

瞬く間に3年の月日は流れ、とうとう冒険者学校を卒業する日が近づいてきた


冒険者学校では卒業試験があり、合格しない者は留年となる


これは、この学校を卒業する者は、必ず冒険者として最低限の力をつけて

いる事との学長のこだわりであった


最低限の力も持たない者が冒険者になればたちまち命を散らすことになるからだ




卒業試験の合否は、筆記試験に、武器または魔法による模擬戦で判断される


模擬試験は通常、教官が相手となり実力を図られるが


Fクラスは生徒同士での模擬戦を行ってもらい教官が判定する形となった


理由は、教官では太刀打ちできないからだ


その時点で合格で良いのだが、うわさを聞き付けた国の軍部やギルドの上層部から、彼らの実力を見たいと申し出があったのだ




現代で言うところのスカウト合戦がはじまる


通常は武器を使う者は武器同士


魔法を使う者は魔法同士で戦うこととなる


武器には攻撃範囲、魔法には詠唱時間というハンデがあるからだ


だがFクラスには関係が無かった


なぜなら彼らは詠唱なしで魔法を使い、武器による斬撃は離れた対手にも届くからだ




他のクラスの試験は前座の様になってしまい


いよいよFクラスの対決となった時、来賓者たちのテンションはマックスに達していた


なにせ次代の国防を担うような人材、伝説の冒険者、英雄が生まれる可能性があるのだ


しかし彼らは、Fクラスの戦いになると口を半開きにしたまま動けなくなってしまった


余りのやり取りの速さにその動きを捉えることが出来なかったのだ


時折起こる爆発や、地面に出来るキズに、驚くことしかできなかった




唯一Sクラスの首席タイで合格した『氷の女神』こと愛と『炎の戦乙女』ナノだけは彼らの動きを捉えていた


「アイツらこっちの人間だろ? なかなかやるじゃねぇか?」


「まあ勇樹と一緒のクラスになったんですもの何かが起こるのは当り前よ」


「ああ俺も一緒のクラスになりたかったぜ!」


「それは同感ね Sクラスは型にはまりすぎてつまらないもの」




結果、全てのクラスで不合格者は無く全員で合格斬る事となった


特にFクラスは軍関係の来賓者から誘いを受けていたが


「僕たちは冒険者になるためにこの学校に入りました」


「それ以外の選択肢は考えていません」


と即決で断っていた


以前、勇樹がこう言っていたことを覚えているからだ


「僕はね、誰かを守るために強くなりたいんだよ」


「人を傷つけたり、不幸にしないためにね」


「でも、その為には大きな力が居る」


「でもこのクラスのみんななら、その力があると思うよ」


自分たちは冒険者になる報酬よりも困っている人を助けられう様な立派な冒険者に


ちなみに勇気と駄女神アスタルテはギリギリで卒業できた




そして今日は最後の授業


苦楽を共にしたクラスメート達ともお別れの日


教官からみんなに話があった


「正直、私は君たちの事を見放してしまっていた 本当にすまない」


「教官その話は、もう済んだことですよ それにその後の授業は本当に勉強になりました」


「それもこれも勇樹のお陰だ」


「あの時教壇の前で話したことが私の目を覚ましてくれた」


「たぶん生徒のみんなもそうだろう?」


「勇樹が私たちに教えてくれたとこを忘れずに、私は教官として精いっぱい頑張っていくよ」


「俺達は、お前と一緒に勉強して、訓練できたから今のように強くなれた」


「でも、冒険者になってもお前の言葉を忘れずに努力していく」


「そうね、最初は軟弱な奴だと思っていたけど、あなたは私たちの恩人よ」


「ありがとう!」




「僕もみんなと友達になれて本当に良かった」


「みんなと過ごせたこの時間は僕にとって宝物さ」


「またキザな事言いやがって! こいつぅ!」


クラスメートが勇気をもみくちゃにするが、その眼からは涙があふれていた


「俺達は卒業したって永遠にクラスメートで友達だ!」




「みんな元気でね! 冒険者になったらよろしくね!」


こうして、勇樹たちの冒険者学校生活は終わりを告げた





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