第40話 翼の無い天使達

 ダークマター作戦 チャーリー地点


 プレデターを中心としたストライク・ブラックの部隊は、チャーリー地点にある施設の制圧を行っていた。

「右、クリア!」

「左、クリア!」

「前進!」

 正確にクリアリングをして、前進する彼らの前に大きな扉が立ち塞がっていた。

「プレデター、どうします?」

 1人の兵士がプレデターに尋ねる。

「あそこのポートからケーブルを繋いで、ハックしろ。」

 プレデターがそう指示をすると、部隊が動き出す。

 1人の兵士が扉の横にあるポートからケーブルを繋いで、タブレットでハッキングを開始した。

「ハッキング完了、扉開きます!」

「全員、攻撃準備!!」

 ハックが完了したことを告げられたプレデターは、部隊に攻撃準備をするように促す。

 部隊全員の銃口が扉に向けられた。そして、重厚な扉が開く。

 その先には―――、

 

 広い空間があり、白い服を着た4人のが居た。手には拳銃を持っており、斧を持っている子供も居た。


 相手が乳飲み子だろうと女だろうと、ストライク・ブラックは容赦しない。

 部隊は子供達に銃口を向け続けた。

 子供達とストライク・ブラックの部隊との沈黙の睨み合いが続いた。

「武器を捨てて投降しろ。抵抗をしたら射殺する。」

 先に沈黙を破ったのはプレデターだった。

「嫌だよ。だって、僕達まだおじさん達と無いよ?」

「どういう事だ?」 

「僕達は戦う為に生まれてきたんだ。」

 そう言って、斧を持った男がプレデター達に近づいてくる。

「これ以上近づくな。さもなくばお前を殺す。」

 プレデターは彼に警告をする。


「ううん、僕達は死なない。そして、僕達は―――。」



 リーパー達は目標チャーリーへと続く連絡橋を歩いていた。

『ちゃ、チャーリー部隊から全部隊へ!繰り返す!チャーリー部隊から全部隊へ!至急応援を要請する!!ぷ、プレデターがやられた!!早くしてくれぇ!!さ、さもなくば俺達全員殺さ、、、、。』

 鈍い音と共に、味方からの応答が消えた。しかし、まだ通信は続いており、仲間の叫び声と激しい銃声がまだ聞こえていた。

「今から、チャーリーの連中を援護しに行く。まだ戦闘は終わらないぞ。」

 リーパーはそう仲間に告げ、目の前に見えるチャーリーに仲間と向かった。



 リーパー達はチャーリー地点の施設内に入った。施設内では、多数のアメリカ軍兵士の死体が転がっており、銃撃戦の痕が生々しく残っていた。床は彼らの血で海になっている。

「オェ、、、、ウゥッ、、、。」

 デイリッシュ少尉がそれを見て、今にも吐きそうになっていた。それを、ガトー少尉がなだめる。

「進むぞ。」

 リーパーは部隊を連れて、奥へ向かった。

 すると、向こう側から誰かが3人やって来る。リーパーのインターフェースには味方の表示がしてあった。リーパーは部隊に銃口を下げるように指示する。

「プレデター!もう少しで出口です!しっかりしてください!!」

 プレデターの部下は、両脚が千切れたプレデターをズルズルと引きずっている。彼らが通ってきた道には、プレデターの血痕が生々しく残っていた。

「何があった?」

 リーパーは彼らに聞く。

「こ、子供です!!イかれた子供に、部隊がやられました!!」

「子供?何だそれは。」

 リーパーは彼に聞く。

「翼の無い天使達だ。」

 フレディが彼より先に口を開いた。

「何だそれは?」

「翼の無い天使達計画―――。それは、完全な兵士を造る為の計画だ。アメリカ軍の中でもトップシークレットの案件で、俺でも詳細は知らない。ここはその研究所の1つでな。どこかで遺伝子操作を施したサンプルを調査、研究、訓練を施す施設らしいぞ。」

「翼の無い天使達。か、、、。子供だろうと何だろうと、我々の理想を脅かす存在は排除せねばならない。」

 そう言ってリーパーはHQに通信を入れる。

「HQ、HQ、こちらリーパー。プレデターを発見したが、プレデターは戦闘不能。指揮権の委譲を推奨する。オーバー。」

 そして、リーパーは部隊を連れて奥へと進んでいった。



 リーパー達が奥に進むと、死体で山が出来ていた。その死体は全て、ストライク・ブラックの隊員のもので、バラバラに刻まれているものや、手足が切れているものもあった。

「よかった。まだ居たんだ。」

 その奥から声がする。その声の主は白い、いや、血で赤く染まった服を着ており、斧を持った男だった。歳はリーパーやロメオ中尉などと同じ位だった。後ろにも数名、同じような天使達がいた。

「全部お前がやったのか。」

「そうだよ。全部僕達が殺した。殺すのって楽しいね。」

―――完全にイかれてやがる。

 リーパーは、彼らは完全にまともでは無い事を察した。

「おぉ、よく分かってるじゃねーか。確かに、殺し―――戦争ってのは止められないよな。」

 プライスがそんな彼と対話を始めた。

「君はよく分かるみたいだね。良かった。仲間がいて。」

 彼はプライスに笑みを見せた。プライスも笑い返す。

「プライス。」

 リーパーは、図に乗るプライスを止めた。

「あぁ、分かってるよ。コイツと俺は敵同士、だろ?」

 プライスは面白く無さそうに返事をした。

「全員撤退。他部隊と合流しろ。後は俺がやる。」

「しかし、隊長!」

 ロメオ中尉が止めた。

「お前達が、このイかれ野郎に勝てるとは思わない。それに、チャーリー地点からの撤退命令が出ている。俺が足止めする。」

「り、了解。」

「分かったな。全員撤退だ。」

『了解!』

 そう言って、リーパーは部隊を撤退させた。

「俺は残るぜ。まだ足りねぇ!」

 プライスは撤退しなかった。

「相変わらずイかれた連中ばかりだ。まぁ良い。せいぜい死なない様にがんばるんだな。」

「おう!任せておけ、兄弟。」

 そう言って、プライスは天使達に襲い掛かる。

「さて、俺も本気でいくか。」

 リーパーはCAMの針を自分の首筋に刺して、注射した。



「あぁ、やっと終わったか。」

 次々に襲い掛かる天使達をリーパーは片付けた。周りには天使達の死体で溢れ返っていた。

 周りを見ても、プライスの姿は見えなかった。リーパーは、彼に通信を入れる。

「プライス。そろそろ時間だぞ。撤退しろ。」

『あぁ?もう終わりか。俺は地点アルファの方が近い。適当に巻いて、アルファに向かう。』

「分かった。俺は部隊に合流する。オーバー。」

『気を付けてな。アディオス!』

 そう言って、プライスは通信を切った。

―――さて、俺も戻るか。

 そう思い、リーパー自身も撤退をしようとした瞬間、リーパーの装備を誰かが引っ張った。

 後ろを振り返ると―――、

―――あぁ、クソッタレ。

 天使達の1人が後ろにいた。長い銀髪で、胸は無いがスッキリとしたスタイルの彼女は、無言でリーパーを見ていたのだ。彼女はナイフを持っていたが、リーパーには向けていなかった。

「私をこれで殺して。」

 彼女はリーパーに、そのナイフを差し出していた。

―――変わった女だ。まぁ良い。ぶっ殺してやる。

 リーパーはナイフを取り、彼女に向けた。

 しかし、リーパーの脳裏に何かが映し出される。


 自分の過去だ。


 彼女は死のうとしている。それは過去の自分も同じだった。

 そして、彼女の顔を見る。すると、自身に1番優しく接してくれた女性―――、リーパーの師匠の顔が重ねられる。

 すると、リーパーは彼女を両手で抱きかかえて走り出した。

「何をしているの?私を殺さないの?」

「お前、死にたかったんだろう。」

「そう。もう嫌なの。生きる事が。生きていたって、何も無い。苦しいだけ。」

「そうか。そうかもな。」

「じゃあ、あなたは、、、?」

「この世界は要するに、パズルだ。必ず誰かがどこかにはまるようになってる。でも、お前はここのにははまらなかったみたいだな。世界は広い。でも、俺とお前はここで偶然出会った。奇跡だよな。俺がお前を止めなかったら確実に向こうに逝ってただろう。」

「そうね、、、。」


『そして、俺は今。お前のはまる場所を教えに来た。』


 死神リーパーは1人の天使にそう言った。

 彼が過去、そう言われたように―――。

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