エピローグ 変わる世界

 ストライク・ブラック ユニオンベースの展望台にシャドウとバラライカはいた。

「それで、私に言いたかった事って何?」

 何故かは知らないが、バラライカはさっきから顔が真っ赤である。

「あっ、、、いやぁ、、、そのぉ、、。」

 その言葉を言われた瞬間、シャドウも顔を赤らめた。

 冷たい海風が何度も2人を仰いでも体の熱は下がる事は無かった。

「あ、アンタ男でしょ!?ハッキリ言う時はハッキリ言う!」

「ハイッ!すいません!」

 シャドウは、バラライカに頭を下げる。バラライカはシャドウの肩を持って起き上がらせる。

「それで、、、早く言いなさいよ、、、。」

「分かったよ、、、。バラライカ、お、、俺は、、、君の事が―――、」

 

「―――好きだ。」


 海風に乗って香る海の匂いが、2人の鼻に通り抜ける。そして、2人にあまり強くは無く、むしろ心地良い海風が吹き付けた。


「あ、アンタは1人じゃバカで何も出来ないから、、、その、、、一緒に居てあげるわよ。感謝しなさい!」


 バラライカはシャドウにOKを出した。2人の胸が何かで満たされる。それはとても心地の良い物だった。

「それじゃあ、改めてよろしく。バラライカ。」

「仕方が無いわねぇ。分かったわよ。」

 そう言って2人は強く抱きしめ合った。

 

 そこから800m地点。リーパーとプライスはこっそりとそこに配備していたドローンから音声を拾い、M98Bのスコープでその様子を伺っていた。

「このままトリガーを引きたい気分だ。」

 リーパーはそれを見てそう言った。

「でも、あれはお前が救った命だぞ兄弟。あれで良かったんだよ。」

 プライスはリーパーの過去の功績を称えた。彼がバラライカを救っていなければこの様な展開にはならなかった。

 リーパーは他人の幸せを築いた。その輝かしい事実は曲げられない。

 ちなみに、プライスはIRAを辞めてストライク・ブラック本部の戦闘員となった。

 階級は大尉。コードネームは無い。プライスは本部の予備戦闘員となり、ストライク・ブラックの各支部を行き来している。今日はユニオンベースの番だ。

「まぁ、あれはあれで良い。行くぞ、プライス。」

「了解だ。兄弟。」

 リーパーは2人を直視出来なくなり、基地の中に引っ込んでいった。



 数日後、リーパーはシャドウとバラライカに呼ばれた為、ヘリポートに向かった。

「よぉリーパー。悪いな。」

「さっさと来なさい!ノロマ!」 

 シャドウとバラライカは相変わらず元気そうだ。

「今度の任務は中国だそうだな?」

「あぁ。中国の民主化革命に参加してくるよ。」

 この頃、中国では共産党の弾圧に反抗する革命政府『中華連邦』が共産党と戦っていた。その革命運動は中国全土に広がっており、特に北京は激戦区だ。

 中華連邦政府はストライク・ブラックに加盟し、ストライク・ブラックは大々的に中華連邦政府に武力支援を行っている。

「俺の分も暴れ回って来てくれ。共産主義者は大嫌いだ。」

「だろうな。」

 リーパーは全体主義者なので、共産主義者とユダヤ人は大嫌いだ。勿論差別では無い。理由があってである。

「それと、お前のお陰で俺達は付き合う事になった。ありがとう。」

 シャドウはバラライカと付き合っている事を伝えると、深々とお辞儀をした。

「あぁ、そんな事か。そんな事は前から知ってるよ。」

「「はぁ!?」」

 リーパーのその発言に、バラライカとシャドウは驚きを隠せなかった。

「な、何でアンタが知ってんのよ!?」

 バラライカがリーパーを問い詰めた。

「当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる。死神リーパー様だぞ。そんじゃ、幸運を。2度と帰って来るな。付き合ったからってイチャイチャしすぎるとスナイパーに頭抜かれるぞ。」

 皮肉を込めた送りの言葉をシャドウとバラライカに言うと、リーパーはどこかへ行ってしまった。

 そして、2人を乗せたオスプレイは激戦区の北京に向かって、空の彼方へ飛んで行った。



 その2週間後、アフリカ統一戦争は終結した。勝ったのはアフリカ連邦政府。アフリカ統一は達成されたのだ。カイロ攻略戦では、3000以上の戦死者を出しながらも連邦政府が『対統一戦線機構』を破り、カイロを攻略したのだ。その勝利の裏ではストライク・ブラックが大きく関与した。

 アフリカ戦線においてストライク・ブラックが使用した新型兵器『CSCS』(自立支援型コンバットシステム)は、人型のAI兵器で人間の兵士の支援をする『鉄の兵士』。CSCSは多大な戦果を上げ、戦争に革命をもたらした。

 その他、多くの新兵器が実践投入されたという。その例として上げられるのはレールガンの『XRG-E1』である。

 そして、フランス製のナポレオン級航空空母も配備された。航空空母というものは、超大型の原子力輸送機に滑走路やミサイルを搭載した空飛ぶ空母である。原子力輸送機は、原子炉を搭載した輸送機で、148時間の持続航空が可能であるが2日に1度、海か湖で原子炉を冷却しなければならない。

 この戦争で戦争のやり方が変わったのだ。AI兵器と航空空母は今後の戦争を確実に変えるだろう。



 そして、リーパーは知っていた。この後に必ず世界を統一する戦争が起こると。

 リーパーはそれを『人類最終戦争』と呼んだ。この戦争を機に、人類は戦争という物を永久に放棄するのである。そして、強大な国家社会主義を築き上げて人類を強大な指導者が統一するのだと。

 そして、それが始まりつつある。ユーラシア大陸はほぼストライク・ブラックの勢力圏内だ。それに、アフリカは完全にストライク・ブラックの物だ。

 もう少し。あともう少しでリーパー、そして彼の師匠の望んだ世界がやって来るのだ。

 誰も苦しむ事の無い、平和な世界が――――。



―――おい、知ってるか?戦場には死神がいるらしいぞ。

 どこかの戦場で、またその噂がささやかれたいた。


               

                   第二章 血に染まった帝国旗編 終わり

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