第21話 人間性

 3人はIRA司令に連れられてプラントのある施設にやって来た。

「ここは、兵舎です。ユニオンベースほど大きくはありませんがね、、、。」

 司令に連れてこられたのは兵舎。小さなドアがいくつもある。おそらくは兵士達の個室だろう。そして、その施設内には食堂も医療施設もある。住む分には可も無く不可も無い兵舎だ。

「司令!!お疲れ様です!!」

 少年兵の1人が司令に敬礼をする。

「おぉ、ライナー。丁度良かった。お前達の部隊にこの方々が付いてくれるそうだ。」

 司令がライナーと呼んだ少年はリーパー達を睨む。

「司令、お気遣いありがたいのですが、我々だけでMI6を破壊出来ます。」

 ライナーは誇らしげにそう言う。

「すみませんリーパーさん、彼はこういう性格なのですよ。」

 司令はリーパー達に謝った。そして、ライナーの胸倉を掴む。

「ライナー!客人に何て態度だ!少なくともお前達より戦闘経験は積んでるんだぞ!!」

「それは失礼いたしました!司令官殿!」

「良いか!この方々は世界中のありとあらゆる戦場を渡り歩き、敵を抹殺してきた方々だぞ!」

「そこまでにしておけ。俺は何とも思って無い。」

「し、しかし、、。」

「もう良い。」

「し、失礼しました、、、。」 

 司令はライナーを離した。ライナーはふてくされた表情をせずに襟を直す。

「何かこいつらがご迷惑を掛けたら私に報告してください。銃殺刑にしてやりますよ。」

「あぁ、分かった。」

「それでは失礼します。ライナー、この方々を案内しろ。失礼の無い様にな!」

 司令はリーパー達に敬礼をしてその場を去る。リーパー達も敬礼をした。

「お前達何か来なくても俺達でやれた。」

 ライナーはそう呟く。

「おい、お前達がMI6本部をやるのか?」

 リーパーはふてくされているライナーに聞いた。

「そうだ。悪いかよ!」

 ライナーはリーパーにそう怒鳴る。しかし、リーパーは気にせずにライナーに指をさす。

「いや、お前達には無理だ。」

「何だとぉ!!」

 ライナーはリーパーの腕を掴みかかる。しかし、リーパーはその腕を持ち、地面に叩きつけた。

「うわぁっ!」

 ライナーの身体が地面に叩きつけられた。

「イテテ、、、何すんだよ!!」

「ほら、少なくとも無理だ。ライナー。それとも無駄死にを希望するか?」

 リーパーはライナーの目の前にナイフを突き出す。

「馴れ馴れしくするな!!誰だか知らねぇけど、俺達でもいける!!絶対に出来る!!」

 ライナーはそのナイフを振り払った。そして起き上がる。

「仕方無いからお前達も部隊に入れてやる!それで満足か!」

 ライナーはリーパーに向かってそう叫んだ。

「まぁ、満足と言えば満足かもな。イギリス人を殺れるんだから。」

 ―――こいつぁ、『ツンデレ』の属性だな。

リーパーは持参してきたモンスターエナジーをプシュッ、と開けてゴクゴクと飲み始めた。

「よし、なら俺の部隊を紹介してやる。付いて来い!遅れるなよ。」

 ライナーはそう言うと歩き始めた。

「何なのアイツ。ムカつくわ!」

「まぁまぁ、君もいつもはあんな、、、じゃなくて!そういう人もいるんだよ!!ハハハ!!」

―――危ねぇ、、、。殺されるトコだった、、、。

 騒動を見ていたシャドウとバラライカは指をさしながらライナーについて話していた。

「おい、さっさと行くぞ。またいつライナー隊長が怒るか分からないからな。」

 リーパーは全く動こうとしない2人に少し小さめの声でそう言う。

「あぁ、それもそうだな。行こう、バラライカ。」

「えぇ、次ムカついたら私が蹴り入れてやる。」

 そう言って2人は歩き始めた。

―――ったく、どこに居てもイチャイチャしやがって、、、。隠してるつもりなんだろうけど俺にはバレバレなんだよ、、、。

 そんな事を思いながらリーパーはモンスターエナジーを飲み干した。


 リーパー達はある部屋の前まで連れて来れれた。

「紹介しよう。こいつらが俺の部隊だ!」

 ライナーはドアを開ける。すると、その先には――――、

「あっ、よろしくお願いします。ほら、2人も!」

「「よ、よろしくお願いします。」」

 男2人と女1人がいた。

「こちらこそよろしく頼む。」

 リーパーは3人と握手を交わす。

「確か、、、IRAと同盟の方ですか?」

 金髪の女がリーパーに近づいてきて聞く。

「そう、俺達はストライク・ブラックの戦闘員。派遣されてきたんだ。」

 シャドウがその女に返す。

「アフリカに兵員を投入してるから俺達が代理だ。」

 リーパーが皮肉のようにシャドウに付け足す。

「あっ、私はシェラです!よろしく!」

 金髪で元気のある彼女はシェラ。初対面のリーパー達にも友好的だ。

「僕はマイケル。よろしくお願いします。」

「「うぅ、、眩しい、、、。」」

 ストライク・ブラックの冴えない男2人が直視できないほど眩しい彼はマイケル。イケメンで気優しい男の子だ。

「俺はプライス。よろしく。」

「「ここにも居たかっ!!IRA恐るべし、、、。」」 

 クールでイケメンの彼はプライス。リーパー達が入室した時からずっとマガジンに弾を詰めていた。

「アーマライトのAR-15は整備が面倒だ。AKに変えてくれ。」

 弾を詰め終わったプライスは、ライナーに銃を変えるように要求をした。

「ダメだ。」

「何故だ?」

「俺が使ってるからだ!文句あるか!」

「それはお前がアーマライトの整備が出来ないからだろう。」

「うるせぇ!!黙って使っとけ!!」

「はぁ、、、。」

 プライスはため息を吐いて椅子に座ったまま寝てしまった。

「ゴメンね。彼、イライラするとすぐに寝てしまうんだ。」

 マイケルがリーパー達にそう言うとニコッ、とはにかんだ。

「ま、眩しい、、、。」

 インターフェース越しにリーパーは彼を見ているが直視出来ない。これが冴えてる男と冴えない男の違いだ。

「イラつくと寝るって、どっかの誰かさんと一緒だなぁ?」

 シャドウがリーパーに皮肉を込めてそう言う。

「そう。全く冴えないどっかの童貞さんみたい。クスクスクス、、、。」

 バラライカもシャドウに便乗し、リーパーを煽る。

「クソッ!夫婦揃って俺の事煽りやがって。くたばりやがれ。」

 リーパーはそう吐き捨てると、シャドウとバラライカに両手で中指を立てた。

「あれ?君達結婚してるんだ。若いねぇ。」

「ホントだ~、2人は結婚してるんだ!」

「す、スゲェ、、、。」

「Zzz、、、。」

 ライナー達はバラライカとシャドウが結婚しているものだと勘違いしている。

「お2人さんはどこで知り合ったんだい?」

「ねぇねぇ、もうヤったの?子供は何人?ねぇねぇ、教えてよ~」

「もうそこまで、、、。世界は広いな、、、。」 

 そこまで迫られたシャドウとバラライカは顔を真っ赤にして―――、

「「夫婦じゃない!!クソリーパー!!死ねぇぇぇええ!!」」

 2人はナイフを持ってリーパーに斬りかかる。

「おっと、コイツぁ大変だ、、。」

 リーパーは瞬時にそれに気づくと、全速力で逃げて行った。


「はぁ、ここまで逃げれば大丈夫だろう。バカップルめ、、、、。」

 リーパーは後ろに振り返る。

「「待てぇ!!殺す殺す殺す殺すっ!!」」

 2人はリーパーのすぐすこまで迫って来ていたのだ。

「「覚悟ぉぉぉ!!」」

 2人はリーパーにナイフを大きく振りかぶって刺そうとする。するとリーパーは、

「フッ、」

 いきなりその場に伏せたのだ。

「「うぁぁぁああ!!」」

 バランスを大きく崩した2人は、転んでしまった。

 そして、リーパーはその光景に言葉を失う。

「イテテ、、、。っ!?」

 なんと、シャドウの顔面がバラライカの胸部に埋まっていたのだ。

『パシャッ。』

 リーパーは端末のカメラでその光景を収めた。

「ご、ゴメンっ!!俺、、あ、、あの、、、その、、、、」

 シャドウは自分の身にあった事で頭が真っ白になっており、おどおどしていた。

「早くどきなさい!!バカッ!!」

「ご、ゴメン、、、。」

――――またイチャイチャしやがって、、、。

 リーパーは不審な点に気づいた。どうして早くどけと言っているのにバラライカはシャドウの手をずっと握っているのか―――、と。

 そんな答えは簡単。彼女が彼を――シャドウとずっと触れていたい、そう思ったからだろう。

「悪かったな。コイツでも飲んで許してくれ。」

 イチャイチャしてる2人の上にモンスターエナジーを2本置き、リーパーはライナーの元へと戻った。その途中、満天の星空を見上げながら考えた。


―――2人は互いを戦場で失った時の悲しみを分かっているのだろうか。あれは失った時の悲しみが大きすぎる。俺はもう失いたくない。だから、俺は人を愛さない。


いや、俺が愛を知らないだけか。

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