第21話 暗き世界の片鱗

 メタリカ 未明



 遮光カーテンで薄暗くなったオフィスの豪華な個室に、力強くも落ち着いた男性の声が聞こえる。


「それで? 死亡認定されていた忍野賢治が生きていて。なおかつ、幼くなっていたというのは本当なのかね? 君」


 声の主は闇に溶け込むかの様にソファーに腰掛け、対面に座った処刑されたはずのマッケンジーに問いかける。

 首にかけられていた呪いの首輪は既になく、彼の為だけに作られた一品物の高級ブランドのスーツを着用している。

 ソファーに腰掛け膝に肘を乗せ両手は肘掛けに乗せ、元深級探索者として優雅な姿をアピールしている。


「ああ、間違いない。この半年間、何をしてたのかは知らねえが。前より格段に強くなって帰ってきやがった。以前は総合力ならアイツが上だったが、純粋な戦闘力なら俺が上だった。双剣士は速さが売りの職業だ。それなのに気がつけば気絶させられていた」


 マッケンジーは一息つくと、テーブルからカップを取り口を湿らせる。


「あれだけの戦闘力を得るには、他の技能なんて習得している余裕はねえ。だからあれが、催眠術や心理学なんて子供騙しは有り得ねえ……何らかの方法で強さを上乗せしたか、あるいは幻のレベル100を超えたのかもしれねえな」


「ほう、それは興味深い話だ。それはそうとマッケンジー君。君は忍野賢治の強さや、特に若返りついて興味はないかね? もししくは彼に復讐はしたくないかね?」


 マッケンジーは答えを口に出さず、目の前の男が何を考えているかを計る。

 処刑されるはずだった自分を回収し、全くの別人の顔と身分を与えた正体不明の男。

 医療や美容の研究をする企業のトップ。それはこの男の変装のひとつに過ぎない。

 金の力で複数の身分を持ち、得意の変装で1時間後には別人に姿を変えて別のオフィスで別の仕事をしている事だろう。

 叶わぬ望みなどないかの如く振る舞う男が、賢治に何を見出したのか。そして自分に何をさせたいのか。

 一介の元探索者に出せる答えはなかった。


「もちろん殺してやりたいさ。ダリアとリンダ、あの2人は俺のもんだ」

「ならば私が君を支援しようじゃないか、望む物全てを用意しよう。代わりに君には頼みたい事がある」

「………なんだ」

「忍野賢治の若返りの秘密を探って欲しい。これは君にもメリットのある話でね。双子の姉妹と一緒の永遠の若さ。欲しくはないかね?」


(なるほど。こいつが欲しいのは賢治の若返りの秘密……その先にある不老不死か?)


「いいぜ。俺も永遠にあいつ等を犯せるなら願ったり叶ったりだ。プランがあるなら聞く、ないならこっちで勝手に動く」

「いい、実にいいよマッケンジー君。君が成功したら世界中どこにでも好きな土地に、家などの建設と人生100回遊んで暮らせるだけの資金を報酬として払おう」


(不老不死は売らずに、若返りさせるだけで商売するつもりなんだろうな。そしてその秘密を知る俺は邪魔になるはずだ。まだどのタイミングかはわからねえが、確実に消しに来る)


 男とマッケンジーは互いに相手を利用しつつ、自分だけが利益を独占しようと画策していた。

 自分がそう考えているから、相手も同じ考えもしているだろうと確信している。


 しかし男は長年賢治とチームを組んでいたマッケンジーにしか探れない微かなヒントがあると予想し、マッケンジーは男の金や権力の支援がないと単独で強くなった賢治を相手にしなければならない。

 更にマッケンジーはダリアとリンダがほぼ確実に賢治に助勢すると思っている。

 なので男の助成を得て罠や人員を使い、双子姉妹から賢治を1人に分断しなければならない。

 2人は計算高くお互いの利用価値を認めあった。


 この日、2人の人物が手を組み。己が欲望の為に、賢治の秘密を探り暴き奪う為の同盟が組まれた。


 決して手を出してはいけない猛獣が、常識では測れない最強のガーディアンが側に仕えている事も知らないままに。

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