伝説巨人シストス -人類滅亡ー

こねこちゃん

胎動 ~ プロローグ ~

博士「ついに完成したぞい。ワシの心血を注いだ最高傑作。人類の救世主ぢゃ!」


助手「わーわー」

パチパチパチパチ(拍手)


博士「人型万能決戦兵機。よい子の夢、巨大ロボットなのぢゃ!」


助手「すごいですね! でも何故人型なのですか?」


博士「ロマンぢゃ!」


助手「……なんかテンプレで(面白くないで)すね」


博士「それもまた、ロマンぢゃ!」


助手「素人作家で、自分の作品でも一度「ロマンじゃ~」とか出してみたかった感が全面に出てて居た堪れなくなりそうです」


博士「おほん!! とにかく、とっても強いのぢゃ!」


助手「ほほう。それでは早速人類を救って頂きましょう」


博士「焦るな。残念ながら、このマシンには特定のパイロットじゃないと動かせんのぢゃ」


助手「また何でそんな仕様に? あ、ロマンとか言ったら殺しますよ?」


博士「……いやナニその。このマシンのメインコンピュータはバイオコンピュータでな。搭乗者と相性があるのじゃよ」


助手「そのバイオコンピュータとか相性とかは何でなのですか?」


博士「バイオコンピュータとは生体コンピュータ。素体には、なんとワシの息子の太郎の脳が使われておるのぢゃ!!」


助手「どうりで最近見かけないワケですね。しかし、この戦争が終わったらオレ、嫁と別れて、スク水ニャンニャンクラブのトモちゃんと結婚するんだ……とか公言して楽しみにしてたみたいですが、よく脳の提供に承諾しましたね」


博士「……えっ。酔わせて寝てるうちに頭蓋骨切って取り出しただけぢゃよ」


助手「なにそれ血も涙もないんですけど」


博士「ひひひ、トモちゃんはワシの嫁……」


助手「聞かなきゃよかった」


博士「おほん! ちなみに太郎の嫁の花子さんの神経は伝達神経回路に転用されておるのぢゃ!」


助手「なにそれ相性悪そう」


博士「夫婦の絆パワーでカタログスペックを超えるのぢゃ!」


助手「いや絆以前に旦那の浮気がどうとかで離婚騒ぎしてましたやん」


有博士「ちなみにワシと花子さんとも過去に色々あってのう……はあはあ」


助手「キタコレ登場人物みんなクズ」


博士「それは太郎が古代人との戦いの為に長期出張に出ている春の日のことぢゃった……」


助手「具体的な生々しい話はいいです」


博士「はあはあ」


助手「そんなことより、パイロットの件はどうなったんですか」


博士「おお、そうぢゃった。パイロットはのう、太郎と花子さんの愛の結晶。わが孫の超絶美少女、エミリーちゃんぢゃぞい!! 親子の絆パワーで(以下略」


助手「ほほう」


博士「……時期的にワシの娘の可能性もあるがのう」


助手「定期的に知りたくなかった話をぶっ込むのはやめてください」


博士「そんな超絶美少女エミリーちゃんだが……」


助手「たしかにお孫さんは美少女なのは認めますが」


博士「呼び出したんだけど、友達との約束で遅くなるとかでなかなか来てくれないのぢゃ」


助手「ああ、ひろし君とデートとか言ってましたね」


博士「ひろしころす」


助手「ああっ! 衛星軌道上からのピンポイントレーザー兵器の座標をひろし君合わせないでください!」


博士「あっ。」


助手「あっ。」



博士「……ボタン、押しちゃった」


助手「……」


博士「てへぺろ (・ω<) 」


助手「……なんか博士のほうが人類の敵に思えてきました」


博士「ぷるぷる。ぼく わるいはかせぢゃないよ」


助手「じじいの手足の震えとスライムの震えをかけた表現だけは認めますが、面白くはないです」


博士「幸い、エミリーとひろし君とのデートは終わった後のようぢゃな」


助手「不幸中の幸いですね」


博士「異次元人の技術とミュータント細胞を使って、バレないうちにひろし君を再生しておこうかの」


助手「いつの間にそんな超技術を」


博士「(ワ……ワシの遺伝子を下半身に組み込んどけば、ワシはエミリーと間接的に……)」


助手「なんかロクでもないこと考えてませんか?」


博士「おほん! とにかく、エミリーが帰って来ないことには話が進まないんぢゃ!」



エミリー「ただいまー。あーお腹すいた!」


博士「おお、おかえりなのぢゃ、エミリー」


助手「おかえりなさいませ、エミリーさん」


エミリー「あれ? パパとママは?」


博士「……」


助手「……」


博士「……うおっほん! エ、エミリーや。帰ってそうそう悪いんぢゃが、任務があるのぢゃ!」


エミリー「えー」


博士「いやなに、エミリー専用巨大ロボが完成してな。バーッと出撃してガーっ戦ってグワーッて敵を蹴散らしてチャ~って人類を救ってきて欲しいんぢゃ」


エミリー「えーめんどい」


助手「めんどいって……」


博士「ほっほっほ。これを見ても同じセリフが言えるかの?」



グイィィィィィン……ガシャン!!


それはロボというにはあまりにも大きすぎた

大きく

分厚く

重く

そして大雑把すぎた

それはまさに鉄塊だった……ぞいっ!



エミリー「こ……これは」


助手「これが人型万能決戦兵機……」


博士「ほっほっほ。どうぢゃね?」


助手「意外とかっこいいです」


エミリー「かっこいい」


博士「意外とは失礼な」


エミリー「これなら乗りたいかも!」


博士「ほっほっほ。友達にも自慢し放題ぢゃぞ!」


エミリー「ひろしにも見せたい!」


博士「……」


助手「……」



博士「おっほん!! そうと決まればエミリー、さあ、搭乗前にこの専用バトルスーツに着替えるのぢゃ!」


じゃーん!



助手「……」


エミリー「……」


助手「……それって、ただのスク水ですよね」


博士「だって耐衝撃人工羊水の中に入るんだから濡れちゃうよ? 別に裸でいいなら止めないけどね。はあはあ」


助手「普通にきもいです。でもなんでよりによってスク水なんですか?」


博士「エミリーや、いま何歳だね?」


エミリー「19歳だけど……」


博士「JDのぴちぴち大人の体にアンマッチなスク水!! その背徳感こそ人類の希望!!」


助手「えっ。本当にただのスク水なんですか」


博士「えっ。さっきからそう言ってるぞい。頭大丈夫かの?」


エミリー「おじいちゃんの頭のほうが大丈夫じゃなさそう」


助手「やはり博士のほうが人類の敵に思えてきました」


博士「(なんか空気悪いぞい)と……とにかくぢゃ、エミリー。この兵器を起動するには、コイツの名を叫ぶのぢゃ!」


エミリー「……おおっ!」


助手「なんか巨大ロボモノっぽい」


博士「その名はな。ワシの息子でありエミリーの父、太郎が死に際に名づけた名なのだ!」


助手「……」


エミリー「……」


博士「……あれ? ここ盛り上がるところぞい? 何か変なこと言ったかの」


エミリー「おじいいちゃん」


博士「ほい?」


エミリー「パパって死んでたっけ?」


博士「……!!! お、おおおおおおう、こ……言葉のアヤってヤツぞい! それぐらい命を込めて名付けたって意味なんぢゃ! 死んではいないぞい!」


助手「(確かに脳は生きてますね。。。)」


エミリー「……まあいいや。ところで、このロボットの名はなんなの?」


助手「(まあいいんですか!)」


博士「……おお、そうぢゃ。そうぢゃったの。心して聞くがよいぞ。その名は……」


助手「ごくり」


エミリー「ごくり」



博士「人型万能決戦兵機 ”ガ ン グ リ オ ン”なのぢゃ!!!」

なのぢゃ…… なのぢゃ…… なのぢゃ…



エミリー「……」


助手「……」


博士「はて? 反応薄いのう。。。かっこいい名前じゃと思うんぢゃが」


エミリー「……」


助手「……」


博士「……そ、そうか。”ガングリオン”ぢゃなくて”ガングリヲン”のほうが、何て言うかグワーっと厨二心をくすぐって良いのかも? そこぢゃな?」


エミリー「……」


助手「……」


博士「……?」


エミリー「……おじいちゃん」


博士「はいっ!! 何ぞい!?」


エミリー「名前、変えれないかな」


博士「いやいや、発音程度ならまだしも、この名前はバイオコンピュータ自身が……ごほごほ、いや太郎がガングリヲンのコンピュータに登録してしまてての、無理ぞい」


エミリー「わたし、それ叫びたくないんだけど」


博士「何故じゃ! めちゃカッコいい名前ぞい!? ガンダムにグリフォンにエヴァンゲリヲンにとか、強そうなロボットの名前にありそうなのを掛け合わせたっぽいぞい?」


エミリー「……」


博士「ベストネームぞい!? むしろAIに”統計的に見てカッコいいロボの名前を生成せよ”って命令したらきっと候補で出てくるレベルで最高な名前ぞい!?」


助手「博士」


博士「ふーっ! ふーっ! ……何ぞい?」


助手「その名前、手とか手首にできる良性の腫瘤の名称ですよ」


博士「……えっ。何それ」


エミリー「ggrksググれカス



【ガングリオン: GANGLION CYSTS】

ガングリオンは中にゼリー状の物質の詰まった腫瘤。

関節の周辺や腱鞘のある場所に米粒大からピンポン玉大の腫瘤がでる。

軟らかいものから硬いものまである。

通常は無症状なことが多いが、時々、神経のそばにできると神経を圧迫して、しびれや痛み、運動麻痺などを起こす。

手を使いぎると腫瘤は大きくなることがある。



博士「……」


エミリー「……」


助手「……」



博士「でも、太郎に“何かカッコいい名前ない?”って聞いたら、”ガングリオン”って言ったんだもん!!


……言ったんだもん」


エミリー「以前パパ、ガングリオンができちゃったんだー。ロボの名前みたいでカッコいいだろうガハハとかは言ってたけど」


助手「確かに響きはカッコいいですが」


博士「……じゃ、じゃろ? もう変更とかできないんぢゃ。もうガングリヲンでいいぢゃろ?  ほら、学名の”ガングリオン・シストス”なんて、ガングリヲン改修発展機みたいな感じでカッコいいじゃろ!? 」


エミリー「うわあ」


助手「ないわー」


エミリー「友達の前とか公衆の面前では恥ずかしくて絶対叫べないし」


助手「一生イジられますね」


博士「うわあぁぁああぁぁぁあ、やめてぇ!!」


エミリー「むしろコレで人類救って伝説になっちゃったら、末代までの恥晒しなんじゃないかしら」


助手「子々孫々まで恨まれますね」


博士「もう、ね、いいじゃんコレで行こう。これで行こうよエミリー!! さあ、このスク水着替えてさ! 行こうよ、叫ぼうよ、ほら、”ガングリヲォォォォォン”ってさ! ね、ね、ね!?」


助手「博士が壊れた」


エミリー「いやあぁぁぁあ!! おじいちゃんなんて大っ嫌い!!!」


バチン!



走り去るエミリー。


崩れ去る博士。


他人のふりを始めた助手。


そんな彼達を見守るかの様に、静かにたたずむ人型万能決戦兵機ガングリオン改め、ガングリヲン・シストス。



……こうして人類は滅亡したのであった。

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