ミスター・K

北風 嵐

第1話

私が再度履歴者を書く事があったら、最終職歴はこうなります。

特別養護老人施設 生活相談員 定年にて退職。

資格:社会福祉士、ヘルパー2級。


社会福祉士の資格を通信教育で取り、60前にして介護の現場に入ったのです。資格は取っても、就職の口はあるだろうかでありました。


ミスター・Kを語る前に最初の介護の現場・デイサービスの1年に少し触れてみます。


幸い、ある上場会社(医療事務派遣の大手)が経営する子会社のデイサービスに就職出来たのです。本社東京、関西地区で8つ程デイの事業所を運営をしていました。研修や実習見習いで、個人経営や、1つだけの施設は何時も人が足りない状態で大変なことを知りました。それで、少し大きいとこがいいかと応募したのです。ベテランの生活相談員が看護職で病院勤務に復帰し、社会福祉主事をもつ介護職の若い女性がその後を受け持つことになったのですが、相談業務を若い人に任せられるのか?その事業所の所長は、少し年齢の行った人物のホローがあったほうがいいと私の採用になったようです。それとデイサービスでは社会福祉士の資格を持った人物は要ったのです。身分は1年更新の契約社員でしたが、社会保険の適用はありました。新しい出発は上手く行ったと思えたのですが・・。


その事業所で、スタートで恥ずかしい大失敗をやらかしたのです(長い仕事生活の中でも初めてでした)。その事業所では契約終了の1年間いたのですが、殆どをその失敗の回復だけに費やした思いが今でもするのです。


新しく相談員になった彼女と同行して、利用希望のご家族さんの家庭を訪問しました。彼女が契約書を読み上げて説明しているときに、横でただ、聞くだけの私に‘’摩の一瞬、睡魔が襲ったのです。ほんの一瞬でした。横の彼女を見て「見られてなかったか」と思いましたが、彼女はたんたんと続けて説明を続けていたのでよかったと安心したのですが・・。所長から呼び出しでした。「やる気があるのか!」の一喝でした。見られて報告されていたのです。出だしの失敗の信頼回復は大変なものでした。何をしても、色めがねで見られてしまいます。


施設は私鉄沿線の駅前にあり、開所6年を迎え、経営も軌道に乗っていました。送迎車も沢山あり、利用者さんは常時35名前後、スタッフも看護師、介護福祉士、本採用の介護職の女性、パートの女性とスタッフ数も足りて、若い人は男性介護職員2名と相談員のその女性が3年目でした。開所以来と言うベテラン勢の介護スタフで、定着率も良く、ここがしっかりした事業所であることを意味していました。介護現場はともすれば定着率が悪く、移動が激しく、慢性の人手不足で、それがサービス力の低下となって現れます。

ここは35名の定員近くが毎日利用されていました。車が多いのはここが後発で遠方の客を取らねばならなかったからです。

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