青春

 学生時代の話。

 私は怠惰な性格だった。

 宿題は板書を書き写すだけ。三〇分で済ませてしまう。

 テスト勉強も真面目にやらず、常に平均点だけ確保して、お茶をにごしていた。


 いちおう、本気で取り組んだときはある。

 順位は二位だったっけ。

 要はやればできるのだ。

 それなのに、サボる。

 理由は純粋に面倒だったからだ。

 よい成績を残したところで、それが認められるわけがない。むしろ両親は私の順位なんて知らない。点数だけを見て、低いと言う。ただ、それだけ。


 とくかく無気力だった。

 やる気がなくて、怠惰だった。


 その傍らでは点数を巡ってデッドヒートを繰り広げるガリ勉たち。

 卒業の日、「ライバルでしたね」と語り合っている彼らを見て、羨ましいと感じた。

 ああ、青春しているな。競い合っているな。

 私には、そんな相手はいなかった。頭がいいと褒められることはあっても、それはよいときの成績だけを見ている人。

 勉強をしなければこんなもの。平均点のテストを眺めて思う。


 中途半端だった。

 エンジョイできていなかった。


 今でも思う。もしも、本気で取り組んでいたらと。

 だけど、そこに去来するのは後悔ではない。

 本当にできるのか? という懸念だ。


 なにしろ、実際に私はできなかった。

 こんな私が。

 三日坊主であっさりと趣味を投げ出してしまうような私なのに。

 いくらやろうと決めたからって、それを貫き通すことができるのかと。


 勉強は嫌いだ。

 面倒だから。

 でも、不要だとは思っていない。

 いつかきちんと役に立つ。

 そう言いつつ、知識なんてほとんど抜け落ちているのだけど。


 過去を思い出す。

 私の学生生活、いったいなんだったのだろう。

 一つ言えることがあるとすれば、あの日々は二度と戻ってこないということ。


 誰も教えてくれなかった。

 青春の日々は一過性だと。

 当たり前に続くはずの生活は途切れた。

 もう二度と振り返ることはない。


 それでも夢に見てしまう。学校に通う日々を。教室で皆と話し合う光景を。

 それは単なる郷愁というよりは、あまりにも苦くて、悲しくて。

 むなしくて、たまらなかった。

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