目標までの道のり
遠藤良二
第1話 持病と家族
僕は今、病院にいる。待合室で待って約一時間が経過する。今まで待っている間に友達も出来た。
「なあなあ、修治。一か月前に会って以来彼女出来た?」
「いや、出来ないっスよ。原田さんは?」
そこで、看護師が俺達のいる喫煙所にガラス戸を押し開けて入って来た。
「内山君、中待合で待っててね。もうすぐ呼ばれるから」
と、言いまた戻って行った。
「はーあ。いつになったら幻聴が治まるんだろ。先生に言っても、上手く付き合っていくしかないと言われるだけだし。ホント、頭にくる」
俺は愚痴った。
「修治の統合失調症は幻聴が多いよな」
原田さんは言った。
「そうなんスよ。ウザくてたまらない!」
俺は段々腹が立ってきた。(とりあえず行くか)と思った。
「じゃあ、また後で」
「ほーい」
俺は北海道の田舎町に住んでいる
とりあえず診察を終わらそう。面倒だが仕方がない。病気になってしまった以上、良くなる方向に考えていかないと、と主治医が言っていた。確かにそうだと思う。俺は今、中待合にいる。年配の看護師が、
「もう少しだからね」
と、言う。どうせなら呼ばれる直前にして欲しい。俺は、
「はい」
そう返事をした。
約十五分後、
「内山さーん」
看護師の高い声が響きわたる。俺はダラダラとまるでゾンビのように歩き出した。その姿を見てか看護師は苦笑いを浮かべているのが見える。(バカにしやがって! クソったれ看護師が!)と思いながら診察室に入った。
診察時間は五分で終わった。主治医のいつもの「調子はどうですか?」と「お薬は変えずに出しますね」の二つ。調子が悪い時でも、「気圧の関係」とか「急に暑くなったり寒くなったりしますからね」といつもの台詞。もう聞き飽きた。俺は病院の通路を歩きながら(どうせ、やぶ医者だろ!)と一人、心の中でキレていた。俺は再び原田さんのいる喫煙所に向かった。だが、彼の姿は無かった。どこにいったのだろう。とりあえず、大して吸いたくもない煙草を吸った。その後、会計をするために受付に向かった。
(今日は調子がまあまあ良いから薬は二十一日分か。せめて二十八日分出ればいいのになあ)と思った。
俺は障害年金をもらっていて、それと職場で得た給料で実家暮らしだ。母は去年、胃がんで亡くなった。あの時は本当に悲しくて、家族みんなで号泣した。俺としては、母は心の支えにもなっていたから尚更だと思う。
俺には二つ下の妹がいるが既に結婚していて四歳になる息子がいる。遠くの都市部に住んでいるので年に数回しか来ない。俺は病気もあるし、片親だから決して恵まれた環境とは言えないかもしれないがこういう環境で生きてきた。
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