お風呂の湯気

自分の家の、小さなお風呂。

浸かりながら、天井を見つめている。

湯気のせいで、よく見えないが。

濡れた体は心なしか重く、水に浮く気配もない。

彼を、想っていた。

同じクラスの優等生。

何でも趣味は、ギターだそうだ。

一言だって、声をかけられない。

そもそも、言葉を交わせるイメージが湧かない。

どう考えたって、釣り合わないもの。

でも……。

バチャバチャと水しぶきを立てる。

そして、焦点の定まらない目で言った。

「……はぁ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る