2【失恋】

 




「ねぇ、ねぇ。知ってる? 課長の恋人のこと」


(えっ! ……なんでバレたんだろ)


「うちの課の子なんだって」


(……課長と一緒のとこ、誰かに見られたのかな)


「なんでも、ロン毛の美人なんだって」


(……やっぱ、私のことだ)


「そんな子、いたっけ?」


(目の前にいるじゃん)


「見た目は、20代前半だって」


(えーっ! そんなに若く見えるかな、私って。クッ)


「あっ、わかった!」


(あーあー、とうとうバレちゃった)


「そう言えば、一人いるじゃん」


(もう、遠回しなんだから)


「ほら、来た。あの子、あの子」


(エッ!)


「ヤだ、課長と同じテーブルに座った」


(! ……って、ことは、いつも話し中は、ホントの話し中じゃなくて、拒否設定の話し中?)


「楽しそうにおしゃべりしながら、同じ定食食べてる」


(……遊びだったの? 私とは)


「やっぱ、付き合ってたんだ」


(……あの、甘い言葉も甘いささやきも、みんな嘘だったの?)


「……ね、どうしたの? 泣いてんの?」








「ん? ……タンメンの酢が目に入っただけ」






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