0-10.目覚めて
川に入って顔や手にべとりとついた血痕を洗い流すと、はからずも全身びしょ濡れになった。水の冷たさが心地よいが、出来れば早めに拭いてしまいたい。しかしこの場にタオルなどあるはずもなく、仕方ないので岸に上がって日向で身体を乾かそう。
時刻は昼を過ぎ、少し陽も傾いているが未だ日差しは強いままだ。この様子なら割りかし直ぐに乾くだろう。砂利の上に身体を横たえて居ると、なんだか気持ちよくなってきたので少し目を閉じ息を吐く。つかれたよパトラッシー。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
――なんつって。あれ?
どうやら眠ってしまって居たようだ。首をもたげて辺りを見回すと、まだ日が出ているので大した時間眠っていた訳じゃないようだ。と思ってミニマップしたの時刻表示を見て目を剥いた。
――八時か……ん?八時?……はちじ!?
表示は現在、08:03:42を指していた。
――ちょ、ちょっとまて。まぁまて。おちけつ。
確か、ここに戻ってきた時は十五時頃だったはず。とすると、じ、十七時間も寝てたことになるのか……。ちょっと寝過ぎだろうと思う。生前の二度寝無しでの最長記録は、確か十三時間くらいだった。
まあ、転生なんて物を経験して、崖から落ちて、前世も含め生まれて初めて生き物を殺し、喰った。そのストレスが相当な物だったのだろう。ストレスは人を殺す。舐めちゃいけないね。
しかし、半日以上寝た所為かやけにスッキリしている。すっと起きれるのは良い。
――ふぅ……そういやうさぎに勝った時にスキルを手に入れてたな。確認しとこか。
試しにショートカットからスキル欄を呼び出してみる。アイテム欄の時と同じように、メニュー経由とは違う様相のスキル欄がポップした。書いてある事自体は変わらないようだ。
さて、お目当てのスキルは確か……。
▼パーソナル スキル
-----ノーマル-----
[NIS] Lv1/熟練値:(5→)15%
[メニュー] Lv1/熟練値:(2→)15%
[自動回復] Lv1/熟練値:(5→)8%
[探査(サーチ)] ロック中/初期熟練値:(8→)68%
[マーカー] ロック中/初期熟練値:(8→)66%
[鑑定] ロック中/初期熟練値:(8→)67%
[視界調節] ロック中/初期熟練値:(3→)61%
new[回避] ロック中/初期熟練値:56%
-----レジスト-----
[精神汚染耐性] ロック中/初期熟練値:(9→)70%
[物理耐性] ロック中/初期熟練値:(3→)62%
new[苦痛耐性] ロック中/初期熟練値:58%
new[ストレス耐性] ロック中/初期熟練値:56%
▼オブジェクティブ スキル
[殴打] ロック中/初期熟練値:(6→)64%
new[爪撃] ロック中/初期熟練値:60%
new[尾撃] ロック中/初期熟練値:59%
new[角射出] ロック中/初期熟練値:93%
――あれっ、なんかめっちゃ増えてる!?
ていうか熟練値もめっちゃ増えてるやん!!よく見れば90越えてるスキルもある。な、なにこれぇ……?
――た、確か初期熟練値って一時間に1%数値が上がるんだったよな……
幾らかの数値は過程の経験値で上がってると仮定しても、高々二十時間前後で60前後も上がるとは思えない。過程の経験値で得られるパーセンテージは多くないと言う。そもそもボクが寝ていたのは十七時間程で、最初のスキルチェックから二十時間前後しか……あっ。
……もしかして。
――……つかぬ事をお聞きしますがナビィさん。ボクは一体、どのくらいの時間寝ていたんです?
《53時間2分33秒。》
あー……やっぱり。
53時間、えっと、つまりボクは丸二日と五時間寝ていたということだ……まる?
――ま、ままま、まる二日ぁ!?
《否定。》
――えっ何が!?
《二日ではない。その数値計算は地球での時間換算での事。》
どういうことだ?
《この世界の一日は24時間ではない。この世界では一日は30時間。拠って、1日と23時間が正しい数値。より正確には――》
――あっ、細かい数値は結構です。
《……そう。》
はー、頭痛い。これは流石に想定外だわ……まさか一日が30時間もあるとは……。他の、時間とか月の数え方とか、一年は何日かとかも変わってくるのだろうか。あ、そういや秒と分は60で次が繰り上がるのを視認してたわ。
それにしても、流石異世界。細々考えても仕方ないスケールのでかさだ。
いや、それにしたってさぁ。いくら疲れていたとしても、地球換算でまる二日以上寝るというのは異常だ。異常の範疇も越えてるんじゃ……。
空腹がない事の副作用だろうか?よくよく思えば、腹は空かないとは聞いたが、食べなくても生命活動を維持出来るとは言われていない。もしかしたら栄養補給出来ていない影響が睡眠時間として出ているのかもしれない……。
――って食べたじゃん!ボクさっきうさぎ食べたじゃん!さっきではないけど!
そういえば食べてた。50時間以上前だけども。
――なに?野菜?野菜食べたら良いの?それともお米?糖質が足りてないの?
《否定。あなたの身体を構成、維持しているのは食物から得られる栄養素では無い。》
――えっなにそれこわい。
《エラー。答える権限が無い。》
えぇ……。
何かよくわからないけど栄養は必要ないと言われてしまった。なんか勝手に盛り上がってアホみたいやん。
ボクの身体は何か別の要素で出来ているらしいと言うのは理解出来たが、じゃあ極端に多い睡眠時間は何なのだろうか。ドラゴンの身体では標準的なのだろうか。
《肯定。ドラゴン種は基本的に寝たいだけ寝て、起きたいだけ起きる。そう言う生き物。》
――へぇ……。じゃあボクもその気になれば何日でも徹夜していられるって事か。
《肯定。》
もう突っ込んだら負けなのかもしれない。ドラゴンや異世界を矮小な人間の尺度で図ろうとするのがおかしな話なのだ。
丸二日、こんな屋外に寝てたにも関わらず、外敵に襲われなかった理由も、気にしても仕方無いのだろう。きっとそうだ。
――あ、じゃあ90%越えてる”角射出”ってのは?
《”角射出”は一角兎の捕食に拠って得たスキルの為、一角兎のスキル熟練値に基いて一匹捕食する度に10%加算された。》
そういえば同スキルを持つ相手を喰らうと時短出来ると聞いた気がする。そのパターンで40%加算されたようだ。それなら、うさぎをもう一匹捕食するか、後七時間経てばアンロック出来るのだろう。
色々と衝撃だったが、頭を切り替えて残りのスキルチェックをしよう。
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