【資料】東方見聞録「元のジパング遠征、その顛末」 一部抜粋(現代語訳)

…クビライ・カアンは属国の王からジパングについて、国内の反乱を手助けする豊かな土地であると聞かされてこれを征服しようと思い、二人の将軍に多数の船と騎兵と歩兵をつけて派遣した。


(中略)


さてタタールの優秀な将兵たちは長い航海の末に上陸し、瞬く間に村落を占領したが、そこには見えない矢を放つ魔術師がいたため、城塞を攻略することは出来なかった。兵たちは他の場所から攻めようと船に乗り込み、島の周りを探った。ところが不幸なことに、凄まじい北風がこの島に吹き荒れたことで大カアンの船団はそれに巻き込まれ、軍団の大多数が滅んでしまった。わずかに3万人ほど生き残った者は、少し戻ったところにある小島にたどり着いたが、その小島は人が住めるようなところではなく、彼ら以外に生き物の姿が無かった。


(中略)


ジパングの王はこれを知ると大いに喜び、船と兵をジパング中からかき集めて、小島を四方八方から攻めさせた。しかし思慮に富んだタタール人は彼らが上陸するまでにそれを察知し、奴隷を囮として隠しておいた船で脱出した。彼らはそのまま本島に向かい、手薄になっていたジパングの首都を占領して住民を全て追い払ったのである。これを知ったジパングの王と軍隊とは大いに悲しみ、本島に戻ると兵を集め直して首都を囲んだ。一人として出ることも入ることもできなかったが、中に籠ったタタール人たちはよく耐え、半年の間持ちこたえた。この間、大カアンにことの次第を知らせようと夜も昼も努めたのだが、結局それは叶わなかった。もはや持ちこたえられなくなり、命を助ける代わりに生涯ジパングの外に出ないという条件で降伏した。


(中略)


大カアンの軍隊が首都を占領した時のことであったが、ひとつの城塞には鎧を貫く弓矢を扱う者がいた。それは彼の手に埋め込まれた石に施された魔術によるもので、どんな矢でも鉄をも穿つという効能を帯びる。これを聞いたタタール人の将軍たちは弓矢の狙いをつけにくい夜を待って攻撃をかけて斬り殺し、その死骸から石を取り出すと大事にしまったのであった。





訳者注:属国とは後高麗のことで、本島は対馬や壱岐島などの混同、小島は鷹島のことと考えられる。特筆されている弓矢に関しては、初期の火縄銃のことであろう。多くの面で誇張が見られるが、最後の逸話に関しては火縄銃の鹵獲を示唆しており、大陸側における発掘調査との一致が見られる。



***ここからあとがき***

元が史実よりボコボコにされたせいで東方見聞録の記述も本来のそれよりしょっぱい?しーっ!

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