第7話 草図鑑

さっきのパーティは、まだ同じ席に座っている。まだ参加者待ってんのか。

ジンはまた依頼板を見ている。


「『チユ草20本採取依頼』、『ボアの出現退治』か…」


特に良さげな依頼はなかった。


「あ、『本棚の整理』とかいいかも、報酬は500レギットで、1日読み放題か」


その依頼はギルドの隣の図書館だ。本の整理だけで、入場料250レギット分をただ+500レギットももらえる。割と美味しい依頼だ。

この依頼以外、特に気になる依頼もない。


「これでいっか」


とりあえず今日はこの依頼にすることにした。1日分のお金は稼げるし、本は読めるし、まだ時間があれば、採取系の依頼をパパッと終わらせて追加でお金を…ってこともできる。


「あの、こっちにします」


受付嬢のところに来た。


「あら?さっきの依頼はどうされました?」


「いやー、農業魔法じゃむりって拒否されちゃって」


「そりゃ草魔法は初めての人は農業魔法って勘違いしますよねそれで今度はこの依頼を?」


依頼の紙を出した。


「はい、ちょっと整理してきます」


「わかりました!すぐそこの図書館です!達成したら依頼主からハンコもらってきてくださいね!」


ハンコとは、依頼の紙にハンコの欄があり、そこにサインをすることだ。「達成しました」と言う証拠になる。


「わかった、行ってくる」


「行ってらっしゃいませ」


ギルドを後にした。

といってもすぐ隣なんだが。















「よくやってるね、あと1列ならもうサインしとくよ、…でも!サボっちゃダメだよ」


「ああ、わかってる」


しっかりと本棚を整理した。残り1列。図書館は大きく、意外としんどかった。

でもあと1列。それも数は少ない。その列は、古い、なんかの物語の本が並んでいる。


「『ヒツジと少女と魔人』って、へんな題名だな」


手に取ったのは埃まみれの本だった。最後の1冊はこの本棚の中で1番古かった。


「まだ午前中だし、ちょっと読んでみるか」


しっかりと依頼人に完了の知らせを言い、椅子に座って、本を読むことにした。


「なんだろうこれ、『世界樹の付近に咲く、癒しの花『スヴェートリヒトクヮン』全てを癒すもの』って、実在すんのかな」


そのページには、絵もあった。その絵はぶっとい茎に、黄色い大きな花の絵だった。


「きっとこれは想像の花かな?今度、咲かしてみるか」


密かに、ジンの実験が始まった。


「おお、また草だ。『吸い尽くすもの『ズローチェニーメイクェイファー』か、何を吸うのやら」


その本は、少女とヒツジと魔人が手を取り合って、誰でもどんな人種でも手を取り合おうって感じの物語だ。本の厚さはそれなりにある。そこらの全魔物図鑑なんて比じゃないぐらいの大きさだ。それに、魔人が、草の知識がとても多いい。ちょくちょくいろんな種類、特徴の草が載っている。しかも、それなりに強そうな名前を持つ草だ。それに、草の話があるたびに、草の絵が毎回ある。これは実在するのか試すのは楽しみだ。


「あ、ヒツジまた死んだ『死者再起復活供え草『ドゥンケルスコトス』えっ、ゾンビになんの?」


「ちょっとうるさいよ」


「すまん!」


うっかり声が出ていたらしい。ヒツジはなんだか、よく瀕死になる。その度に、魔人が、世界樹のところまで転移魔法?ってやつを使って『スヴェートリヒトクヮン』全てを癒す草全回復してる。

なんだろう。ヒツジいらない気が…。


「もう帰るかな」


本はしっかりと読み終わった。結果的にバットエンドと言っておこう。悲しい話だった。


時間はわからないが、腹が減ったので、もう昼ぐらいだろうか。


草の種類全て絵と名前完全に覚えてやった。(これに1時間はかかった)


「さて、飯食って、依頼するかな」


もう帰りますと一声かけて、図書館を出て行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る