第7話 魔力操作と魔導銃

 残ってた魔導銃のチュートリアルを受けるため場所を探し始めてから早くも20分が経った。

 調べたら確かにこの辺りにあるはずなのに見当たらない。


「もうこうなったら隅々まで見て回るしかないな」


 そう決めてから各ブースの間まで入り込んでまで探し出したがそれでも見つからない。

 徐々に拡張された空間の終わりが見えてきた。恐らくあの突き当たりの壁がこの空間の終わりだろう。


「で、とうとう突き当たりまで来てしまいました、と」


 結局見当たらず、ため息をついて壁に手をついたら、倒れた。

 同時についた手とは逆の手に持っていた端末に魔導銃のチュートリアルを受けるか受けないかの通知が現れた。


「・・・そういうことね。道理で見つけられない訳だ」


 改めて端末の通知を確認して受けるを選択すると、射撃場が現れ、目の前に置かれた台座にケースが1つ置かれていた。


『相変わらず遅いですよ〜!さ、早く始めますよ!』


「そう思うなら、もっと分かりやすくしてくれ」


『はいそこ、文句言わな〜い」


「はぁ、このケース開ければいい?」


『開けて中のものを装備してください』


 言われた通り、ケースを開けると銃とホルスターが入っていた。

 ホルスターを腰に取り付け、銃をその中にしまい込む。

 映画とかの見よう見まねだけど、合ってんのかな?


『お、装備できたみたいですね!それでは、魔導銃のチュートリアルを始めます』


 あ、仕事モード入った。

 そこからは退屈な説明だった。まあ短く簡潔に分かりやすく説明してくれたので退屈な時間はすぐに終わったけど。


『では、まずは魔力を銃に込めるところから始めましょう』


「シロナさん、やり方教えて。そこ説明してもらわないとできないんだけど?」


『普通なら、感覚で出来るものなんですが・・・もしかして、魔法が使えないとか?いや、そんな可能性ゼロに等しいですし、そもそも魔導銃スキルは魔法が使えない人には発現しないはず』


「魔術しか使えないけど?」


『まさか、そんな事が・・・?いえ、冗談で言った魔術の基本講座を受けに来たし、割とレアな魔導銃スキルの事も持ってないと思って意地悪するために言ったのに受けに来てるし、これは・・・まあ、例外として受け入れましょうか』


 ブツブツ独り言を言っているが、頭に直接流れ込んでくる仕様なので丸聞こえだ。

 まあ、何言ってるか理解できないんだけどね。

 とりあえず例外だという事だけは分かったから良しとしよう。


『さて、魔術しか使えないとなると魔力操作を自分の意志で行っていただく必要があるのでそこから始めましょう。魔力操作を行うには魔力の流れを感じられるようにならなければいけません。今回は時間をかけていられないので、ちょっと強引な方法で感じていただきます』


 そう宣言したら、途端に身体中が不快感に包まれた。

 少しすると、視界が歪み、回転し始めた。

 立っていられなくなり、膝と両手を地面について、四つん這いになった。

 すると今度は、何かが這いずり回るような感覚が全身に襲いかかってきた。

 這いずり回るスピードが速くなるにつれ、身体から熱が発せられ、倒れ込んでしまった。

 今度はその逆流し這いずり回る何かを止めようとしている本来の流れが感じられるようになってきた。

 不意に、全ての不快感が消え去り、急速に熱が下がり、回転していた視界も正常になった。

 しばらくは倒れ込んだまま放心していたが、何とか我に返って立ち上がった。


『私の魔力をあなたの魔力の流れとは逆の方向に流しました。今のであなた自身の魔力の流れが感じられたはずです。どうですか?分かりますか?』


 さっきの感覚を思い出しながら、魔力の流れとやらを意識してみる。

 全身を隈なく通って外に少しずつ流れ出ている何かが感じられるようになったが、これが魔力なのか?


『全身から少しずつ流れ出ているものが感じられますか?それが魔力です』


「へえ、これが・・・で、これをどうするの?」


『ここからはイメージするだけです。まずは右手に集まるようにイメージして下さい』


 均等に流れているものが、右手に多く流れるようにイメージする。が、上手くいかない。


『難しく考えずに、シンプルにイメージして下さい。極端に言いますと、体を動かすのと同じイメージでいいんです。魔力は体の一部と考えても良いくらい密接な物なので』


 アドバイス通り、シンプルに魔力が動くようにイメージしたら、できてしまった。


『これが最も初歩的な魔力操作です。次は魔力を銃に込める操作です。先程のように動かした魔力をそのまま銃に向けて放出して下さい。そうすれば、銃が勝手に魔力を吸ってくれます』


「放出の方法は?」


『お◯っこを出すのと同じ感じです』


「ぶっ!おまっ、そういう例えをするな!!」


『でも、分かりやすかったですよね?』


「・・・そりゃ、まあ否定できないけど・・・とにかくやれば良いんだろ」


 変な流れになりそうだったので強引に話を打ち切り、銃を持って魔力を放出する。

 放出した魔力が漏れることなく銃に吸い込まれたのも何となく分かった。


『込められたようですね。後は引き金を引くだけです。この一連の流れが魔導銃を使用するまでのプロセスです。では、的に向かって撃って下さい』


 そこからは片手剣の時とほぼ同じ流れだった。

 撃って外れればアドバイスをもらい、当たれば次に進む。

 片手剣と違っていたのは実戦の代わりに動く的に魔力の銃弾を当てるだけだった。


『これで、魔導銃のチュートリアルは終わりです。魔導銃は予め魔力を溜めておけばホルスターから引き抜いて引き金を引くだけで撃てるので覚えておいて下さい。それと、魔力操作の事ですが、放出している魔力を身体の表面に纏わせるようにイメージして操作すれば、擬似的な強化魔法や強化魔術の効果があるので是非試して下さい。意識的な魔力操作を続ければ魔力操作スキルが発現すると思います。スキルがあれば魔力操作が楽になるので発現するまで頑張って下さい』


「何から何までありがとう。それじゃシロナさん、さよなら」


 一応お礼を言っていつのまにか用意されていた出口から元の空間に戻った。

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