第73話 ハイオーガと調査報告


「この状態から回復出来るのか·····」


ハイオーガの体は、斬れた場所がくっついていき完全に回復してしまった

ハイオーガは、何事も無かったかのように、立ち上がって黒斧を構えた



『グォオオオ!!』

ハイオーガが雄叫び上げて、斧を振り下ろしてきた

俺は魔素血刀で黒斧を受け止めた

すると·····血刀の魔素が黒斧に吸収され始めた


「そこからも吸収出来るのかよ!」


俺は黒斧を無理やり弾き飛ばすと、今度は薙ぎ払う様に斧を降ってきた

巨大な斧が俺の脇腹目掛けて突っ込んでくる

俺は魔素制御で手に魔素を集中させて、掴んで斧を止めた

斧の威力で体が横に引きずられるが、少し引きずられたところで、勢いが止まった

手で斧を掴んでいると、今度は手から魔素が吸収されていき、手が普通の状態に戻ってしまった


「吸収しすぎだろ·····リオ!こっちに来れるか?」


俺は斧から手を離して、ハイオーガから距離を取った


「ジンくん、ピンチ?」


「まぁ、ピンチだな·····アイツの黒斧は魔剣みたいなんだが、魔素吸収とか言うふざけたスキルを持ってるみたいなんだ」


「ジンくんみたいだね!」


確かに俺も吸収できるが·····あそこまでの吸収速度は持ってない


「俺がアイツを引きつけるから、俺を含めて魔素が入り込まないようにバリアを張ってくれ」


「それだけでいいの?」


「あぁ、それだけであいつに勝てる」


俺はまた、ハイオーガの元へ向かった

今度は普通の血刀を2本構えて、突っ込んでいく

俺が、ハイオーガに斬りつけた瞬間、周りがバリアに包まれた

俺は手数だけでどんどん攻めていく、ハイオーガに傷を増やしていくが、魔素を吸収して傷が治っていく


ハイオーガもただ斬られている訳もなく、俺に向かって斧を振り回すが、俺は魔力強化<火>で瞬間的に場所を移動して回避していく


しばらく、ハイオーガを斬り続けいくと、傷が治らなくなってきた


「ここだ!」


俺は血刀に火属性を能力付与エンチャントして、ハイオーガの胴体を十字に斬りつけた

俺は後方に跳んでバリアの外から中を確認すると、ハイオーガの体が燃えていた

魔剣の腐敗の効果を上回る回復能力を失い、炎の中で体が朽ちていく


ハイオークの時もそうだったが、魔物がどこで魔剣を手に入れたのだろうか·····

誰かが裏で手を引いている可能性がある



「倒したの?」


「あぁ、あの中だと、魔素吸収も意味が無いからな」


完全に燃え尽きた事を確認して、バリアを解除させると、そこには、魔石だけが残っていた

ハイオークの時と同様に魔剣は消えてしまったようだ

俺はハイオーガの焼死体をアイテムボックスに収納して後ろを振り返ると、三本角のオーガたちが、武器を構えていた

長を倒されてやる気になったらしい

数は10匹、俺に蹴飛ばされた奴等は気絶したままだ


「リオ、気絶してるオーガをシロのところに転移させといてくれ、こいつらは俺が倒す」


「わかった!」


リオが返事をして、走っていったのを確認して、俺が血刀を構えると、オーガ達が飛びかかってきた


飛びかかってきたオーガの首を、次々と刎ねていく

1分と持たずに、オーガは全滅した

念の為、オーガの死体はアイテムボックスに収納しておいた


「そっちも終わったみたいだな」


「異空間に入れるだけだからね、あとはシロがやっちゃうし」


「報告の必要があるから、1度カタクに戻るか」


「じゃ、ゲート開くよー」


リオにゲートを開いてもらい、異空間を通って、カタクへ向かった




◆カタク『冒険者ギルド〜応接室〜』


「これが、ハイオーガだ」


そういって、アイテムボックスから、テーブルにハイオーガの頭を取り出した


「確かに、ハイオーガじゃな·····ジンが討伐してくれんかったら、いつか町まで来ていたかもしれんな·····」


調査結果を報告書に書いて、ランディに手渡す


「ふむ·····確かに確認したぞ、報酬を用意するから少しまっとれ」


「報酬の前に、まだ報告することがあるだが、いいか?」


「また、厄介事か?」


「俺がいつも厄介事を持ってきてるような言い方だな····」


「ジンには仕事を増やされてばかりじゃからな·····

それで、その報告とやらはなんじゃ」


「ハイオーガが、魔剣を持っていたんだ」


「なに!?魔剣だと?その魔剣はどうしたんじゃ、まさか置いてきたわけじゃあるまい?」


ランディがソファから立ち上がって、詰め寄ってきた


「ハイオークの時もそうだったんだが、持ち主を倒すと霧になって消えてしまったんだ」


「そんな魔剣、聞いたことも無いぞ·····本当に魔剣じゃったのか?」


「魔剣で間違いないはずだ、それよりも、その魔剣の能力で魔素がハイオーガに集まっていたらしい」


「まるで、魔物用・・・の魔剣のようじゃな·····」


「なんで魔物用なんだ?」


「魔素を集める魔剣なんぞ、人間が持ったところで、ただの剣じゃ、魔素を使うのは魔物だけじゃからな」


最近、魔素を使うことが当たり前になっていたせいで、気づいてなかったが、言われてみればそうだ

人間があの魔剣を手にしたところで、体が腐って死ぬだけだ、まさに魔物用の魔剣ということか·····


「確かにそうだな·····」


「それが報告か?魔剣のことは驚いたが、無いなら調べようがないのぅ·····」


「魔剣が無くなったことが報告だ、魔素を集める能力を持つ魔剣が森の魔素を集めていたんだ、それが無くなれば、溜まっていた魔素はどうなる?」


「森の中に広がっていくのぅ·····」


「そうだ、結果的に森の魔素が濃くなる·····

つまり、今まで以上に強い魔物が生まれやすくなるってことだ」


「エル!至急、森の調査依頼を出せ!オーガ討伐済みの内容を書いてCランク以上の冒険者に行かせろ!調査内容は森の魔物の数と種類だ!」


「はいっ!わかりました!」


俺が説明すると、ランディがエルさんに指示を出した

エルさんは、返事をして急いで、部屋を出ていった


「ジンは本当に厄介事を増やすのぅ·····調査結果次第じゃが、情報提供の報酬を後で渡すからの」


「冒険者の数が増えて、依頼が足らなかったんだろ?

丁度良かったじゃないか

俺達はウリタカントに向かうから、報酬は他のギルドで受け取れるように、手続きしといてくれ」


「わかった、手続きはこちらでしておこう

オーガの討伐と情報提供、感謝するぞ!」


「それじゃ、また近くに来たら寄るからな」


「次は厄介事は無しで頼むぞ!」


「あぁ、保証は出来ないがな·····」


俺達はギルドを後にした

空を見上げると、太陽が高い位置にきていた


「飯にするか·····」


「うん!」


俺達は昼飯を食べてから、ウリタカントに向かうことにした

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