第38話 ジン vs レン


俺とレンは舞台の中央に向かう


「ジン、俺は日本に帰りたい、いや、帰らないといけない」


「そうか」


「そのためにもダンジョンを攻略する!」


「帰れる保証も無いのにか?」


「可能性があるなら攻略するしかねぇだろ!ジンは帰りたいと思わないのか?」


元の世界に帰る方法はあるか·····

俺もこの世界に来てから3ヶ月間、考えていたことだ

帰りたい気持ちはあるが、帰れなかったらその時はこの世界で生きていくという考えは今も変わっていない


「今考えても仕方ないことだ、俺は帰る手段が見つかった時に帰りたいか考えればいいと思っている」


「手段を見つけるためにダンジョン攻略をするのか·····」


「あぁ·····」


「「·····」」


俺達は無言で見つめ合い、所定位置に移動した

闘技場が静まり返る中、レフェリーの声が響いた


「はじめ!」


俺とレンは合図とともに闘気を発動した

2人の体から湯気が上がる

俺は血刀を両手に持ち、縮地で移動しながらレンに斬り掛かる


「二刀流か!」


剣術のレベルが高いだけあり、俺の攻撃を片手剣1本で上手く捌いていく

片手剣は神剣らしく、血刀相手に刃こぼれ1つ起こさずに凌いでいる


【クラス・ソラス】魔剣

【特殊能力】光属性強化


「強化型の魔剣か!」


俺は手を緩めず闇魔法で剣を創り出し、手数を増やす


「無駄だ!」


レンの神剣『クラス・ソラス』が光だし、俺の闇刀を消し去ってしまった

闇刀が負けたと言うことは単純に神剣の方が属性として強かったという事だ


「闇刀じゃ相手になりそうにないな·····そこまで光属性が強化されているのか·····」


身体能力はほぼ互角だが、能力で差が出る戦いになりそうだ·····


「こいつのおかげで、俺の光属性は強化させる!あんな影みたいな闇魔法じゃ相手にならないぞ!」


「なら、これでどうだ?」


俺は両手に持っている血刀に闇属性を付与する

血刀の周りに黒いモヤがまとわりついていく


「刀が黒くなった?さっきの闇魔法と違うらしいがこの神剣の前には無意味だ!」


一瞬、レンが驚いていたが神剣を構えて突っ込んできた

俺は神剣の軌道に血刀<闇>を1本置くように構える

神剣が血刀<闇>にぶつかり、勢いが止まる


「何!?」


神剣を止められたことで、レンが驚いて隙ができた

俺は血刀<闇>の角度を変えて神剣を滑らせて軌道を変える

軌道を変えられたレンが体制を崩した

そこに、もう一本の血刀<闇>でレンのガラ空きの体に下からすくい上げる様に斬り掛かる


『ガッ!』


かなり無理な体制でレンが俺の血刀<闇>を止めた

俺はそのまま力を入れて無理やり神剣を弾き飛ばした

弾き飛ばされたことで、レンは手を上に上げた状態で硬直状態になって隙だらけだ

神剣はレンの手から離れ、場外の地面に突き刺さった


「終わりだ!」


俺は2本の血刀<闇>でレンに斬り掛かる


「くっ·····」


俺はレンの首と胴体に寸止めした


「俺の負けだ·····」


レンがギブアップしたことにより、静まり返っていた闘技場が一気に騒がしくなる


「勝者!ジン!」


レフェリーが近くに来て叫んだ

俺は血刀をキーチェーンに戻して、座り込んでいるレンに手を差し伸べる


「今回は俺の勝ちだな!」


「俺が負けるとはな·····剣術のレベルは俺の方が高かったはずなのにな·····」


レンが俺の手を取りながら言った


「闇魔法は俺の方が1枚上手だったってことだな、それに武器に頼りすぎだ」


今回は神剣『クラス・ソラス』に頼って、使い慣れていない、闘気や縮地で戦っていたから隙ができた


「おめでとう!」


俺とレンが話していると、舞台にリオが上がってきた


「あぁ、ありがとな!」


俺達は観客席に手を振りながら舞台から降りた

そのあとは、閉会式やら授賞式やらで半日ほど闘技場にいた気がする

シングルトン王の話では、王都から北東に言った先にある港町にある造船所に魔導船を停泊させているらしく、受賞者である証明の書状をもらった

授賞式ではリオ、レン、俺がAランクのギルドカードを受け取った


「金ピカだねー!」


宿に帰る途中、リオが夕焼け空にギルドカードを照らされながら言った

かなり嬉しそうにギルドカードを見ている


「Bランクが銀色だったが、Aランクは思った通り金色だったな!明日、港町に向かう予定だが、王都でやり残したことはないか?」


「んー特にないかな!何かあればゲートでいつでも来れるから、ジンくんが好きな料理に使う調味料もいつでも買いに来れるよ!」


「やっぱり空間制御エリアコントロールはチートだよなー」


俺達は雑談しながら宿に戻った




次の日·····


「本当に一緒に来ないのか?」


「あぁ·····魔導船に乗せてくれるのは有難いが、俺は王家専属の冒険者だからな·····シングルトン王の言うことは聞かないといけない·····それにユダが回復するまではもうしばらくかかりそうだしな」


俺達が王都から出る時、レンが見送りに来てくれていた

昨日、魔導船に一緒に乗ってダンジョンに行かないか聞いたが、王と話をした結果、断るように言われたらしい


「そうか·····ユダはまたリオの空間制御エリアコントロールで迎えに来ることも出来るが、王の言うことを聞かないといけないなら仕方ないな·····」


「すぐに俺達も追いつくからな!ダンジョンで苦戦しててくれよな!」


レンが笑いながら言った


「すぐに攻略してやるよ!」


「次は絶対に負けないからな!」


俺達は握手を交わして

王都から北東にある港町『イエン』に向かった

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