【追憶】想定外の人質 ※蓮姫の母 幼少期 視点

 マッラの戦士達はカムラちゃんの言う事にはまるで聞く耳はもたなかった。

 私が事態の先行きを不安に感じていると、

パパがまた何かを話始めた。


『不可触の民よよく聞きなさい。

我々は人質、いいや、生贄を用意している』


「生贄? 一体どういうこと?」


『そこの泥棒猫ちゃん?

君はこの子ゾウに見覚えがあるかな?』


 パパはカムラちゃんに向けてそう言うと、

脚を縄で縛り自由を奪った子像を目の前に運んできた。


「え、確かあの子ゾウって……カムラちゃんの」


『くそっ、てめーらー!!』


「いいんですか隊長?

あの泥棒猫、物凄い剣幕で走ってこっち向かって来ますぜ」


「いい。早くれ!!」


「はっ!」」


 子ゾウめがけ戦士の二本の重い槍が襲い掛かる。

『ドスー!、ドスー!!』




『・・・・・・』

 


 ほんの一瞬の出来事に対し、

両陣営の戦士達はみな会話を辞め、

ただ黙って飛び散ったその血しぶきの先をみつめている。


「キャャャー!!!」

 目の前の残酷な惨状に対して、私には怒りよりも先に本能的な恐怖が襲いかかった。

その時の私には、反射的に両手で視界を塞ぎ

ただ悲鳴を上げることしかできなかった。



『パーラ〜!!!!!!!!!!』

※カムラの声

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