第6話 6
「馬鹿野郎!」それが家路についた僕へのオヤジの一声だった。
頭を小突かれるたびに口から血と唾液が出るからたまったもんじゃない。
「抜いてみるからちょっと我慢しなさい」そう言って無理やり引き抜こうとする。
頑として抜けない。
ふっと僕は死について考えた。
その前の年亡くなった祖父の葬式が思い出された。
木の箱の中で菊の花に埋められた祖父の顔は真っ白だった。
訊けばこれから木の箱は焼かれて骨だけになる、と言っていたのを思い出した。
そして急に頭の中で音楽、それも「いつくしみ深き」が流れ始めた。
讃美歌「♪いーつくしみふかーき」これは母がクリスチャンでたまに連れてってもらう教会で聞く曲だった。ますます悲しくなった。
(いまから僕は血を流しすぎて、傘をのどに詰まらせて死ぬんだ)
自分が棺桶に入って花に飾られている。そんな僕を観て泣いている母の顔が浮かんだ。
(死にたくない!)そう思うと僕は狂ったように泣いた。
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