女魔王イブリータの奸計
小物を狩る者
『
町の名前にもなっている『墓守り』がこの町の産業のひとつ。王国軍から冒険者ギルドに継続的に出されているクエストで、魔王と戦い死んでいった者たちが埋葬されている『大戦墓苑』の警備のことを言う。初心者や引退間際の冒険者にぴったりと言われるこの仕事、要するに、およそ怠けててもバレない仕事だった。
平穏に過ぎていく時間。間断なく警戒していても何も起きない。そして、何も起きない…。時間が来ると交代要員がやってきて、引継ぎをして終わり。居眠りしてても大丈夫。横になって寝てても、仲間とお喋りに熱中してしまっても、変わったことは起きない。
ただし、絶対に何も起きないかといえばそうではなかった。王国軍がそれなりの金を払ってくれるのにはふさわしい理由がある。不定期にアンデッドが出現するのだ。地下に貯まっている障気がときおり噴出して、死体が動きだす。
実は、こんなイージーで危険な墓守りの仕事をガストンは一度たりともやったことがない。
「だって、おめえよお。見ちまったら具合がわるいだろ。昔仲間の幽霊とかさ」
尋ねられるとガストンはそう言うのだ。
墓守りクエストを受けずにどうやって暮らしているのか。ガストンが選んだのは小物狩りだ。
パーティーの面々なら瞬殺する敵を時間をかけて単身で
「ガストン、あんた最近、ちっとも槍を使ってないそうじゃないか。やっぱり引退か?」
かつて同じパーティに属していた若い冒険者たちは、ガストン爺さんのことを不憫に思っていたが、そんなこと彼にはもう関係なかった。
「あの地面に突き立っているのも槍のお仲間さ。槍だらけだぜ、オレの人生」
ガストンはそう返すのであった。
ガストンは毎日食っていかなきゃならないのだし、冒険に出かけなきゃならないのだ。
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