第3話入学試験 実技編

 俺が闘技場についたとき皆は魔法の能力試験をしていた。何故かみんな詠唱していた。俺も空気を読まなくては変人扱いされるので、詠唱というものを生まれて初めて使ってみた。リナが用意した的を射抜く試験で俺はファイヤーボールと適当に詠唱したが出てきたのはビー玉サイズの火の玉だった。




「おいなんだあいつー。高等科にこれで入学したらコネじゃないのー。ありえないー」




 俺は何故か。詠唱したら魔法が使えないということに悲しみつつ周りからやじられたのであった。そもそも俺が詠唱なしで魔法を使ってしまったら弟子たちに気づかれてしまうのを避けるためでもあったが、周りから更に変な目で見られると思ったからだ。




「先生。的は一応壊しました。これでいいですか」


「あのビー玉のような火玉でな。マルクお前相当の魔法の使い手だな」


「そんなことはないですよ。私はただの、勉強熱心な生徒です。」




 次は、戦闘の試験を行う。各自相手を降参させるまで戦うことだ。組み合わせは私たちが決めた。俺は火玉で的を壊したことをちゃんと見ていた。リナがすごいと思ったし、何年だっても火系魔法についてはリナの方が上だと思った。




「次マルク、テティ・サディス」


 周りから歓声が上がった。サディスという名を聞いて歓声が上がったのだろう。第三貴族のサディス家の娘となれば、皆試合が見たいに決まっている。俺の立ち位置としてもここはわざと負けておいた方がいい。ここで負けておけば、目立ちもしない、ただの雑魚で行けると思う。




「手を抜こうとしてる顔をしてる。全力で相手をしてほしい。」


「俺の全力はさっきみただろ。あの火玉が全力だ。」


「嘘!!貴方は全然全力を出さなかった。だから私は全力できてほしい」


「俺が本気を出して、得することはない。さあかかってこい負けてやる。」




 俺は最初から負ける前提で立ち回った。そしてテティの怒りに触れてしまった。無詠唱でオリジナル魔法烈火を使ってきた。リナの魔法が使えるってことは、こいつはリナの弟子か。


「いい魔法使えるじゃん。烈火なんて珍しいもの覚えてるんだね。しかも無詠唱か。」


「貴方これが烈火って知っているなんて、無詠唱のことも知っているなんて、何者なの?」


「俺はマルクただのマルク村人Aかもしれない。ただのマルクだよ。」






 彼女を本気にさせてしまったら周りに被害が行くな。師があのリナなら多分同じだろう。


「先生。俺の負けです。マナがなくなりました。」


「嘘を言わないで、貴方はさっきまで大量のマナがあった。しかも切れるなんてありえない」


「じゃあその目で見てみろ。俺のマナが尽きているかどうか。」


 テティは俺のマナを見ている。


「ほら、ないだろ?だから俺の負けです。先生」




「勝者テティ・サディス」




 俺は最低な負け方をしたかもしれない。自分のマナを消しさり、完全に気づかれないようにした。リナと喧嘩した時もこの方法を使っていた。もしかしたら気づかれていたかもしれない。




「覚えてなさい!次戦うとき貴方を全力にさせるんだから」




こうしてテティを怒らせた状態で、俺の入学試験が終わった。

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