SCP-024-N 『玩具』
「はーい!久しぶりのSCP解説だよー!」
「うおびっくりした。そんなに叫ばなくても、ここ講習室なんで分かりますよ。しかし、本当に久しぶりですね」
1週間前から夏休みに入っているが、特にやることもなく自分の部屋でだらだらしてたらいきなり棚空先輩に連れてこられた。この前風邪を引いていたが、もうすっかり元気そうだ。あの時は少し……いや、やめよう。
「それより、この前は看病ありがとね。変な所は見せてないつもりだけど、もしあったら記憶処理ね」
「いやちょっと、地味に怖いこと言わないでください。…そういえば僕、この後にゼロと呑みに行くんで、手短に済ませてください。」
「…ゼロくんと?そういえば、僕あの子嫌いなんだよね~…まあ、もともと短いし別にいいけど、『Dream Man』のことは絶対言っちゃいけないよ。とりあえず、今回は写真を用意してきました~…じゃん!SCP-173-JP、『恐竜‐イミテーション』~!」
釘を刺されつつ、今回もSCP講習が始まる。しかし、『Dream man』を口外するな、とは一体どういうことなのかを考えつつ、話を聞く。
「恐竜、ですか。またやっかいそうなものが…ていうか随分と小さいですね」
「まあ、今でこそこんなんだけど異常性はそんなもんじゃん無い。オブジェクトクラスは『Euclid』で、普段は完全防音の密室に封じ込まれているんだ。見た目は全体的に青っぽいけど、所々緑だとかが混じっているね。そして、よく見ると?」
「あれ、これってもしかしたら
俺が玩具で出来たことを見抜くと、ニカッと笑う。それより、よくみると、このSCPは体全身が何かしらの玩具のパーツだった。足に水鉄砲を付けていたり、ガチャガチャの空きカプセルや銀色のボディーをした大きい車の玩具が顔に付いている。
「そう!こいつは全身が玩具で出来ているんだ。それだけでもう不思議だけど、それはありがちだし、もちろんそれだけじゃない。なんとこいつ、自立歩行が出来るんだ」
「マジですか。自立歩行するって、もうその時点で嫌な予感がするんですけど?」
「おお…分かってきたね、餅屋くん。でも、封じ込めが出来てるからこそのEuclidなんだ。…さて、そんな奴の異常性についてだ。こいつは、歩くたびに『がちゃがちゃ』だとか『ガラガラ』だとかを発しながら歩くんだ。そして、Dクラスとかの人間が直接その音を聞くと、警戒心を失う」
やはり、EuclidらしいSCPだ。そんなものが収容違反しようものなら、周りにいる人間は全員そいつに近づいてしまう。
「そして、その音を聞いた人間はそいつの玩具をかき分けてまで中に入ろうとするんだ。この時、周りの玩具は剥がれ落ちたりせず、更に奥に入ろうとする。もちろん、自分が玩具に潰されるのも厭わず、だ。そして、吸収したDクラス分このSCPは巨大化して、それで、入っていった人間は『大事なおもちゃ』『思い出のおもちゃ』『無くしたおもちゃ』『懐かしいおもちゃ』『憧れのおもちゃ』のいずれかがあると言いながらこのSCPの中に入っていくんだ。『もっとたくさん、このたのしいものを見たい』っていうのもあったね」
「…なんだか悲しいですね。Dクラスが昔の玩具を目指して、死も厭わず入っていくっていうのは」
いくら死刑囚だからって、玩具を目がけて一心不乱に入る姿を想像すると、少しの悲しさを覚えてしまう。しかし、それをいうと棚空先輩は「そのままじゃいけない」ときっと言うだろう。
「…うん、そうだね。でも、そういうのを一般人が見ないための『確保』『収容』『保護』なんだ。君も将来、クリアランス3になるとDクラスを嫌でも使わなきゃいけない時がくる。でも、私たちはDクラスに対して『冷酷』でなきゃいけない。決して『残酷』になってはいけないよ、餅屋くん。さて、呑みに行ってきていいけど、一応ゼロくんにもよろしくね」
「はい、分かりました。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ザワザワ…ザワザワ…
時刻は夜12時。夜も
そして俺は、そこで同僚と酒を交わしている。名前は
「なーモチ、聞いてくれよ~、また女の子にフラれたんだ~、ヒック、呑まなきゃやってらんね~なー! なあ、お前ん所のJKくれよ~! 2人いるから、1人ぐらい良いだろ~?」
「馬鹿じゃねえのか、ゼロ? お前も黙ってればイケメンなんだから、酒をやめれば女なんていくらでも寄ってくるぞ? ていうか、JKって言い方やめろよ。」
「いやだ~! 俺は酒だけは
そういうと、ゼロは本当に悔しそうに勢いよく酒を呑む。この酔ってる姿からして、いつかアル中に…いや、もうなってそうだが。ゼロはまだまだ言い足らないのか、酒をどんどん注文する。そこで、俺は棚空先輩が言ってたことを思い出す。
「そういえば、棚空先輩がお前によろしく言ってたぞ」
「え、マジで~! いや~、ヒック、やっぱりまだ俺に脈ありなんだな~!」
「びっくりするぐらいポジティブだな、お前。別のサイトだからって告るのもどうかと思うし、1回フラれてるんだからもう諦めろ」
そう、こいつはあろうことか棚空先輩に恋をして更にフラれている。あの時、ゼロは素面の状態で告白したのだが、棚空先輩には「うわ気持ち悪ッ!」と言われていた。いくらイケメンでも「月が見える夜で、あなたと一緒に日本酒を呑みながら枝豆を食べたい」とか言ったらそりゃそうなる。よりにもよって枝豆って。
「クソ~…やっぱり日本酒じゃなくて███年ものの秘蔵の酒なら、ヒック、よかったのか~?」
「絶対そういう問題じゃないぞ…」
実は、前に俺もその秘蔵の酒を少し呑ませてもらったことがあるが、正直███年だろうが10年だろうが変わらないような気がする。しかし、この前それを言ったら怒られたので今回は黙っておく。
「うわー! もういい、今夜は死ぬまで呑むぞー!」
「あっおい、それ俺の頼んだビールと焼酎と日本酒と唐揚げだぞ!返せ!」
そんなこんなで、2人でギャーギャーしながら夜はどんどん更けていく。明日は2日酔いが確定したな。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――あとがき
どうも、久しぶりに解説したと思ったらバカ短くてびっくりしてる、餅屋五平です。
1300文字ぐらいですかね、それぐらいです。1回8000文字とかかけてやりたいんですけど、それって必要なクリアランスが4とか5とかが大体なんですよね…。時空間が縮小してるやつとか書いてて楽しそうですけど。なんかあったら教えてください。
最近推しのボカロPが結構増えました。Ayas█さんとか、wot█kuさんとか。1回聴くとハマる奴が多いから中々飽きませんね。人間モ█キとかこれ書いてる時も聴いてます。
SCP-173-JP『恐竜 - イミテーション』
by soilence
http://ja.scp-wiki.net/scp-173-jp
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