SCP-022-N 『夢中』

「……ん? あれ、ここどこだ?」

気が付くと、俺は真っ白な空間にいた。……はー。えーと、どうするかね、これは。いや、それより、状況を整理しよう。まず、水着ショーがあったその夜、俺は財団で棚空たなから先輩に他の仕事を押し付けられていて、クタクタになったこともあってすぐに眠ってしまっていた。

他にも、どこかで鹿の鳴く声や、頭上に月が見えたりしている。そして、この状況から考えられることはただ1つ。

「…これは多分、夢じゃないか? いわゆる、明晰夢的な」

明晰夢を見るのはこれが初めてなのだが、こんな変な感覚なんだな。夢と分かってて、それでも夢から醒めれない。

「まあ、明晰夢が悪い夢じゃなさそうなだけマシか」

そう一人ごちるが、勿論返事が返ってくるわけない。それより、この空間でただ突っ立っていてもどうしようもない。とりあえず、歩いて誰かいるか探してみよう。

そして、歩き続けて5分ぐらい経った時に、質素なベンチに座っていた人を発見した。相手がこちらに気付くと、手を振りながら近づく。

「やあ、餅屋くん、だったかな? 君とは初めましてだね」

「あー、えっと、すいません。僕はあなたのことを知らないのですが。あの、お名前を教えて頂けませんか?」

相手は俺を知っているようだが、俺は相手を一切知らない。黒いビジネススーツを着て、黒い帽子を目深に被っていた相手は、一瞬きょとんとしたが、すぐに大声で笑った。

「ん? ……ああ、そういう事か! ハハハ、君、私が誰か知らないのかい? これは失礼。珍しい財団職員もいたものだな……」

「ちょっと待ってください。僕が財団職員だってことを知っているんですか?」

俺が財団職員だということを知っている…? 思わず俺は警戒するが、相手は余裕ぶった笑みをたたえている。

「何、そんなに身構えることでも無い。むしろ、私は君に有益な情報を教えにきたのだ。君の今後に関わる、重要な情報」

「有益な、情報?」

俺は少し警戒を解く。そうすると、相手はもっと安心したような表情になった。というより、こちらを下に見るような表情に。しかし、そのまま相手は話を続ける。

「そう、大事なこと。まずは私の自己紹介から。私は通称、『Dream Man』だ。今はダニエルと呼んでくれ」

「ダニエル、ですか」

「いや、ちがうな。うん、そうだ。トニーなんてのはどうだい?」

「……。ええ、それもいいと思いますよ」

悪い人では無さそうだが、どうもつかみにくい人だ。『Dream Man』(『This Man』みたいだな)だったり、トニーだったり、ダニエルだったりしている。まあ、自分の名前は好きに呼ばれたいんだろう。

「それで、だ。次の有益な情報だが、君は今度アメリカに行くんだろう?そのことについて教えてあげよう」

本当に何でも知っている人のようだ。いくら俺の夢の中だといっても、さすがに怪しい。しかし、情報を聞けるのならば聞いておくに越したことはないだろうと思い、情報を聞く。

「はい、そうですが…何かあるんですか?」

「ああ、そうさ。覚えておきたまえ。……『夢』からの警告だ。汝、『襲撃』を超えよ」

「はい? すいません、意味がよく分からないんですが」

「いや、まだ分からなくていい。その内、も分かる時が来る。さあ、そろそろ起きる時間だ。」

「いや、結局どこも有益じゃ―――」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ジリジリジリジリジリジリ……

「う~ん、ああ。あれ、俺の部屋だ」

目覚まし時計で目を覚ますと、もちろん俺の部屋にいた。やはり、夢だったらしい。とりあえず、さきほど俺が夢で見た内容を思い出す。

「えーと、『襲撃』を超えよ、だったか。もしかしたら、アメリカで『襲撃』が起きるということか? まあ、そんな事無いか。でも一応後で先輩に話してみよう」

そのまま、大体の支度を終えて、食堂に向かうと棚空先輩と春夏冬あきなし先輩が楽しそうに話していたので、俺もお邪魔することにした。

「それでさ、結局夏休みどこ行く?やっぱり海でしょ」

「いやいや~、プールでしょ~? …あれ~、餅屋く~ん、どうしたの~?」

「おお、餅屋くん。この前はありがとね」

「いえ、大丈夫です。それより、今日僕が見た夢が少しおかしくて。聞いてくれますか?」

「ん? 大丈夫だよ? なになに私のエッチな夢?」

「いえ全然違います」

「即答だね」

「いやなんか、『Dream Man』とかいう人が出て来たんですけど」

俺が『Dream Man』の名前を出した瞬間に、2人の顔が少しこわばる。あれ、俺何かマズいことでも言っただろうか?

「うーーーん、そうだね。まず、いろいろ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「あ、はい。」

「えっと、『Dream Man』は、自分の名前を何て言っていた? そして、なんて内容を伝えていた?」

「ええと…ダニエルだと名乗った後にトニーと名乗り直して、その後に確か、【『夢』からの警告だ。汝、『襲撃』を超えよ】、と言われました」

「そう。それじゃあ、ちょっと待っててね」

「う~ん…中々ヤバいね~…」

棚空先輩に『Dream Man』の名前と何を伝えられたかを聞かれたあと、春夏冬先輩を連れてどこかへ行ってしまった。『ヤバい』の意味を考えながら、10分ぐらいが経過したあと、棚空先輩が深刻な面持ちで、衝撃の内容を伝えた。

「餅屋くん。君が夢の中で出会ったその『Dream Man』。実は、SCP-990というナンバーのSCPオブジェクトなんだ」

「…え!? それ本当ですか!?」

いきなり出てきた超弩級ちょうどきゅうの事実を聞いて、思わずびっくりしてしまう。確かに、俺を財団職員だと知っていたり、アメリカに行くことを知っていたり、確かに怪しい人だとは思っていた。しかし、まさかSCPオブジェクトなんて誰が思えるだろうか?

「そう。詳しくは省くけど、財団職員の夢にだけ現れて、必ず当たる予言を残したり、収容出来てない点から考えて、オブジェクトクラスは『Keter』。」

「必ず当たる予言? Keter? それじゃあ、僕がアメリカで何かしらの危険な『襲撃』を受けるという予言ではないんですか!?」

「うん、そういうことになっちゃう。さっき、予言のことをアメリカ本部のサイトに伝えたんだけど、もう行くサイトも決まっちゃってるからっていうのと、『襲撃』の内容が分からないとかの諸々の理由があるらしくて、キャンセル出来なかったんだ」

クソッ…!そこは無理やりでもキャンセルさせるべきではないのか!? …しかし、もう決まってしまった内容だ。激高してしまう所だったが、何とか抑えることが出来た。今更怒ってもしょうがない。あの夢は、正に悪夢だった。

「う~ん、ドリームマンって日本支部にも出るんだね~、私も見たこと無いんだけど~。でも~、やっぱりヤバい、よね~」

「うん、日本支部で出たっていうのは聞いたことないね…とりあえず、ありがとう。あとで報告するから一緒に来てね」

「はい、分かりました」

ただでさえアメリカに行くのが不安なのに、また不安が1つ増えてしまった。波乱の勢いが感じられるのだが…?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき

どうも、学園祭前日で準備があるのにサボってこれ書いていた、餅屋五平です。

自分の部活のコンテンツは後輩がやってたので全部丸投げしました。ヤッタァ!

再度通告しますが、9/21と22は小説出せません。しかし、23(月)に代休が入るので、そこで書きます(上げられるとは言ってない)。



SCP990、『ドリームマン』は当初組み込む予定が無かったんですけど、「ドリームマン入れたら面白そうじゃねwww」みたいなこと言われて勢いで組み込みました。

頑張って書いたプロットが大崩れ。

SCP-990 - Dream Man

by Dave Rapp

http://www.scp-wiki.net/scp-990

http://ja.scp-wiki.net/scp-990


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