SCP-019-N 『海外』
「うん、いい返事だ。餅屋くん、君は。君は、アメリカに行きたいかい?」
「………はい?」
アメリカに行きたいか…?一体どういう事なのか。詳しく聞いてみよう。
「それは一体どういう……」
「まあ、実はね? 毎年、各地のSCP財団支部の優秀な新人を集めて、それぞれ別のサイトで研修をさせるのよ。で、今年は君にも白羽の矢が立ったワケよ。ちなみに拒否権はない」
「まあ、拒否出来ないのはなんとなく予想出来ていましたけど…アメリカか。」
「そう。アメリカ。昔、君が通ってた、名門██████大学のある国だよ。」
██████大学…苦い記憶しかないが、またアメリカに行かなきゃならないのか。正直面倒くさいし、普通に行きたくないのだが。
「まあ、そういうこと。日程とか行くサイトは日を追って伝えるけど、8月後半だから遊ぶなら前半のほうがいいよ。そういえば、僕も行った事あるんだよね」
「そうなんですか。どうでしたか?」
確かに、俺の前ではちゃらんぽらんしているがそれでもレベル3なのだ。このサイトに5人しかいないレベル3。きっと、新人の時から優秀だったのだろう。
「うーん、良くはなかったね。あの時の出来事はいいもんじゃないし、いきなりあいつだったもんなぁ…」
「あいつ?一体誰ですか?ていうか英語喋れたんですね。」
『バカにしてるの? これでも英検1級ですけど。』
確かに、英語は喋れるらしい。冗談半分だったのだが、意外と流暢だ。これは俺も負けてられない。
『いや、英検1級はネイティブも使わない単語余裕でありますよ? 日本でいう漢検1級です』
『え? マジ? 知らなかった。まあいいや、そういう事で。よろしくねー?』
「はい、わかりました」
そういえば、俺は優秀だということだろうか?もしかしたらレベル3も夢じゃ無いかも知れない。なったとしても、部屋が広くなって給料が増えるぐらいか。あと後輩もできる。
「それじゃ、テスト頑張ってね」
「はい、わかりま……何で知ってるんですか?」
「さあね~? そういえば、もうすぐ夏休み! どこ行こっかなー?」
レベル3はこんな人ばかりなのかと思うと、なりたくなくなってきた。いや、俺は真面目なレベル3になろう。
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翌日、学校で俺だけやたら難しい小テストを解かされたり、解き切った俺を見てアガサ先生が悔しがってたりしたが、もう帰る時間だ。テストの結果は知らん。
「いやー、もうすぐ夏休みだねえ…結構あっという間だったよね。」
「お前はその前にテストがあるだろ?まずそれをどうにかしないと無理だろ。」
「テスト…赤点…補習…うっ頭が…!」
あとテストまで3日しかないが大丈夫なのか?しかし、そう思って教室を見渡すと、意外と皆勉強していない。いや、だから大丈夫と言う訳ではないが。
「赤点を取らないためには、今日も勉強ですわね」
「そ、それは今は別にいいじゃん! そ、それより、夏休みどこ行きたい?」
「どこ行きたいか…?珍しいな。てっきりネット上でしか出かけないと思っていたが」
「そんな、失、敬、な。……」
「声小さくなってるぞ。まあいい、夏休みどこか行きたいっていうのは正しい。
有意義なものにしたいしな。ああ、でも前半の方な、俺アメリカに行かなきゃ…あ」
「え、そうなんですの?」
「マジで!?」
しまった、喋りすぎた。決して旅行などではないのに。しかも、五月も緋鳥も興味を持ってしまったし、ごまかすことも出来ない。
「へえ~! アメリカなんて行くの? え、どこどこ、ウルルとか?」
「…五月さん、ウルルは、オーストラリアですわ」
「え?」
素で勘違いしていた。アホみたいな顔して弁明してるが、この前地理を教えた時にやったところだ。どうやら、全く覚えていないらしい。
「そうですわね…グランドキャニオンとか、イエローストーンとかいいですわね」
「あー、イエローストーンか…行ったことないな。いや、違う。俺は留学に行くんだ。旅行じゃない」
今適当に思いついたカバーストーリー『留学』を使わせてもらう。間違ってはないはずだし、嘘もついてない。
「留学ー!? え、凄いじゃん! アメリカ人のイケメンに向かって話すんでしょ!? 私もしてみたいな~」
『お前には一生無理だな』
「ん? 今それなんて言ったの?」
「お前には無理だバーカって」
何だかカバーストーリーを間違えた感があるが、上手く切り抜けることが出来た。しかし、まだその話があった。
「何だと……あー、そんな話だったね。どこ行こうか?海…は私嫌いだから、プールとかどう?」
「それには俺も同意見だ。海は冷たすぎる。あと流されるといけないしな」
「私も賛成ですわ。髪が傷んじゃいますもの。あと流されるといけませんしね」
「そうだよね~、しかも海水ってしょっぱいよね。あと流されるといけないもん」
「よし、じゃあ帰ろうか!」
そのまま満場一致で近くにあるナカジマプールにすんなり決まった。まあいいだろう。
さて、どこに行こうとしてるのかな、五月さん?
「いや、お前さっきウルル間違えてたよな?何帰ろうとしてんだよ」
「うえっ!?」
先ほどの件を鑑みると、テストまであと三日といえど、まだ勉強した方がいいだろう。危うく逃げられるところだったが、なんとか捕獲に成功した。
「い、いやだ…! お願いだ、まだここで死にたくない…!」
「そんなんじゃ死なねえよ。いや……。……。うん、何でもない」
「そうですわよ、そんなことでとりあえずついてきなさい」
「うわ~ん、薄情者~!」
これから始まる夏休み、果たして何もなく終われるだろうか。正直、そんな気は全くしないのだが。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
どうも、そろそろ学園祭なのに演劇が全く進んでない、餅屋五平です。
僕自体は役者じゃないんですけど、クオリティーは低いです。妖怪と人間がなんやかんやする話なんですけど、学園祭の出し物とリンクしてるんですよ。そこが曲者ですね。しかも自分の部活のコンテンツ代表責任者だしああああ…。
そんな訳で、9月21日と22日は学園祭のため投稿出来ません。よろしく。
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