第74話 目指す理想郷

「ああ…」


消え逝くダイナ…


優也は彼女を見守っている…


「どうやらこの時代には私は必要無かったらしい…でもおひい様が私を呼んでくださって私は幸せだった…」


その時…優也が元の姿に戻った…


「ダイナさん…あなたのような伝説の英雄という存在はそういうものかもしれません…」


優也は頭の中に人間界のナポレオンや織田信長を想い描いた。


「伝説の英雄とは野望を持ち、仲間と共に高みを目指して時代を駆け抜ける…その生き様は皆の憧れであり、決して悪いことではないのですが…今、我々の目指している世界とは違うのです。誰もがお互いに理解し、協力して築き上げる理想郷…


恐らくヴァルは途中で気付いて…現代いまには現代いまのスタイルがあると認めてくれたのだと思います…そして彼女は僕の守護霊となってこの時代をもう少し見守ってくれることになりました…」



ダイナは頷いて「なるほどな…では私もそろそろ土へと還るか…おひい様といられなかったのは名残惜しいが…」


「ダーリン!無事で良かった…」ティナが涙を浮かべながら僕に抱きついて来た…


僕達は人目をはばからず口づけを交わす…


ダイナさんはティナの顔をよく見て…


「あっ!ひょっとしてそなたは…」


お義父さんが口を開いた…


「そうです…ダイナ様…あなたはジュエラ王国の王女として生まれてこられた強大な魔法力をもつ伝説の魔法使いと聞いております…


つまり私達ジュエラ王族のご先祖様なのです…」


僕とティナは顔を見合わせて驚いた…

なるほど…それでティナの面影が…


「ということはおひい様を宿しているそなたとは夫婦同士…」


ダイナさんはニヤリと笑った…光の粒子となって消えていくダイナさんだったが、突然ティナの周りにダイナさんの光の粒子が集まった…


光の粒子はティナの身体の中に入っていく…


「私もこの者の守護霊となり、おひい様と共にこの時代を見守っていくことに決めたぞ!

ティナとやら…宜しく頼む!」


僕の頭の中ではヴァルの声が響いた…


「やれやれ…鬱陶うっとうしいのう…まあ…側に置いてやるとするか…」


ヴァルの言葉が僕にはどこか嬉しそうに感じた…



…この時から僕とティナの身体には少し異変が生じていたのだが…緩やかな異変に周りも僕達自身も気づく事は無かった…

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