第25話 迷い道

ブルルルルル…


今日も仕事が終わって愛する家族の待つ家に向かう…


暗闇をヘッドライトで切り裂きながら優也は車を走らせる…


やがて小高い丘の上の道に通りがかって、ティナやラリーさんに出会えたことを思い出す…


「ここで色々あったな…」池や森のある丘陵地を過ぎて下り坂に差し掛かった時だった。


ヘッドライトに照らされた小さな人影が道の左側に見えた…その人影は行くアテも無くただ彷徨っているように思えた…


近づくにつれてその人影はフードをすっぽり被って僕の持っているのと同じようなローブを纏っている…僕は車のスピードを落として更に近づくとローブには僕のとは違う紋章が描かれていた…「やっぱり…」


僕は人影を一旦通り越して車を路肩に寄せ、

車から降りて人影に近づくと「あのう…」と声をかけてみた…


フードの中の人物が顔を上げて目が合った瞬間、僕は驚きのあまり声をあげてしまった。


「ああっ!」


「ええっ!」


向こうも僕の顔を見て驚いたようだった…


「あなたは…ナ、ナギさん?」


「ティナの旦那さん…ですよね?」


「どうしてこんな所に…」


「私、ティナの所に遊びに行こうと思って人間界に来たんですけど、誰にも連絡せずに来たので道に迷ってしまって…」


「そうだったんですか…それは大変でしたね…

さあ、ご案内しますので車に乗って下さい。」


「車って…この鉄の馬車みたいな物ですよね…さっきからずっと横を通っていて…私、怖くて端を歩いていました…」


「ああ…魔界には無いですもんね。」僕は左のドアを開けて「さあ、どうぞ!」とナギさんを助手席に乗せてから車に乗った…


「きゃっ!すごい早いですね…私あまり馬や馬車にも乗ったことが無いので…」


「ごめんなさい…もう少しスピードを落としますね…少し着くのが遅れますけど…」


「…良いんです。」ナギさんは少し嬉しそうに見えた…


マンションの駐車場に着いてエレベーターに乗る…


ドアの鍵を開けて「ただいま!」と言うとミスとリルが「わーい!パパおかえり!」と駆け寄って来る…


そしてナギさんの顔を見て「あ…こ、こんばんは…」と言ってまた奥へ走って行った…


「恥ずかしいんだな!」


僕がそう言うとナギさんはクスッと笑った。


「ママ…パパがお姉さんと一緒に帰ってきたよ!」


リルの声が聞こえた後でティナが奥から出てきてくれた…


「ダーリン!お帰りなさい…あら?」


「ティナ…ごきげんよう!」


「ナギ…どうしたの?」


「帰る途中に出会って…一緒に帰ってきたんだよ。うちに遊びに来てくれたんだって。」


「そ、そう…」


「ゴメンね…突然…」


「ナギ…お食事はまだでしょう?一緒に食べましょうね…」


「ありがとう…ティナ…」


あれ?…僕はティナの雰囲気がちょっといつもと違う気がした…



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