第2話相談
数ヵ月前の事でした。
私には小学生の頃から仲の良い友人が居るんです。
友人とは中学でも同じ学校、同じクラスになって楽しく過ごしてました。
だから突然の事だったんです。
生まれて初めて、告白されたんです。
初めは驚いたんです。
でも嬉しくて、その事を友人に話したんです。
本当にただ、嬉しくて話しただけだったんです。
正直その人と付き合おうだなんて、思っていませんでした。
その時は別に好みがどうとかなんて言う話ではなく、男の人と「付き合う」って事がそもそもよく分からなかった事と部活を優先したかった事もあって、断っていたんです。
最初は友人も告白に対して、「良かったね」って言ってくれたんです。
私が「付き合わない」って言っても、「勿体無い!」ってお互い笑いながら話してたぐらいなんです。
そして、私に告白した人の名前を言った時、友人の態度は急に変わりました。
友人は名前を聞いた途端、耳まで顔を真っ赤にして「信じられない!」、「あんた最低!」と叫んで走って行ってしまったんです。
その日から、友人とはろくに話も出来ずに避けられるようになってしまいした。
「後々、他の友人に教えてもらって分かったのですが、私に告白した人は友人の好きな人だったんだそうです」
女性客は最初は嬉しそうに、けれど徐々に苦笑いを、最後には涙が出そうな程瞳を潤ませ、苦しそうにそう言った。
それは、苦しさと迷いを滲ませた同情を誘う様な表情だった。
「……そうでしたか」
女性客は大まかな事情話を終えると膝の上に置いてる両手をぎゅっと握りしめた。
「しかし、そのお友達もあなたに好きな人の事は言わなかったのですよね?
それで怒るのは理不尽では?」
「で、でも友人と親しい人は皆知っていたみたいなんです
私、友人とはいつもってくらい一緒で、一番仲良くて、それなのに友人の好きな人の事も分からなくて……」
「少々ご自身を責め過ぎでは?」
「っ!
だって!」
滲む視界に映る青年は輪郭がボヤけているせいか、それとも女性客自身の受け取り方のせいか、
「だって、私があの子を傷つけちゃったからっ……
あの子、泣いてたから……」
「もしかしてお客さん、今まで誰かを泣かせてしまったり、喧嘩したりって事は経験が無いのですか?」
「…………」
女性客はカノンの問いかけに小さく頷いた。
「自分で言うのもどうなんだって話だと思うんですけど、私はおとなしい方って言うか、人見知りが激しくてそもそもあまり喋らないんです
コミュニケーションすら苦手なんです
それを友人は気にせずに、ずっと一緒に居てくれて……
なのに私は……」
「なるほど
つまりお客さんはお友達に怒られたことよりも傷付けてしまったことにショックを受けてらっしゃるのですね?
しかし誤解というのは……」
「きっと友人は私も自分の好きな人が分かってると思ってたんだと思います
だから私が笑いながら告白された事を言ったのはきっとワザとだと、嫌味だと誤解して……」
「ふむ、そうなるとやはり桜草で合ってはいますね
ただ……」
カノンは口に手を当て考え込む。
「ただ?」
「いえ、ちょっと……」
カノンが暫く考え込み、そして口に当てていた手を下ろして口を開く。
女性客とは反対に、楽しげな笑みを浮かべて。
「……ふむ、お客さん」
「はい?」
「ちょっと、お客さんには努力してもらいます」
「……え?」
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