賞金首狩り
日常
都市ダイバースの裏路地、ゴミが散らばる物陰のひとつにゲントは居た。じっと動かず、標的を待つ。今回狙うのはザインと言う名の元冒険者だ。「レベル」で上がった力を利用して窃盗や性犯罪、殺しを繰り返しているという。こういった力に酔ったならず者は、この都市では掃いて捨てるほどいる。
「レベル持ち」を相手取るときは、正面から相対してはいけない。彼らは尋常でない身のこなしと、人間とは思えない膂力を持つ。そうではないゲントは為す術なくやられる。
だから不意を突く。
打合せ通りに、一人の娼婦がザインの手を引き裏路地に入り込んでくる。二人はしばらく進むと、手ごろな場所でもつれ合い始めた。
ゲントは物陰からゆっくりと歩き出す。動作は緩慢だ。酒に酔い、女に夢中のこの標的も、殺気を感じれば瞬時に牙を向けるかもしれない。だから焦らず、俯瞰の視点を保って近づく。そうしてザインの真後に立つ。一向に気付く素振りはなかった。杞憂だったようだ。ゲントは静かにザインの首にナイフを置いた。
ザインの遺体を漁る。衣服を剥がし、金品と粗製の剣を手にする。遺体を物陰に押し込め、立ち去ろうとすると横から声を掛けられる。さっきの娼婦が報酬をもっとよこせと喚いていた。彼女には標的をおびき寄せるまでに前金を、暗殺が済んだ後に残りを渡している。どうやらザインの金品を見て、もう少したかれると考えたらしい。殺してしまおうかと、一瞬考える。だが顔立ちがいいので今後も使えるかもしれないし、何より耳障りな金切り声が嫌だったので素直に渡した。女はそれをふんだくると表通りに消えていった。
殺しの達成を伝えにギルドへ向かわねばならない。
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